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とにもかくにもごはん 小野寺史宣

オープンしたばかりの「子ども食堂」に集う人々の群像劇。発起人の女性、ボランティアで働く学生や主婦、夕食を食べにやってくる子どもたち、そしてそれらの人々の家族が、何故そこに居合わせ、何を思うのかが語られる。9人の登場人物の視点で語られているのはある1日のたった数時間の出来事。大きな事件は何も起こらないが、「子ども食堂」との様々な関わりを通じて見えてくるのは、それぞれが抱える悩みだったり迷いだったりで、色々考えさせられる。最初の発起人の女性が子ども食堂を作ろうと思ったきっかけの話と最終話の展開には思わずグッときてしまった。(「とにもかくにもごはん」 小野寺史宣、講談社文庫)
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本の背骨が最後に残る 斜線堂有紀

新進気鋭のミステリー作家の最新作。書評誌では特殊設定のSF作品として紹介されていたが、どちらかというと耽美主義的なゴシックホラー的な短編が7つ収められている。それぞれの短編は、物語を口伝する人同士が物語の正当性を賭けて戦い負けると火あぶりの刑になる世界、他人の痛みを肩代わりする装置が開発された世界、特定の人物に雨が降り続けてふやけてしまう世界、人間が動物に生まれ変わると信じられている世界、タイムマシンでパラドクスを回避しつつ過去の人のために役立てることができるかどうかという話など、とにかく設定が奇抜でかつおどろおどろしい話ばかり。共通しているのは、主人公が女性で「苦痛」がテーマであること。異様な世界なので人にお薦めするにはすこし勇気がいるが、これからも著者の作品を色々読んでみたいと思った。(「本の背骨が最後に残る」 斜線堂有紀、光文社)
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