けっして田中角栄のことが好きではないが、世間が田中角栄を忘れない。先日、平野貞夫の『ロッキード事件』講談社を読んだ。いかに確たる家柄もなく、学歴もなく、下層から、首相にのぼりつめることが、この国では未曽有なできごとだということを知った。
戦後のこの國の首相は、田中角栄が首相になるまでは、東久邇宮の皇族を除き、石橋湛山の早稲田を除き、みんな帝大出身だった。平野貞夫は、ロッキード事件は、日本型エスタブリッシュメントによって、今太閤が落とし込められた、と結論付けている。
平野氏の云うエスタブリッシュメントは「薩長閥、旧華族、帝大出官僚」であるそうだ。ロッキード事件では、田中を最後まで追い詰めたのは司法官僚だとも言った。戦前の政治に陰湿に暗躍した司法系官僚の平沼騏一郎が思い浮かんだ。
1976年4月に東京地検特捜部が米国史料を手にしたが、そこには田中角栄がロッキード社から金が渡った証拠がいっさい記されて無かったそうだ。捜査に窮した検察は刑事免責を条件とした嘱託尋問で追い詰めていった。これって法治主義を根元から歪めていないか。
事実、最高裁判例では「日本の刑事訴訟法上、刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して獲得された供述を事実認定の証拠とすることを許容していないものと解すべきである以上、アメリカ連邦法上に基づいて行われた嘱託証人尋問調書については、その証拠能力を否定すべきである」となった。既に角栄はこの世にいなかったが。
田中角栄は推定無罪ではないか。あの時の世間は、彼の金権体質の延長線上で、よってたかって推定有罪にしてしまった。
今、安倍政権のモリカケ問題では、司法官僚は腑抜けて、文書改竄の起訴すらできない。佐川氏が同じ高級官僚だからか?帝大ではない文科官僚の子弟裏口入学にすっかり汗しているが、なんかピンとこないんだ。