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すいかの匂い 江國香織

女性の一人称、季節は夏、子ども時代の思い出という共通点を持つ短編が収められた本書。最初読んでいると、自分の実体験を綴ったエッセイのように感じられたのだが、いくつか読んでいるところで、これは「小説」だというあたりまえのことに改めて気づかされる。小説であることを忘れてしまうというのは、記述される風景や心象が非常に鮮明で、どこかに自分の体験が入っていて、それを様々な形でアレンジしているような雰囲気があるからだろう。昔の言葉であるが、私小説とは違う「虚実皮膜」の形がそこにある。以前、著者の本を読んだ時、「彼女の小説は女性が書いた女性のための小説のようで、中年男性が読み漁るような感じではないのだが」「著者の本は、少し時間が経つとまた何となく読みたくなる」と書いた。前に読んだのが昨年の9月なので、約1年の周期ということになる。(「すいかの匂い」江國香織、新潮文庫)
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