この夏も、観劇三昧。
大阪、新しくなったKITTEビルの6階にオープンしたのが、SKYシアター。
3月から杮落しシリーズが始まって、7月末は、こまつ座『母と暮せば』です。→ こちら
富田靖子さんと松下洸平くんの二人芝居。再々演。
SKYシアター、ビル自体のオープンはこの公演が終わってからなので、レストラン街などはまだ閉鎖されてたのですが、なんせアクセスが抜群。
大阪駅に新しくできた西口からすぐなんです。
とはいえ、新しい劇場は、1300席のキャパ。
東京公演はこまつ座ホームの紀伊国屋サザンシアター、450あまり。
3倍近い大きさの劇場での二人芝居なので、どんな感じになるんやろうと思ってましたが、杞憂でしたね。
洸平くん曰く、1,3倍の声を出していたのだとか~
2018年の初演も、2021年の再演も観てきたから、今さら予習することもないのですが、なんといっても長崎原爆の3年後です。
生き残った母のもとに幽霊となって現れる息子が、生きる意欲をなくしている母に、自分の代わりに生きてほしいと願う物語。
戦争や原爆を題材にした作品を毎夏、観てるんですけどね。
今年も観れて良かったです。~
再々演とはいえ、初日が大阪というのが嬉しいですね。いつもは東京からなので。
今回も、この舞台を初めて観るという後輩、友だちを連れて、初日と大阪楽日に行ってきました。
舞台が始まる前の静寂。どの舞台もそうですが、あの緊張感がたまりませんね~
『母と暮せば』のタイトルが書かれたいつもの紗幕。
静寂のなか、スタッフが浩二の遺影の前の蝋燭に灯りをともします。
揺れる蝋燭の灯り。
幕が上がると、靖子さん演じる母、伸子の独白から始まります。
富田さんの声が小さい気がして、劇場の広さもあるけどマイクを使うミュージカルなど商業演劇に慣れすぎたかな、なんて思ったり。
徐々に耳も慣れて、靖子さんの声も届き始めましたけどね。
洸平くんの声は最初からしっかり聞こえたから、舞台の人やなとつくづく。
二人の会話劇ながら、親子らしく、ほんとにナチュラル。
長崎弁の掛け合いに思わず笑ってしまうところもたくさんあります。
客席からの笑い声もたくさんありました。
でもね。笑った後の一瞬の沈黙が、ほんとにたまらんのです。
「笑っとらんとやっとられん」
「もう終わったことやけん」
「幸せは生きとるもんのものやけん」
あぁ、息子の浩二は死んでるんやなって、思うんですよ。現実に戻されるんです。
台所の窓が茜色に染まるころの芝居は観ていてほんとに苦しい。
初演の時は洸平くんが演じる浩二が切なくて、こんなすごい芝居ができる人なんやと思いましたね。
再演の時は富田さん演じる伸子の怒りが苦しくて、この物語のキモがわかったような気がしました。
そして再々演の今回は、二人の優しさを感じました。
悲しさや悔しさ、それを超えて、互いを想い合う親子の愛、慈愛というか。
幽霊だから食べたり飲んだりはできません。
でも、母の作る「おむすび」が一番おいしか、という息子のために、母はエアで「おむすび」を作ります。
それをおいしそうにエアで食べる息子。
「うまか~」
洸平くんが潤んだ目をしているとほんとに泣けてくる。
マスクで、涙も鼻水も隠せて良かった。ほんとに。
それにしても、今回一番びっくりしたのは、浩二が裸足やったこと。
だって、初演も再演も浩二は靴下はいてたからね。
ご登場の時、階段から降りてくる浩二が裸足で、うわっ!て思って、それから、もうそのおみ足が気になって〜
後方席やったから、オペラグラスで何度もガン見しましたよ。指の長い洸平くんの足を~~(笑)
なんで裸足にしたのかな、知りたいな~
再演の時、栗山さんが「浩二は幽霊なんだから、音を立てないで」っておっしゃって。
「それは無理ですよ~」って言うてた洸平くんやけど、今回、ほんとに静かで、ちょっとびっくり。
裸足はそのため???
