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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「y=f(x)」

2020年09月23日 | 学年だよりなど
  3学年だより「y=f(x)」


 「y=f(x)」という式の意味を知っているだろうか……と書いたらばかにするなと言うかもしれない。xにある値を入れればyの値が決まるというだけでしょ、と。
 ふふっ、浅いな。その答えなら、中学生でも言えるではないか。
 せっかく高校で学び、大学まで進もうというのだから、それを自分の思考に役立てなければ。


~ 関数は、「y=f(x)」で表されます。fは作用(function)で、xの値に応じてyの値が導き出されます。「何かを入れると、一定の変換で何かが出てくる」という法則性は、新しいアイデアを考えるときに活用できます。
 わかりやすくするために、fを「ボックス化」の作用としてみましょう。例えばxに「カラオケ」を入れたら、ボックス化(カラオケ)=カラオケボックスというものが導き出されます。
 かつて私が20代のころは、カラオケというとカラオケスナックか観光バスの車内で歌うものと相場が決まっていました。知らない人も含めた他人の前で歌うものとされていたわけです。当時からカラオケを楽しむ人は多かったのですが、知らない人が歌うのを聞き続けるのは多少退屈でもありました。
 しかし、家族や友人、あるいはたった一人でも楽しめるカラオケボックスの誕生により、カラオケは一気に日常に浸透しました。まさにカラオケボックスはイノベーティブな発明品です。
 これにならって、何かをボックス化して思考してみましょう。xに「居酒屋」を入れたら個室式のボックス居酒屋が、「野球」を入れたらバッティングセンターが成立します。いずれも、今やあらゆる場所に定着しているアイデアです。
 あるとき、私がこのボックス化について考えてもらう機会を作ったところ、「xに宇宙を入れて、プラネタリウムはどうでしょう」と言った人がいました。なかなかのセンスの持ち主だと思います。
         (斉藤孝『思考中毒になる!』幻冬舎新書) ~


 将来、生活の中で関数の式を書く機会はないかもしれないが、「関数」的に物事を考えてみるという思考法は、役に立つだろう。
 そもそも今やっている勉強が、直接的に実社会で役立つものでないことは、みんなもわかっているはずだ。じゃあ、それは大学入試が終わった瞬間に一切ムダになるのだろうか。
 そんなことはない。知識をインプットする、それをどう使うか訓練する、今まで思いつかなかった組み合わせに気づく……といった作業をいまみなさんは行っている。
 知らず知らずのうちに、知識が思考の型に変わろうとしている。
 そうなれば、大人になってから仕事に役立つこともあるだろうし、ものの見方が変わる。
 今やっている勉強は「f」をたくさん身につけることだ。
 たとえば現代文は、「近代的価値観の批判的検討」という「f」を学び、その観点で世の中の現象がどう見えるかをエクササイズする。英語の思考法という「f」を身につけたり、歴史の因果関係という「f」で現代社会を見ようとしたりしているではないか。
 たくさん「f」をもつことが、頭をよくし、人生を豊かにするのだ。
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