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雨のなまえ 窪美澄

著者の作品を読むのはこれで3作目。これまでに読んだ2作品では、評判の高かった方の作品(「ふがいない…」)が私にはあまりピンとこなくて、もう1つの方(「晴天の…」)が俄然面白かったので、どういうことなのだろうかと思いながら本書を読んだ。結論から言うと本書は、ちょうどこれまでに読んだ2つの中間のような作品というか、両方の系譜の短編が交互に収められた作品集という印象だ。私の場合、読む本の大半がエンターティンメント系の作品なので、「何もない日常を描いた作品」よりは、はっきりしたストーリーのある作品の方が合っているということだけなのかもしれない。実際、本書に収められた5つの作品のなかでも、話の中で「東日本大震災」がでてくる2作品が印象に残った。もし仮に、何年かして、「東日本大震災」が小説の中でどのように描かれたのかというアンソロジーが組まれた場合、「震災」そのものは本筋とは言えないものの、ここに収められた作品の少なくとも1つはそこに収録したいと思うような印象的な作品だった。(「雨のなまえ」 窪美澄、光文社)

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