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闇に香る嘘 下村敦史

本屋さんで表紙が黒一色の本が置いてあり、手に取ってみたら面白そうだったので読んでみた。著者の本をこれが2冊目だが、本書が江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作とのこと。最初に読んだ作品も凄いと思ったが、本書はそれを上回る凄い作品だと思う。盲目の主人公が、自分の兄を本当の兄弟かどうかと疑うところから話は始まり、自分に降りかかる危機を躱しながら真実に迫って行く。前半で幾つもの謎が提示され、これらの謎に本当に納得のいく解答があるのだろうかと思うのだが、終盤にきて、びっくりする事実が立て続けに明らかになり、全ての謎が綺麗に解決する。これほど見事な結末はこれまで読んだ沢山のミステリーの中でも稀有な気がする。ネットで調べると、著者の本はまだというかもうというか何冊もでている。これから一冊ずつ読んでいくのが楽しみだ。表紙の黒一色は、主人公が盲目であることや題名の「闇」に由来するのだろうが、もし真っ黒でなかったら、手に取ることもなく、読む機会もなかっただろう。この大胆な表紙を思い付いた人に感謝したい。(「闇に香る嘘」 下村敦史、講談社文庫)

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