・・・裸足やったらよけいに音がしそうなんやけど・・
前回と変わったところといえば、「笑っとらんとやっとられん」というセリフの時の浩二の位置。
今回は背中を向けて、袖の方に向かって座って、いうてましたね。(前回は前を向いてたような・・)
あと、伸子が、浩二の恋人の町子の話をした時の、伸子のしぐさ。
「町子が『私はこのまんま、浩二さんのことを思って一人で生きていきます』っていうて、『それば聞いて浩二は喜ぶやろか』って言うたと」と伸子。
「喜んだけどなぁ」って浩二が伸子を見て言うんですね。
その時、コラって感じで、伸子が左手をグーにしてあげたんですよ。
で、「喜ばん!」て浩二が言いなおすんです。(伸子のグーを見た感じで)
前回、伸子は手をあげなかったから、顔を見て「喜ばん!」って言いなおした感じでした。
ポンポンとリズムが良くなった感じかな。
それと、あの浩二の被爆シーンのところ。
「熱か、熱か・・」って苦しみながら叫ぶ浩二に、水を入れたコップを渡す伸子。
(幽霊だから)水は飲めないという浩二。
なので、伸子はそのお水を飲んで、空になったコップを渡します。
浩二はその空のコップを口にして、お水を飲み干すようにしてうずくまるんです。
でも、今回は、伸子がうずくまる浩二の手から、飲み干したそのコップを取って、一緒にうずくまる、という感じになってました。
(わかりづらい表現ですいません~)
細かなところやけど、変化がありましたね。
伸子の、息子を愛おしく思う気持ちがあふれていましたね。
この舞台は、映画が先でした。
山田洋次さんの脚本で、二宮和也くんと吉永小百合さんが演じた映画。
舞台版は、(井上ひさし作の『父と暮せば』と対になるように作られた)二人芝居だし、映像と違って表現空間に制限があります。
その分、二人の背景や状況が台詞で語られることになります。
この作品の何が素晴らしいって、台詞で語られるその光景がちゃんと見えてくるところですね。
「おむすび」のシーンしかり、窓から見える長崎の町、路面電車に向かう浩二の姿、そして被爆する浩二・・・焼け跡で息子を探す伸子の姿、伸子の助産婦の師である祖母の手、フィアンセの靴ひもをほどく町子の手・・・
そして何より、初演から3度目、6年経っても同じ役を同じ俳優が演じることができるのも、舞台ならではのことです。
今回、浩二は前髪をナチュラルに分けて(切ってないですね! ドラマが控えてるから??)今までで一番長くて、ちょっと大人に思えた浩二でした。
カーテンコールは厳かに、お二人が微笑み合う姿が、ほんとに美しかったですね。
客席で、右隣の方は早々に鼻を啜ってはりました。
左隣の方は私と同じタイミングでオペラグラスでガン見してはりましたが、伸子の長台詞のところで明らかに船を漕いではりました(汗)
あそこは、聞いて欲しかったですけどね〜
ロビーには、来年の舞台「ミュージカル ケインとアベル」のポスターが。
座席に置いてあったチラシ束には、FCのチラシが一番上になってました。
もちろん、ポスターと同じデザインの、ケインとアベルのチラシも入ってました。
初日のロビーで、出入り口にいる演出の栗山民也さんのお姿をチラリとお見掛け。
思わず拝みたくなりました。素敵な作品を、ありがとうございます。
この後発売された、演劇雑誌『BEST STAGE』に、富田さんと洸平くんのインタビューが掲載されてました。
洸平くんが、『母と暮せば』初演の滋賀公演のことを話してくれてて、ウルウル。
あの時、『スカーレット』の内田Pがびわ湖ホールでこの舞台をご覧になってたことは、洸平ファンには周知のこと。
すでに『スカーレット』に出演が決まってた富田さんが出演されてたし、関西での最初の公演がびわ湖ホールやったこともあって、来てくださったようですね。
そこで、内田Pが洸平くんをご覧になって、ハチさん役が決定となったらしいです。
(洸平くんを知ったのはその4年前の舞台らしく、ストックされてたんですって)
そして栗山さんの、再々演でのオーダーを、お二人がおっしゃってました。
「ここが教会に見えてほしい。浩二を抱く伸子がピエタのように見えてほしい」
ピエタ像とは、十字架から降ろされたイエス・キリストを抱いて嘆き悲しむ聖母マリアの姿を表現した像です。
ミケランジェロをはじめ多くの画家や彫刻家が作品を残していますけど・・・そうなんやね。
