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ディス・イズ・ザ・デイ 津村記久子

帯に「著者の最高傑作」と書かれている。とにかく「サッカーのサポーター群像」という題材と「最終節のドラマ」という設定が面白く、それに著者独特の文章の面白さと語り手の内面表現の面白さが融合して、「著者の最高傑作」というのも誇張ではないような気がする。それぞれの贔屓のチームがどのようなシチュエーションで最終節を迎えたかで微妙に揺れるサポーター心理、それぞれのサポーターがサポーターであることの様々な理由、それぞれのサポーターのチームや選手に向ける視線の違い、サポーター同士の交流、そうした様々な要素の積み重ねが面白くて心に響く。弱小チームのサポーターは、負けて悔しいことの方が多いはずだが、それでも様々なことに喜びや希望を見出す。本書はそうした人々に暖かい視線を注ぐ、著者ならではの作品のひとつだ。(「ディス・イズ・ザ・デイ」 津村記久子、朝日新聞出版)

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