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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

自分(2)

2020年09月07日 | 学年だよりなど
  3学年だより「自分(2)」


 2020年3月。白血病と診断されて以来1年1ヶ月ぶりにプールに入れたことを、池江さんはインスタで報告した。7月には、練習の様子を報道陣に公開する。テレビでその様子を見たとき、ここまで細くなってしまったのかと驚いた記憶がある。

~「もしかしたらもう元には戻れないという気持ちもあります。でも、病気の方たちにここまでまた強くなれるんだよということを知ってもらいたいという気持ちや、このまま中途半端なまま水泳を終わらせたくないという気持ちもすごいあって。ガリガリになった姿や、髪の毛が全く無くなったというのは、病気になった人はみんな経験していることであったと思うし、そういうつらい経験をして、そういう病気になったけどここまで戻ってこれるんだよという希望を、たくさんの人に与えたいと思って(SNSで)発信してきました」(2020年7月)~

 7月23日、本来なら東京オリンピックが始まった日、国立競技場のピッチで、彼女は世界中にメッセージを送る。

~「今から1年後。オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなにすてきだろうと思います。今は、一喜一憂することも多い毎日ですが、一日でも早く、平和な日常が戻ってきてほしいと心から願っています。希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても前を向いて頑張れる。私の場合、もう一度プールに戻りたい。その一心でつらい治療を乗り越えることができました。世界中のアスリートと、アスリートから勇気をもらっているすべての人のために。1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていてほしいと思います」(2020年7月)~

 池江さんを支えた多くの人達がいる、家族、友人、コーチ、仲間のアスリートたち……。
 その思いに応えたいという気持ちとともに、何より「もう一度泳ぎたい」という思いが、池江さんの中に揺るがないものとしてある。そんな彼女にとっては、たとえばインカレ予選も、オリンピックでさえも、手段の一つにすぎないのではないだろうか。


~ 自分は何をしたいのか。何をするべきだと思っているのか。どんな人になりたいのか。
  … この三つの文の実質的意味は同じことである。
 自分とは志である。志がないと自分がわからない。力が出ない。自分の言動の基準が定まらない。自分を律することが出来ない。努力が出来ない。自分がどこへ行くのかがわからない。 (宇佐美寛『宇佐美寛 問題意識集10巻』明治図書) ~


 それがないと自分が自分でなくなるほどの「それ」があれば、自分がやるべきことに悩まない。
 その「目的」を達成するために「手段」がある。
 池江璃香子さんが、泳ぐという目的を果たすために、治療という手段をとったように。
 手段はいくらでも変えていい。
 まちがって手段を目的化してはいけない。
 大会もコンテストも受験勉強も、志を形にするための手段だ。
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