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でっちあげ~福岡殺人教師事件の真相 福田ますみ

本書は、福岡で起きた「殺人教師」事件の発端から第1審の判決までを克明に綴ったドキュメンタリーであり、それがとんでもない「冤罪」だったことを世の中に示した書である。本書では、信じられないようなモンスターペアレントもさることながら、それを煽って1人の教師をつるし上げたマスコミ、全てが冤罪だったとわかった後も何も反省しないマスコミに対して、厳しい糾弾の目が向けられている。とにかく読んでいて、ごく普通の「教師」へのあまりにひどい悪意の連鎖と歪曲された報道に、気分が悪くなるというか、読んでいて本当につらくなる。事件は、今のように「モンスター・ペアレント」「クレーマー」という言葉が一般に知られるようになる前の話なのだが、果たしてそうした認識が定着したことによって、事態が改善しているのか、同じような被害者が現れることが少なくなっているのか、その辺は疑問視せざるを得ない。本書を読むと、事態を最も悪くさせたのは、モンスターペアレントでもマスコミでもなく、事なかれ主義で事件を糊塗しようとした学校関係者ということが判る。そうした状況が変わらない限り、本書で描かれたような救われない「冤罪被害者」はこれからも再生産され続けるだろうと、悲観的にならざるを得ない。(「でっちあげ~福岡殺人教師事件の真相」福田ますみ、新潮文庫)
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