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ロスト・シンボル(上・下) ダン・ブラウン
数年前に一世を風靡した「ダヴィンチ・コード」の作者、ダン・ブラウンが満を持して発表した新作。ローマを舞台とした「天使と悪魔」、パリを舞台とした「ダヴィンチ・コード」に次ぐ、ラングドン教授シリーズの3作目で、今回の物語の舞台はワシントンDCだ。実をいうと、今月行って来たローマでは、ミーハーと言われてても仕方がないが、「天使と悪魔」の舞台となった場所、バチカン、サンタンジェロ城、ナヴォーナ広場、サンタ・マリア・デル・ヴィットリア教会等を全て訪れてきた。私にとっては4回目のローマ観光だったので、観光内容に何か今までにないアクセントをつけたかったからである。ローマに行く前に本書が刊行されていることは知っていたが、帰国後に読もうと思って、読むのを我慢していた。そういう感じでいつになく思い入れの深い読書となった。
本書の内容だが、歴史的・宗教的な団体の謎に迫る歴史ミステリー、差し迫る危機、観光名所案内、最先端の科学、暗号解読というお決まりのパターンで安心して読める。しかし、夜の観光名所を疾走するスピード感とハラハラするミステリアスな展開には今回もとにかく驚かされた。謎が謎を呼ぶ展開に、旅行から帰って時差ぼけを直さなければいけない、早く寝なければと思いつつ、どうしても本を置くことが出来なかった。今回の作品は、全2作に比べるとやや思念的な部分が多いので、映画にする際には、いろいろな工夫が必要だろうと思ったりしたが、ロン・ハワード監督ならば、また、原作の良さを残しつつ面白い娯楽作品に仕立て上げてくれるだろう(私とハワード監督の邂逅については、2010年2月28日の記事を参照ください)
また今回は、仕事や観光で何度も訪れているワシントンDCが舞台にも関わらず、全く知らない場所に案内されたように感じた。こんなに宗教的な色の濃い町だったとは知らずに訪れていた、というのが戸惑いの原因だ。このあたりの感想はアメリカ人も同じかもしれないが、アメリカに住んでいると、とにかくアメリカ社会の「宗教」の影響の強さに驚かされることが多い。もしかすると、宗教概念の強いアメリカ人の読み方は日本人の読み方とは随分違うかもしれないという気もした。
筆の早くない作者のことなので次の作品の話はまだ早いかもしれないが、ローマ、パリ、ワシントンDCときて、次はどこだろうと考えずにはいられない。本命はロンドン、対抗がモスクワというところだろうか。カトリックの強い東欧プラハなども面白そうだ。謎が多いという面ではカイロもありうるし、イスラム教とキリスト教の衝突という観点ではマドリッドやイスタンブールなども候補だろう。東京を舞台に書いてくれると良いが、世界的に有名な観光名所をキリスト教の謎と絡めて展開させるというパターンを考えると、残念ながらそれは当分無理だろう。ただ、彼に書いてもらわなくても、そのうち日本人の誰かがダヴィンチ・コードに匹敵する質の高い東京版歴史ミステリーを書いてくれるような気もする。(「ロスト・シンボル(上・下)」ダン・ブラウン、角川書店)
本書の内容だが、歴史的・宗教的な団体の謎に迫る歴史ミステリー、差し迫る危機、観光名所案内、最先端の科学、暗号解読というお決まりのパターンで安心して読める。しかし、夜の観光名所を疾走するスピード感とハラハラするミステリアスな展開には今回もとにかく驚かされた。謎が謎を呼ぶ展開に、旅行から帰って時差ぼけを直さなければいけない、早く寝なければと思いつつ、どうしても本を置くことが出来なかった。今回の作品は、全2作に比べるとやや思念的な部分が多いので、映画にする際には、いろいろな工夫が必要だろうと思ったりしたが、ロン・ハワード監督ならば、また、原作の良さを残しつつ面白い娯楽作品に仕立て上げてくれるだろう(私とハワード監督の邂逅については、2010年2月28日の記事を参照ください)
また今回は、仕事や観光で何度も訪れているワシントンDCが舞台にも関わらず、全く知らない場所に案内されたように感じた。こんなに宗教的な色の濃い町だったとは知らずに訪れていた、というのが戸惑いの原因だ。このあたりの感想はアメリカ人も同じかもしれないが、アメリカに住んでいると、とにかくアメリカ社会の「宗教」の影響の強さに驚かされることが多い。もしかすると、宗教概念の強いアメリカ人の読み方は日本人の読み方とは随分違うかもしれないという気もした。
筆の早くない作者のことなので次の作品の話はまだ早いかもしれないが、ローマ、パリ、ワシントンDCときて、次はどこだろうと考えずにはいられない。本命はロンドン、対抗がモスクワというところだろうか。カトリックの強い東欧プラハなども面白そうだ。謎が多いという面ではカイロもありうるし、イスラム教とキリスト教の衝突という観点ではマドリッドやイスタンブールなども候補だろう。東京を舞台に書いてくれると良いが、世界的に有名な観光名所をキリスト教の謎と絡めて展開させるというパターンを考えると、残念ながらそれは当分無理だろう。ただ、彼に書いてもらわなくても、そのうち日本人の誰かがダヴィンチ・コードに匹敵する質の高い東京版歴史ミステリーを書いてくれるような気もする。(「ロスト・シンボル(上・下)」ダン・ブラウン、角川書店)
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