書評、その他
Future Watch 書評、その他
日本辺境論 内田樹
いろいろな新書ランキングでベスト1になり、書評各誌でも絶賛されている本書。ローマ観光中に、ちょっとした待ち時間に少しずつ読んだのだが、ベスト1に推されているのがよく判るような実に味わいの深い本だ。10日間の旅行で日本から新書を3冊持って行ったのだが、そのうちの2冊を行きの飛行機の中で読んでしまったので、残り9日間で読める本はこの本だけという状況になってしまい、時間をかけて少しずつ読んだのだが、それが良かったのかもしれない。少しずつ読んでもよく頭に入るような平易な文章でありながら、著者の思考プロセスが明確に伝わってくるような醍醐味を感じることができた。著者は新しいことは何も書いていないと謙遜しているが、「日本の辺境性」という一つの切り口を徹底的に突き詰めていくことそのものが。ここまで新しい視野を提供してくれることには驚きを禁じえない。確かに、日本人が他国の文化の吸収にすぐれているのは何故か? という問いの答えが「外部に必ず上位文化がある」と信じる日本人の特性から説明できることは明白だが、その同じ切り口で、日本人は何故「‥道」というものを発展させてきたのか? 日本の武士道の本質は何か? 日本のマンガが世界の最先端をいくのは何故か? こうした問いに対してもこの切り口が実に有効であることを示されと、まさに驚きだ。最後の方で、日本語の特性を「メタ・メッセージに労力の大半を使う言語」と規定する部分も、本当に面白い。これまでに読んだ新書のなかでも傑出した内容の深さを感じた。(「日本辺境論」内田樹、新潮新書)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )