トロルお爺の”Satoyaman”林住記

生物生産緑地にて里山栗栄太が記す尻まくりワールド戯作帳

**干支巡り来て

2023-03-12 | 大震災
           潮騒や引かれた人のささやける
                   寄せも返すもただ一巡り

           わたつみの殿のいらかに霜降りて
                   朝日にしたる滴る御霊

           わたつみの沖つ白浪立ち来らし
                   浪は還れどなれは還らじ

           わたつみや千尋の果てに居ますとも
                   寄せた御霊を言祝ぎたまえ

           未曽有とも世の終わりかと思えども
                   更に上あり更に馬鹿あり

           国滅ぶ瀬戸の際なる大惨事
                   すでに忘れて貼るや膏薬

           復興も五輪も博もなにせむに
                   永久に有りけりスムシやマダニ

           大困難中で生まれた吉凶も
                   すべてここから起てば歩めよ

           天灯の二万二千余天空へ
                   星となりたり銀河の星と
                              

**合掌は哀しからずや 故郷は遠くにありて想うだけ

2022-03-11 | 大震災
            父祖の代この地と定め血を繋ぐ
                    繋ぐ人無き除染無き今

            解除とて前山からは除染なく
                    山の浸み水流れて寄せる

            里山がある事ゆえのテッポ打ち
                    今は毒気の忌み地となりて

            春浅し山は昔と変わらねど
                    古老と朽ちる郷の幻影

            集落も今は草木に呑まれたり
                    野獣跋扈し蹴散らす汚染

            故郷は遠くに住みて想うだけ
                    そして哀しく祈るだけ

            コロナより怖い汚染のただ中は
                    打つ手無きまま子孫へ障る

            原発は忘れさられて易き日々
                    壁に耳無し障子に目無し

            古里は面影も無し大造成
                    山は悠久汚染は久遠

            集落はジジババだけで11年
                    老いの影さえ風化で消える

            集落の結も祭りも消え果てて
                    既に野となり太古に還る

            残留値ジジババならば気に病まぬ
                    とうにこの身も残留孤老

            大陸の原発襲う狂犬は
                    メルトダウンの装置となりぬ

         

















**長し短し一苦切り 3

2021-03-12 | 大震災
        十年経っても余裕の余震
              廃炉百年被爆は万年 ハアコリャコリャ

        山に登って古里見れば
              重機が傷をさらに増す ハアコリャコリャ

        ささやかなれど集落戻る
              だけどジジババシシタヌキ ハアコリャコリャ

        桜前線津波の先を
              示し被災地北上中 ハアコリャコリャ

        十月十日も十年一日 
              過ぎてしまえば夢の夢 ハアコリャコリャ

        怒涛の記憶藻屑と消えた
              胸の深海陽も射さぬ ハアコリャコリャ

        朝もはよから手の先かざす
              沖の彼方に居る家族 ハアコリャコリャ

        復興進むが復古はならず
              あの日以前の暮らし無し ハアコリャコリャ

        資本つぎ込み死の灰残し
              使えぬ土地に注ぐ銭 ハアコリャコリャ

        踊らせられたら倍々シッペ
              明るい未来の原子力 ハアコリャコリャ

        多重防護はせぬせぬ尽くし
              子々孫々にとどめ刺す ハアコリャコリャ

        科学必須に願望感で
              原発コロナ同じあや ハアコリャコリャ

        鉄道こそが未来を繋ぐ
              孫子孫子と繋ぐだろ ハアコリャコリャ

        永田を席巻住血吸虫
              霞が関にはマダニ湧く ハアコリャコリャ

              

