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震える牛 相場英雄

一時期話題になった社会的事件を題材にした、予言のような内容ということで注目された作品。今まで読む機会がなかったがようやく読むことができた。話は、ある私憤を胸に使命感に燃えて大企業の闇を追いかける女性ジャーナリストと、迷宮入りになりそうな強盗殺人事件の再捜査を地道に行う敏腕刑事の2人が主人公で、その2人の謎ときの動きが交差したと気にある大きな事実が浮かび上がるというものだ。話としては、よくあるパターンだが、本書は、普通の社会派小説とはかなり異質、話の冒頭からミステリーモードが全開で、最初は話についていくのに苦労する程だ。主人公の2人もそうだが、それ以外の登場人物も、ぼんくらなオーナー大企業の2代目とか、素行は悪いが親孝行なチンピラなど、多分に類型的な人物造形だが、そうしたありがちな人物が事件の真相もありがちに思わせるという効果があるように思われるし、ストーリーとしてはそれが却って面白さを増しているようにも思える。不思議な作品だ。(「震える牛」 相場英雄、小学館文庫)

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