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ガソリン生活 伊坂幸太郎

自動車が語り手という設定の本書。最初のうちは、ストーリーに引き込まれてしまうと誰が語り手なのかを忘れてしまい、少し読み進めてまたそれを思い出すという感じで、何だか変な感じがしたのだが、慣れてくると、妙に人間的だったりする自動車の語りそのものを楽しめるようになる。また、自動車の視点で見聞きしたことが語られているので、人間達が車を降りてしまうと、読み手にも色々な情報が入ってこなくなるという仕組みになっていて、そこらあたりが大変もどかしかったりする。しかし、この設定でストーリーを書いていく作者も大変だろうなぁと思うと、読者の方の多少の不便さは許せる気がしてくる。少なくともこの窮屈な設定でこれだけの話を破綻なく紡ぎだした作者は偉いと思う。(「ガソリン生活」 伊坂幸太郎、朝日新聞出版)

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