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街場の天皇論 内田樹

著者の天皇に関する文章を集めた1冊。色々な媒体で発表した文章が集められているので、前書きにも書かれているように、読んでいると、同じ内容のものがいくつも並んでいて、もっと上手に編集してほしいと思うが、最初に著者に謝られてしまっているのでまあしょうがないかなとも思う。そうした欠点はあるものの、書かれている内容ははっとさせられる示唆に富んだものが多い。何故天皇陛下は「現場重視」なのかについての説明は実にシャープな論理展開でうならされた。天皇陛下が過去の戦争の犠牲者を悼む時、「敵味方分け隔てなく」でありながら「抽象的な犠牲者全部ではない」ということを明確にするためには「現場」に行かれるしかないのだという。また、武道に関する文章で、日本の武道が「潜在的なコミュニケーション能力を高めるための伝統的な呼吸法、瞑想法、練丹法」から「愛国イデオロギーと結びついた殺傷技術」「スポーツ」へと変貌していったと指摘している部分も目からウロコだった。とにかく幾つも知的好奇心を刺激してくれる発見のある一冊だと感じた。(「街場の天皇論」 内田樹、東洋経済新報社)

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