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ひとつむぎの手 知念実希人

昨年は、著者の本を11冊も読んでいたが、今年もたくさん読むことになりそうだ。本書は、これまで読んだ著者の作品の中でも、最高傑作ではないかと思うほど面白かった。市立大学病院に勤務する中堅の心臓外科医が主人公で、本職に忙殺されるなかで、教授から、新人の研修医の教育係を命じられたり、病院に巻かれた怪文書の犯人探しを頼まれたりという悲惨な毎日を送る様が克明に描かれる。教授が執刀する手術の際に何を任されるかで一喜一憂する主人公の苦闘に、お医者さんの世界の大変さがひしひしと伝わってくる。昔の「白い巨塔」の世界がまだそのまま残っていて、本質が何も変わっていないことに慄然とする。ミステリー色は全くないが、医学界の陋習をあぶり出すまぎれもない傑作だ。(「ひとつむぎの手」  知念実希人、新潮社)

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