**長し短し一苦切り 2

2021-03-11 | 大震災
          あの日でも今は昔が未だ今
                   明日はどうなるどうする明日

          原子力明るい未来そのままに
                   未だ来ないわ来ないわ未来

          諦めた明るい未来尽きたまま
                   廃炉百年放射万年

          里は今復興露わ生傷を
                   削り出したるその形かな

          見えしものそれは今わの血の涙
                   見えぬものこそ脅威の姿

          汚染土の始末動かぬ明日もまた
                   人は去り行く里は還らぬ

          身を捨てて浮かぶ瀬も無き汚染地の
                   野獣跋扈す茫々枯野

          真白き髪の毛緑の松島
                   仰ぎ見るたび歪む海かな

          わたつみの千尋の中に抱かれし
                   数多の御魂祈る安らか


*長し短し一苦切り 1

2021-03-10 | 大震災
               あの日から消えし団欒三世代

               仮住まい既にこの世も仮住まい

               置かぬ身に廃炉作業の闇見えぬ

               汚水槽一千羅漢のアカンなり

               老いたれば十年とは言え全生涯

               春十回慰めも無き避難宿

               思い出す独りぼっちの闇の間々

               血縁も絶えて天涯孤独なり

               粛々と生きて生き行く明日もまた

               独り寝やあの夜の闇と続きおる

               春還る帰らぬ人に街もなし

               ムックリをたれぞ奏でる朽ちし里

** 散々九冬

2020-03-11 | 大震災
             捜索九年悲喜悲喜悲喜の娘の帰還

             千の風波となり春はや九年

             暖冬も心の寒さあのままに

             春や春はるは覚えぬ九回目

             復興も盛り土だけなり高止まり

             タンク群岬に向かう旅ネズミ

             学ばずや段波のごとし火種事故

             わたつみに守られ今日もおるのやろ

             住めぬ街時より早く刻まれリ

             帰りたい帰れない定住とする帰らない

             うわさ話は七十五日解体更地は七十五年

             明日無きも過ぎる心の仇桜浪の間に間に浮きつ沈みつ

             浪間は地獄送るも地獄生皮剥かれてはや苦念 ハアコリャコリャ
            
             帰雁を仰ぎ私は入る帰還困難すぐ踵 ハアコリャコリャ

*忘れ得ずして亡霊のまま

2019-03-11 | 大震災
          旅路閉め姥捨て村へフキノトウ

          復興へ学徒先出し塵掃除

          また越すや行きつく先は路上なり

          汚染さえ無ければ家族ここで生く

          絵そらごと糧なき復興春砂塵

          死の建屋吞み込む人生宇宙的

          時経てど原発棄民や春つむじ

          釜地獄蓋無き手立て春の海

          釜崩壊家族人生各分裂

          除染不可帰れない郷帰りたい

          老棄民ついの棲家と帰還なり

          自主逃避企業と国が春一番

          星月夜我の御魂の羅針盤

          千三つすらも汚染の国の策

          遺構なき被災地のいま蜃気楼

**恒因矢の如し

2018-03-11 | 大震災
      津々浦にあまたある宅七回忌
                更地のままに人も戻らず

      あの日より限界集落なりわいは
                高齢の民か細き結よ

      戻り来ぬ日々を収めた胸の内
                津波と言えど呑むは叶わじ

      刀折れ矢は尽きるとも陸奥を
                拓いた祖霊の血潮脈々

      あの時は阿修羅と狂うこの海も
                素顔は豊穣無尽の宝庫

      明るい未来の原子力八百八町に八百万年
                安き事無き未来もたらし

      我が郷土帰還絶望区域でも
                いつの日子孫原野開拓
             


**6年目…

2017-03-11 | 大震災
 惨炉の路も一炉から                            イチロー

 炉宇魔の路も一呆から                           ロマ人
      
 拝炉の路はバブルから                           アブラムシ

 千人の町も一人から                             孤興

