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日本人へ~国家と歴史編~ 塩野七生
同名の「日本人へ~リーダー編~」の続編。本書では、「ローマ人の歴史」シリーズ完結後の著者の様子が判って大変面白い。そういえば「ローマ人…」は確か6巻か7巻まで熱心に毎年読んでいたが、だんだん「日本への教訓の色彩が強くなってきて、読むのが重たくなってきたことに加えて、ある年に何かの理由で毎年読むというサイクルが崩れてしまい、一旦そのサイクルが崩れると元に戻すことも出来ず、途中で読むのを止めてしまった。「引退して時間が出来てから読めばいい」などと思っていたが、本書を読むと、著者は「ローマ人…」完結後、「海賊」に焦点をあてた著書を出しているそうで、それを読むためにも、そろそろ「ローマ人…」の続きを読み始めなければ、という気になってきた。日本人が古代ローマのことを読む以上、そこに現代の日本に対する教訓があったほうが良いというのはわかるが、私としては、そういう教訓的な色彩のあまりなかったシリーズの最初の頃の方が性に合っているように思われる。確か著者はあの「赤頭巾ちゃん」シリーズの庄司薫と同級生だったと記憶している。青春小説で一世を風靡した後、あっという間にどこかに行ってしまった小説家と比べると、著者のたくましさと強烈な個性こそ、日本の宝であるという感を強くする。(「日本人へ~国家と歴史編~」塩野七生、文春新書)
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