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リベラルがうさんくさいのには理由がある 橘玲

題名を見るとリベラル批判=保守派の書という感じの本書だが、読んでみると全く違った。最初の「沖縄における集団自決問題」では、結論ありきの自己の主張に都合の良い事実しか見ない「リベラル」「保守」双方の議論を不毛と断罪、続く「安全保障問題」「従軍慰安婦問題」「働き方改革問題」では双方の論点がそもそも見当はずれと指摘するなど、左右どちらかに組みするのではなく、双方がこれまでの主張に囚われて本質を見誤っていると指摘する。全体的には、世界に広がるリベラリズムに取り残されてしまった日本の「リベラル」への失望が通奏低音として流れているので、題名に偽りありということではないが、今現在旗色の悪いリベラルに内容以上に厳しい感じの題名になってしまっているのは著者の本意ではないかもしれない。本書の続編とされる「朝日ぎらい」を読んだ時も題名が必ずしも内容に合致していないという気がしたが、本書も然りだ。いずれにしても、ネットの情報には気をつけろというのが常識である中、どうしてもマスメディアからの情報に頼らざるを得ない状況下、本書のようなマスコミの書かないあるいは書けないことの考察の助けになる本の存在意義はますます大きくなっていると思う。(「リベラルがうさんくさいのには理由がある」 橘玲、集英社文庫)

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