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いのちなりけり 葉室麟

著者の直木賞受賞作を最初に読んで感銘を受け、他の作品も読みたくなり、2作目として選んだのが本書。ある書評で、著者の代表作とされていたからだが、期待に違わず、受賞作に勝るとも劣らない素晴らしい作品だ。本書の解説文に、この作品で直木賞を取らなかったのが解せないと書かれていたがその意見に全く同感だ。最初のうちは、誰が主人公なのか、話の中心がどこにあるのかが判らず、少し戸惑ったが、主人公や話の中心が判ってきたあたりからh、本当に引き込まれてしまった。理不尽な社会に翻弄されながら自分自身を貫く人々を描くのは、時代小説の本道。そこに、忍者の暗躍あり、江戸と京都を巡る政治闘争・文化の衝突ありで、贅沢な1冊だが、それでいて主人公を巡る本筋が少しもぶれない全体の構成はお見事というしかない。主人公達の一途な行動が歴史をも動かそうというスケールの大きさが不自然さなく描かれていることにも驚かされる。(「いのちなりけり」 葉室麟、文春文庫)

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