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ヨーロッパの中世美術 浅野和生
本書も、ローマ観光の準備のために、行きの飛行機で読んだ本である。中世美術の鑑賞に役立つかもしれない、中世美術に関する最近の研究の一端を知っておきたいなどと考えて読んだのだが、最初のページを読んでまず、私自身、中世美術を考える以前に「そもそも中世とは何か」という問いに満足な答えを持っていないことに気づかされた。私自身が考えている「中世」とは、「こういうもの」という明確な定義によるものというよりは、「古代と近代の間」という消去法のようなもので漠然と捉えていたものだということに気づかされた。しかも本書を読んでいると、「中世美術」というのはさらに厄介なもので、「中世に制作された美術品」イコール「中世美術」という単純なものでもないらしい。私を最も混乱させたのは、本書が、中世の美術を記述しているのに、最初のうちに使われている写真が「廃墟」のようなものばかりだったからだ。「中世」とはいつからいつまでなのかを考えることもなく、頭の中で漠然と「廃墟=古代美術」と考え、それが「中世美術なのに廃墟?」ということになってしまったのだろう。写真の廃墟と中世という言葉がどうしても頭のなかで結びつかないことに大いに戸惑った。
全体としては、「美術とは何か」という点についても改めて考えさせられた。本書の内容が、建物の様式とその装飾に偏っているように感じられたのだが、よく考えるとそれは、作者の趣味や得意分野による偏りではなく、中世の美術というものがそういうものだったということになるだろう。絵画や工芸品のようなものがそれ単体で美術と見なされていなかった時代、それがまさに「ヨーロッパの中世」だったのではないかと思い当たった。(「ヨーロッパの中世美術」浅野和生、中公新書)
全体としては、「美術とは何か」という点についても改めて考えさせられた。本書の内容が、建物の様式とその装飾に偏っているように感じられたのだが、よく考えるとそれは、作者の趣味や得意分野による偏りではなく、中世の美術というものがそういうものだったということになるだろう。絵画や工芸品のようなものがそれ単体で美術と見なされていなかった時代、それがまさに「ヨーロッパの中世」だったのではないかと思い当たった。(「ヨーロッパの中世美術」浅野和生、中公新書)
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