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葬式は、要らない 島田裕巳

50歳を過ぎると、まだまだという気はあるものの、親が死んだ時の対応はどうしたらいいのだろうかとか、自分が死んだときに家族になるべく負担をかけさせたくないとかを、ふと考える時がある。葬式というのは、急に必要になるものだが、なんだかとても判りにくい世界だ。あまりそのあたりを深く考えたりはしたくないし、なんだか人に聞いたりするのも憚られる。いろいろ考えるのだが、結局は、必要になったときに、葬儀社あたりに連絡をすると、かなりの費用はかかるだろうけれども、すべて彼らがうまくやってくれるだろうというところ落ち着いて終わりである。こうした状況の人が多いと思われるなか、本書は、あまり人には聞けない話を、しっかりと教えてくれる本だ。特にこの本に書かれた「戒名というものの正体」にはなるほどと思った。「戒名」などという制度は仏教の経典のどこにもなく、しかも日本にしかない風習なのだそうである。仏教の学校でも「戒名」については全く教えていないそうだし、そもそも普通のお坊さんに「戒名」を授ける資格があるのか疑わしいのだそうだ。また、日本の場合、「戒名」の長さで値段が違うというのを聞いたことがあるが、「長い方が良い」などというのは全くの根拠がない話で、日本の仏教隆盛の礎をつくった聖武天皇や栄華を極めたの藤原道長の戒名ですら「たったの2文字」だったという事実が書かれている。さらに自分で自分の戒名を作る際のこつなども書かれていて、早速作って見たりもできる。単なる合理主義だけではなく、合理的に考えておかしい現在の葬式のあり方に一石を投じた本書は、意外に実践的な本でもあるように感じた。(「葬式は、要らない」島田裕巳、幻冬舎新書)
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