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東京都同情塔 九段理江

最新の芥川賞受賞作品。作中にAIが作成した文章が取り込まれているといった話が話題になっていたので読んでみた。登場するのは、犯罪者を「不可抗力で犯罪者になった同情すべき対象」として「ホモ・ミゼラビリス」と再定義し直すことを提案する社会学者、その思想に基づいて建造される新しい刑務所「東京都同情塔=シンパシータワートウキョウ」のデザインを担当する建築家、同塔で勤務するスタッフ、日本の社会問題を取材する外国人ジャーナリストの4人、それに文書を自動作成するAIを加えた5者。様々な多様化が進む中、多くの意見を集約するAI と批判を最小化するための模範解答が同一化し、言葉の共通理解が失われていく様が「東京都同情塔」という建築物に投影して語られる。読んでいて一番びっくりしたのは、メインストーリーとはやや外れるが、最後に建築家が空想の中で銅像にさせられるメタファーで、この作家の視点、この作品のの斬新さが理解できたような気がした。(「東京都同情塔」 九段理江、新潮社)
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