実に”奇妙”と云うにふさわしい本を、今、読んでいる。事実を語る言葉でなく、読む者に何かを感じさせる文章なのだ。普通の書物が風景画だとしたら、そして写実を基本とするとしたら、凡そこの本は精確でもないし、事実でもなかろう。物事の捉えが、気持ちが真実を創ろうとしているのだ。
要するに、この本はフィクションなのだ。だって、南京虐殺の有様を積屍(死体が積み重なって山になっているんだ)と表現している。しかし現実にあったのかもしれないと思いだすんだ。さらに、読む者に確実なる衝撃が残る。この本は、絵ならば、抽象画である。こんな本は初めてかもしれない。
本気で、真面目に字を追ったら、違うような気がする。これは観る本、想像する本、感じる本なのだね。