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モノレールねこ 加納朋子

何となく心の温まる作品が並んだ短編集。特に最初の「モノレールねこ」と最後の「バルタン最期の日」の2編には心ならずも感動させられてしまった。大きな仕掛けやどんでん返しがあるわけではなく、むしろ「やはりそう来たか」という感じで、心安らかに読むことができる。著者は受賞歴などからミステリー作家にカテゴライズされているようだが、本書はどちらかというと純文学に近い。(「モノレールねこ」 加納朋子、文春文庫)

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インフェルノ(上・下)  ダン・ブラウン

待望のラングドンシリーズ最新作。3年振りの新作とのことだが、3年の間にこれだけ緻密な物語を書くというのは大変なことだと思うし、それをこうして読めるのは幸せなことだと思う。読んでみて、何が起きているのか判らないまま主人公の脱出劇が始まる冒頭の展開に、最初少し戸惑いを感じるが、やがて少しずつ状況が飲み込めてくると、いつものように軽快に読み進められるようになってくる。初めから映画化を意識したような作風は、巻を重ねるごとに磨きがかかってきている。主人公と行動を共にする相手役の女性も、映画化を意識したような存在だし、観光地巡りのような主人公の行程の風景描写もまさに映画そのもの。それと相反するペダンチックな記述の不思議な融合が相変わらず素晴らしい。話のテーマはこれまでにないほど深刻な現代的なテーマを扱っていて、最後の結末もいったいこれから世界はどうなるのかと心配になるが、このテーマでこの終わり方というのは作家にとってある意味大変勇気のある終わり方だなと感じる。(「インフェルノ(上・下)」 ダン・ブラウン、角川書店)

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