~ 家のゴミ箱で見つけてしまった妊娠検査薬のことを誰にも相談できず、気持ちが落ち着かない「すず」。そんな時、地蔵堂の軒下で眠っている千佳をを見つけて!? 夏の日差しが降り注ぐ鎌倉を舞台に、家族の「絆」を丁寧に描く、シリーズ第8巻。 ~
『海街diary』最新巻は、4人姉妹が人生の転機を迎えつつあり、4人家族の形態が大きく変わる前夜を描いていて、これまで以上に切なさがつまっている。
三女千佳は、つきあっているスポーツ店店長との間に子を授かった。でも、彼女はそれを店長に言えない。
エベレスト登頂チームの一員として、その準備に入ろうとしている彼に負担をかけたくないとの思いからだった。
四女すずが、千佳の妊娠に気づくが、姉たちにはまだ言わないでほしいと口止めされる。
その千佳が軽い熱中症で病院に運び込まれた。
かけつけた姉たちが事実を知る。「あたしがついていながら … 」と号泣するすずを、あんたは悪くない悪いのチカだと次女の佳乃がなじる。
「もうやめて! チカちゃんのこと怒んないで! チカちゃんだって、ほんとは言いたかったんだよ、だけど … 」。
泣き崩れるすずを見ながら、サチ姉がチカに語る。
「 … わかったでしょ。これがあんたのしたこと。
そんなつもりなくっても、あんたはすずを傷つけたの
噓をつくって重荷を負わせたのよ
浜田さんにもよ
あんたはあの人の登山家としての誇りを傷つけるところだった
… あんたの気持ち、わからなくもないわ
好きな相手のこと優先して 先回りして考える
それが相手のためにもなるはずだって
相手に事情があればなおさらね
でもね、それはやっぱり違うと思う
佳乃の言うとおり
彼の仕事と子供のことは全く別なものよ
そんな大切なこと
言ってもらえないほうがきっと あの人は傷つくわ」
「お姉ちゃん … 」
「ちゃんと話なさい
あの人がヒマラヤに行く前に」
噓をつくとはどういうことか
相手のことを本当に思いやるとはどういうことか
気を遣うことと信頼することとはどう違うか
道徳からもっとも遠い人たちがつくる道徳の教科書を読ませるより、
『海街diary』を読ませることが方が、よほどいい教材になる。