福井県民一般だったのかどうかはわからないが、幼いころ我が町の人々は、国鉄(いまのJR)を汽車、京福電鉄を電車とよんでいた。
故郷の芦原と、となりの金津町をつなぐ列車がディーゼル汽車だったし、北陸本線にもディーゼルカーが多数走っていた時代だ。
その国鉄が廃線になったのは、小学校低学年のときだ。
今思えば、高度経済成長期のモータリゼーションの発展に伴う、不採算路線に整理という動きだったのだと分かるが、こどもの頃はさびしかった。最後の運行の日のキップを、しばらく大事にもっていた。
芦原までくる汽車はなくなるけど、隣町の金津駅が「芦原温泉」と駅名を変える、そしてそこは、まもなく完成する北陸新幹線の停車駅にもなるということで、町民納得の廃線だと大人から聞いた。
新幹線がくる。
広告の裏に日本地図を書き(そのころほんと上手に地図を書けたのだが、のち塾講師のバイトで社会を教えた時、「先生地図うまい」と言われるくらい役に立った)、東海道新幹線を書き、次に北陸新幹線の路線予想図を書いた。
富山、金沢、芦原温泉、福井 … と停車予定駅を書き込む。
つぎに高岡、小松も書いてあげたけど、ライバルの加賀温泉駅は書かなかったかもしれない。
そんなふうに夢をはせていた子供時代から、40年以上が経った。
気が付くと上越新幹線ができ、東北新幹線が完成し、長野新幹線、九州新幹線も生まれた。
鉄ちゃんなわけでもない自分のような一般人が感慨深いのだから、長年尽力してきた関係者にとって、今回の開業をどれほどの思いで迎えたことだろう。
川越東高校の面接に来たときは、金沢を夜出発して大宮に朝到着する夜行で来た。7時間半くらいの行程だった。
大宮、金沢間は約2時間で結ばれる。日帰りさえ可能だ。自分のなかでは、すでにどこでもドアに近い。長生きさせていただいた。
芦原温泉、福井と延伸されるのに、さらに数年が見込まれているが、やっと実現が見えてきたと言える。
ただしこれで、金沢とその他の土地の経済格差は益々広がるだろうなというのが、おそらくかなり確かな経済予測だ。都市の文化レベルは、長年の蓄積でつくりあげられている。
6年間暮らした金沢という町に奥深さは、貧しい学生の身にもびしびしと伝った。
観光客が増え、東京の資本もこれまで以上に入り込んでくるだろうが、自分をしっかり持っている金沢の人は、したたかに町を発展させるに違いない。
銀座や秋葉原で爆買するタイプの観光客との相性がそれほどでもないことも、たぶんいい方向につながるだろう。
何はともあれ、一度乗ってきたいな。