これを読んで、初日に私が感じたことはそうやったのか~って思いました。
二人の醸し出す雰囲気が、本当にナチュラルな親子の愛に満ちてて、優しさというか慈愛を感じたからね。
そして、再々演も「初演と同じ気持ちで」という洸平くん。
その言葉は観る側の私も同じ。何度観ても初演に感じたあの衝撃と感動は今回もありました。
おむすびとお味噌汁。
涙を溜めながら「おいしか~」っていう浩二の姿は今回も、涙でかすみました。
あのシーンは本当に、浩二そのものでした。
8月末の、東京公演の感想は → こちら
大阪、新しくなったKITTEビルの6階にオープンしたのが、SKYシアター。
3月から杮落しシリーズが始まって、7月末は、こまつ座『母と暮せば』です。→ こちら
富田靖子さんと松下洸平くんの二人芝居。再々演。
SKYシアター、ビル自体のオープンはこの公演が終わってからなので、レストラン街などはまだ閉鎖されてたのですが、なんせアクセスが抜群。
大阪駅に新しくできた西口からすぐなんです。
とはいえ、新しい劇場は、1300席のキャパ。
東京公演はこまつ座ホームの紀伊国屋サザンシアター、450あまり。
3倍近い大きさの劇場での二人芝居なので、どんな感じになるんやろうと思ってましたが、杞憂でしたね。
洸平くん曰く、1,3倍の声を出していたのだとか~
2018年の初演も、2021年の再演も観てきたから、今さら予習することもないのですが、なんといっても長崎原爆の3年後です。
生き残った母のもとに幽霊となって現れる息子が、生きる意欲をなくしている母に、自分の代わりに生きてほしいと願う物語。
戦争や原爆を題材にした作品を毎夏、観てるんですけどね。
今年も観れて良かったです。~
再々演とはいえ、初日が大阪というのが嬉しいですね。いつもは東京からなので。
今回も、この舞台を初めて観るという後輩、友だちを連れて、初日と大阪楽日に行ってきました。
舞台が始まる前の静寂。どの舞台もそうですが、あの緊張感がたまりませんね~
『母と暮せば』のタイトルが書かれたいつもの紗幕。
静寂のなか、スタッフが浩二の遺影の前の蝋燭に灯りをともします。
揺れる蝋燭の灯り。
幕が上がると、靖子さん演じる母、伸子の独白から始まります。
富田さんの声が小さい気がして、劇場の広さもあるけどマイクを使うミュージカルなど商業演劇に慣れすぎたかな、なんて思ったり。
徐々に耳も慣れて、靖子さんの声も届き始めましたけどね。
洸平くんの声は最初からしっかり聞こえたから、舞台の人やなとつくづく。
二人の会話劇ながら、親子らしく、ほんとにナチュラル。
長崎弁の掛け合いに思わず笑ってしまうところもたくさんあります。
客席からの笑い声もたくさんありました。
でもね。笑った後の一瞬の沈黙が、ほんとにたまらんのです。
「笑っとらんとやっとられん」
「もう終わったことやけん」
「幸せは生きとるもんのものやけん」
あぁ、息子の浩二は死んでるんやなって、思うんですよ。現実に戻されるんです。
台所の窓が茜色に染まるころの芝居は観ていてほんとに苦しい。
初演の時は洸平くんが演じる浩二が切なくて、こんなすごい芝居ができる人なんやと思いましたね。
再演の時は富田さん演じる伸子の怒りが苦しくて、この物語のキモがわかったような気がしました。
そして再々演の今回は、二人の優しさを感じました。
悲しさや悔しさ、それを超えて、互いを想い合う親子の愛、慈愛というか。
幽霊だから食べたり飲んだりはできません。
でも、母の作る「おむすび」が一番おいしか、という息子のために、母はエアで「おむすび」を作ります。
それをおいしそうにエアで食べる息子。
「うまか~」
洸平くんが潤んだ目をしているとほんとに泣けてくる。
マスクで、涙も鼻水も隠せて良かった。ほんとに。
それにしても、今回一番びっくりしたのは、浩二が裸足やったこと。
だって、初演も再演も浩二は靴下はいてたからね。
ご登場の時、階段から降りてくる浩二が裸足で、うわっ!て思って、それから、もうそのおみ足が気になって〜
後方席やったから、オペラグラスで何度もガン見しましたよ。指の長い洸平くんの足を~~(笑)
なんで裸足にしたのかな、知りたいな~
再演の時、栗山さんが「浩二は幽霊なんだから、音を立てないで」っておっしゃって。
「それは無理ですよ~」って言うてた洸平くんやけど、今回、ほんとに静かで、ちょっとびっくり。
裸足はそのため???
