日本国憲法は、かつて敗戦時に、戦勝国のアメリカから押し付けられたという見方がある。しかし、現憲法は、国会において適正な改正の手続きが取られていることに言及する者は多くない。
最近、国立公文書館所蔵の衆議院可決後の最終案を見た。衆議院での、かなりの訂正、修正事項があることに驚かされた。どこかのあまり教養があるとは思えない首相が、事あるごとに、「みっともない憲法前文」も多くの修正や訂正によって成立していた。
例えば、修正後の言葉としては、「諸国民との協和による成果」「自由のもたらす恵沢」「ここに主権が国民に存する」「国民の厳粛な信託」「その福利は国民がこれを享受」「恒久の平和を念願」とか、修正箇所は訳文の平易な言葉から漢文的な強い言葉に変わっていた。
これらを見ると、一概に、押し付けられたとは言い難い気がしている。もっとも、ABE氏は全部が気にいらないのであろうが、とくに、「平和を愛する世界の諸国民の公正と信義に信頼して、我等の安全と生存を保持しようと決意した」という文章が一番気に入らないのであろう。
確かに、中学生時代にこの文章を見た時に、些か現実性のない国家防衛策だと感じたが、昨今、「戦争をしなければ、北方領土を返還できない」と言い出す超非現実主義者の国会議員を見ると、この程度で良いのではないか、と思わざるを得ない。最近は粗忽で軽はずみな議員が多すぎる。困ったことである。
【参照文献:週刊朝日百科112「日本国憲法」『日本の歴史』朝日新聞社2004年】