 一粒の種も据えれば興に継ぐ                      北進一頭流
    
 浪は引き熱気も冷えて忘られし仮設過疎者や吸血回路   唖然法師

 船頭行先泥船任せ
      三途の川で炉を放つ ハアコリャコリャ           弥生姐さん

 語り継ぐより痕跡消して
      あの日の前に戻りたい ハアコリャコリャ          孤老

 子ども亡き母母亡き子ども
      共に見つめる沖の果て ハアコリャコリャ          松島とも子

 参与参与と毘沙門天に
      裸若衆福求む ハアコリャコリャ                 氏子代表

 耕して喰らう日々こそ里の素                         トロル
 

*色即是空 空即是色

2016-09-11 | 大震災
 松一本うづみ残した怒涛なり
          不二ひとつうづみのこして若葉哉    蕪村

 松原は悲惨小さき苗をくれ
          松原は飛脚小さし雪のくれ        一晶

 是がまあつひの仮設か逝き五年
          是がまあつひの栖か雪五尺       一茶

 知るたびに更に案じる奥の封
          しるるるは何かあんずの花の色     貞徳

 散々ももとはひとつの袈裟歪み
          三夕も本やひとつの今朝の秋       元隣

 夕迫る浪に放たる雪時雨
          晴行くや波にはなるるよこしぐれ     風虎

 東日本大震災から五年半が過ぎた。当時、暑い盛りの後片付けボランティアは減少し不足すると報道されていたので、小生も及ばずながらと用意していた矢先にアキレス腱断裂をしてしまった。結果として参加は断念せざるを得なかったのだが、せめてもの償いにと「三日三月三年」と言う通り、三年間毎月のアップを決めた。
 三年後、終了するに忍びなく「五年目までは」と目標変更し、ようやく五年目到達となった。今年の3月で終了しても良かったのだが、こんどは「いけるところまで行く」と朝令暮改し6カ月、ついに力尽きた。
 今までは嫉妬や妄想、煩悩のごとく折に触れ湧いた文字列が出てこなくなったのである。義務や修行とも異なる事だから一応の区切りをつける事にした。尽きる事無い泉のごとく湧いてくると思っていたのだが、何事にも終焉はあるものだ。

 つまるところ、自分自身の終焉も考えねばならなくなった年代で、紛う事無く「土は土に塵は塵に」となるのだが、この世界、生成消滅を繰り返す宇宙の一瞬に過ぎない過程を映像で見ていると、般若心経は究極の宇宙科学書だと思われ、全ては無限の一体である事を感じさせるし、孫悟空が捕らわれた掌も理解できる。
 お彼岸はまだ先だが犠牲者のご冥福を改めて祈りたい。合掌。

**盂蘭盆

2016-08-11 | 大震災
 浪かぶる花なれど活きまた供え
          焼けにけりされども花はちりすまし   北枝

 永き日々太鼓踊りに込めし怨
          永き日や太鼓のうらの虻の音      浪化

 ふらここで真言送る沖の果て
          ふらここの会釈こぼれる高みより    大祇


 現実と思えぬままで崩落に消えた汝よ盆に帰省せ

 阿蘇の空たなびく火煙見るたびに汗か涙か知らず噴き出る

 瓦礫山雨打つ後は猛暑なり背中も腰も伸ばす場所無し

 漁火や今日の出漁迎え火か次の出舟は送り火でする

*夏雲の下

2016-07-11 | 大震災

       葛蔓にからめとられる猪は棲む

       五年なる時経つ独居焼けし皺

       記念樹と生きて五年目盆の空

       六尺の身置き所無し猪闊歩


       雨は降る降る瓦礫家濡れる越すに越されぬ大惨事

       草の千里は緑に埋まる郷は瓦礫のてんこ盛り

       身代揺るがすあの日の後も御神火静かで有難い

仮住まい安き事なし

2016-06-11 | 大震災
 残り花抜け歯の櫛へ仮設過疎

 申年や春には仮設また移り

 膨れ見ゆ蕾消し去り浪来た日


 避難所に安き事無し母と姥乳房出せぬし寝床軒下

 瓦礫なる我が家の陰で白湯飲めば独りとは言え安らぎの刻

 あの時は雪降る時の濡れそぼり今は雨打つ緑の郷で

海引こう山曳こう

2016-05-11 | 大震災
 高田松原跡もなし千年経てわたつみ目覚め津波きつらむ
      武隈の松はこのたび跡もなし千年を経てやわれはきつらむ    能因

 陸奥はいづくはあれどしおがまの港寄る船漁果かなしも
      陸奥はいづくはあれどしほがまの浦こぐ舟の綱手かなしも    詠み人知らず

 
 大阿蘇の里は揺れ揺れナマズ魔の宿りて果てぬ大地の稲妻
      風渡る浅茅が末の露にだに宿りも果てぬ宵の稲妻        藤原有家
 
 大地震還らぬ出湯底見えて山の暮らしも裂けて枯れたり
      大堰原かへらぬ水に影見えてことしも咲ける山ざくらかな    桂園一枝

 草千里吹き渡りける初夏の風地割れ走りて牛たたずみし
      天の原吹きすさみける秋風に走れる雲あればたゆたふ雲あり  楫取魚彦

**花は咲けども

2016-04-11 | 大震災
  櫛の歯の落ちゆくように人消えて仮設も過疎となりにけるなり

  この町に住む理由など有りや無し生地も史も盛り土の黄泉

  待ちかねた初の蕾に希望見ゆ捲土重来独りの紀元
  
  子か孫か戻り住まう日は在りや放射線刺すこの父祖の地に

  引き浪は墓標のごとく岩を捨つ岩さえ消され皆さざれ石