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渡りの足跡 梨木香歩

いわゆる「ネーチャーライティング」と呼ばれる自然観察に基づくエッセイ集。予備知識の全くない状況で読んだのだが、驚くほど抒情豊かな文章に圧倒されてしまった。自然科学者による正確性を重んじた自然観察と違い、著者の感受性が直に伝わってくるような文章は、自分にとって新鮮だというだけではなく、自然の厳しさ、自然と人間の境界といったテーマについて、色々思い巡らせる時間を与えてくれた。全くアプローチは違うが、福岡伸一の自然科学エッセイのリリシズムと繋がっている気もする。両者をつなげているのは、自然に対する畏敬だ。本書では、「渡り鳥」が大きなテーマになっているが、最後に収録されている「キノコ」の話も大変面白かった。(「渡りの足跡」 梨木香歩、新潮文庫)

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