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美女と竹林 森見登美彦

エッセイとも小説ともつかない不思議な文章をまとめた本書。雑誌に連載されていたものを1冊の本にするにあたって追加で書かれたと思われる文章、さらに文庫化にあたって付け加えられた小文らしきものが掲載されていて、それが全体の一体感を醸し出して、大変面白く読むことができた。読んでいると、著者の作家としての活動の軌跡が大変よくわかるので、著者の小説の愛読者には有り難い。どんな文章でも書き手によって面白くなるものだということが納得できてしまう不思議な内容の1冊だった。(「美女と竹林」 森見登美彦、光文社文庫)

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浜村渚の計算ノート4 青柳碧人

「4冊目」という題名だがシリーズ第5作目。「3冊目」の後に「3と1/2冊目」という作品があるのでこういうことになる。ややこやしいので、本の帯にも「4冊目だけど5冊目」という注意書きが書かれている。数学をベースにした話だけに、数字に関しては厳密にということかもしれないが、逆に数字が苦手な人にも十分配慮しているというのが面白い。内容的には、主人公と対峙する悪の組織が、巻を重ねるごとに凶悪になっているように思われるが、敵である主人公や警察が「数学的に美しい」ことをすると、比較的あっさりと矛を収めてしまうあたりも相変わらずで面白い。最後の一編は、これまでの小説には全くなかった大胆な試みがなされていて驚いた。事件はシリアスだがやり取りは軽いというこのシリーズでしか出来ないような試みということだろう。(「浜村渚の計算ノート4」 青柳碧人、講談社文庫)

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