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人形 ダフネ・デュ・モーリエ

著者は、ヒッチコックの名作「レベッカ」「鳥」の原作者とのことだが、小説を読むのは初めてだ。14の掌編が収められているが、どれも救いのない人間の暗部、どうしても理解しあえない人と人の関係が描かれていて、そこには勧善懲悪とか因果応報といった予定調和が全くない。あるのは疎外された人々ばかりだ。徹底的に俗物であるキリスト教の牧師の話などは、助けを求めにきた若い女性を言葉で死に追いやりながら、反省するどころか「良いことをした」と悦に入るような人物が描かれている。これを読むと、普通のイヤミスなんか子どものおとぎ話のようにさえ感じる。著者の作品はまだ色々あるようで、大変気になる作家であることは間違いないのだが、何だか毒が強すぎて、一気にそれを読もうという気にはなかなかなれない。(「人形」 ダフネ・デュ・モーリエ、創元推理文庫)

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