・・・裸足やったらよけいに音がしそうなんやけど・・
前回と変わったところといえば、「笑っとらんとやっとられん」というセリフの時の浩二の位置。
今回は背中を向けて、袖の方に向かって座って、いうてましたね。(前回は前を向いてたような・・)
あと、伸子が、浩二の恋人の町子の話をした時の、伸子のしぐさ。
「町子が『私はこのまんま、浩二さんのことを思って一人で生きていきます』っていうて、『それば聞いて浩二は喜ぶやろか』って言うたと」と伸子。
「喜んだけどなぁ」って浩二が伸子を見て言うんですね。
その時、コラって感じで、伸子が左手をグーにしてあげたんですよ。
で、「喜ばん!」て浩二が言いなおすんです。(伸子のグーを見た感じで)
前回、伸子は手をあげなかったから、顔を見て「喜ばん!」って言いなおした感じでした。
ポンポンとリズムが良くなった感じかな。
それと、あの浩二の被爆シーンのところ。
「熱か、熱か・・」って苦しみながら叫ぶ浩二に、水を入れたコップを渡す伸子。
(幽霊だから)水は飲めないという浩二。
なので、伸子はそのお水を飲んで、空になったコップを渡します。
浩二はその空のコップを口にして、お水を飲み干すようにしてうずくまるんです。
でも、今回は、伸子がうずくまる浩二の手から、飲み干したそのコップを取って、一緒にうずくまる、という感じになってました。
(わかりづらい表現ですいません~)
細かなところやけど、変化がありましたね。
伸子の、息子を愛おしく思う気持ちがあふれていましたね。
この舞台は、映画が先でした。
山田洋次さんの脚本で、二宮和也くんと吉永小百合さんが演じた映画。
舞台版は、(井上ひさし作の『父と暮せば』と対になるように作られた)二人芝居だし、映像と違って表現空間に制限があります。
その分、二人の背景や状況が台詞で語られることになります。
この作品の何が素晴らしいって、台詞で語られるその光景がちゃんと見えてくるところですね。
「おむすび」のシーンしかり、窓から見える長崎の町、路面電車に向かう浩二の姿、そして被爆する浩二・・・焼け跡で息子を探す伸子の姿、伸子の助産婦の師である祖母の手、フィアンセの靴ひもをほどく町子の手・・・
そして何より、初演から3度目、6年経っても同じ役を同じ俳優が演じることができるのも、舞台ならではのことです。
今回、浩二は前髪をナチュラルに分けて(切ってないですね! ドラマが控えてるから??)今までで一番長くて、ちょっと大人に思えた浩二でした。
カーテンコールは厳かに、お二人が微笑み合う姿が、ほんとに美しかったですね。
客席で、右隣の方は早々に鼻を啜ってはりました。
左隣の方は私と同じタイミングでオペラグラスでガン見してはりましたが、伸子の長台詞のところで明らかに船を漕いではりました(汗)
あそこは、聞いて欲しかったですけどね〜
ロビーには、来年の舞台「ミュージカル ケインとアベル」のポスターが。
座席に置いてあったチラシ束には、FCのチラシが一番上になってました。
もちろん、ポスターと同じデザインの、ケインとアベルのチラシも入ってました。
初日のロビーで、出入り口にいる演出の栗山民也さんのお姿をチラリとお見掛け。
思わず拝みたくなりました。素敵な作品を、ありがとうございます。
この後発売された、演劇雑誌『BEST STAGE』に、富田さんと洸平くんのインタビューが掲載されてました。
洸平くんが、『母と暮せば』初演の滋賀公演のことを話してくれてて、ウルウル。
あの時、『スカーレット』の内田Pがびわ湖ホールでこの舞台をご覧になってたことは、洸平ファンには周知のこと。
すでに『スカーレット』に出演が決まってた富田さんが出演されてたし、関西での最初の公演がびわ湖ホールやったこともあって、来てくださったようですね。
そこで、内田Pが洸平くんをご覧になって、ハチさん役が決定となったらしいです。
(洸平くんを知ったのはその4年前の舞台らしく、ストックされてたんですって)
そして栗山さんの、再々演でのオーダーを、お二人がおっしゃってました。
「ここが教会に見えてほしい。浩二を抱く伸子がピエタのように見えてほしい」
ピエタ像とは、十字架から降ろされたイエス・キリストを抱いて嘆き悲しむ聖母マリアの姿を表現した像です。
ミケランジェロをはじめ多くの画家や彫刻家が作品を残していますけど・・・そうなんやね。
これを読んで、初日に私が感じたことはそうやったのか~って思いました。
二人の醸し出す雰囲気が、本当にナチュラルな親子の愛に満ちてて、優しさというか慈愛を感じたからね。
そして、再々演も「初演と同じ気持ちで」という洸平くん。
その言葉は観る側の私も同じ。何度観ても初演に感じたあの衝撃と感動は今回もありました。
おむすびとお味噌汁。
涙を溜めながら「おいしか~」っていう浩二の姿は今回も、涙でかすみました。
あのシーンは本当に、浩二そのものでした。
8月末の、東京公演の感想は → こちら