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製造迷夢 若竹七海

ここにきて著者の本を立て続けに読んでいるが、飽きるどころかますます好きになってきた。使われている言葉は平明だし漢字が多いわけではないが、何となく文章に密度の濃さ、短い文章で多くのことが伝わってくるような感じがする。また人の悪意を躊躇わずに描くところに著者の独特さも感じられる。最後に用意されている意外な仕掛けも冴えている。著者の本には、そうした短編がいくつも並んでいて、内容の重苦しさとは裏腹に、読書の楽しさを味わうことができる。本書は1995年の刊行というから20年以上前の作品だが、そうした作者の特徴が既に明確に表れている。本書では、ものに触れると過去にそれに触れた人の思考が読めてしまうという特殊な能力を持った女性がワトソン役として登場し、主人公の刑事との恋模様も1つの大きな魅力になっている。このコンビは、その後の作品には登場していないようだが、ぜひともその後の展開を読みたいと思った。(「製造迷夢」 若竹七海、徳間文庫)

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