書評、その他
Future Watch 書評、その他
だからあれほど言ったのに 内田樹
団塊世代から見た現代日本の諸相についての評論集。変わったタイトルだが、これについては「まえがき」で、インパクトがあり七五調で覚えやすい題名にしたとある。本人がそう言っているので深読みしてもしょうがないが、強いて言えば、日頃から著者が社会に対して発してきた警告の書ということだろう。内容は、著者が様々な媒体に寄稿した短文をテーマに沿って再編集したものとのことで、短い文章の寄せ集めながら、時々なるほどなぁと感じる記述に遭遇した。例えば、「資源が枯渇しないようこれからは地域分散ではなく都市集中が必要」という意見に対する著者の反論、警告は、そういう考え方も大切だと考えさせられた。また、イスラエルとハマスの紛争について、問われるべきはどちらが正しいかではなくあくまで正しさの程度で、正しさを主張する権利が限度を超えた行動で毀損されるかどうかが問題なのだという記述にもなるほどなぁと思った。ただ、随所にみられる異界とか超越的なもの、すなわち宗教的なものに対する敬意や理屈ではない作法の重要性、子ども時代にはあったそうした感覚など、武道や能に結びつく著者の記述は、自分にはいつの間にか失ったという感覚もないし、怪しげな宗教説話のようで、自分自身にはピンとこなかった。(「だからあれほど言ったのに」 内田樹、マガジンハウス新書)
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