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村でいちばんの首吊りの木 辻真先

著者の本は2冊目。短編ミステリー3編が収録されているが、母と息子の手紙のやり取り、母と娘の日記、無生物が一人称で語る物語と、それぞれが凝った構成で話が進んでいく独特のもの。表題になっている最初の短編は著者の最高傑作と帯に書かれているが、自分が一番すごいなぁと思ったのは2つ目の作品。母と娘がそれぞれの日記をこっそり盗み読んでいるのだが、両者とも読まれていることに気づきつつ知らないふりをしている。そこで持ち上がった大事件の顛末。途中で仕掛けや結末はそこそこ分かってしまうが、そこに至るまでの文章(日記文)の面白さが半端ない。表紙裏の著者略歴を見ると1932年生まれ、現在91歳とのこと。ウキペディアを見ると、映画、漫画、ドラマ等の脚本や原作がそれこそ無数に紹介されているし、ミステリー小説やSF作品も多数出ている。再評価という感じではないが、かなりの作品が最近になって新しく文庫化されているらしい。重厚な社会派作品とか凝りに凝った本格ミステリーとは別のテイストのエンターテイメント作品、これから色々探してみようかという気分になった。(「村でいちばんの首吊りの木」 辻真先、実業之日本社文庫)
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