この本は、以前に著者の書いた『資本主義の終焉と歴史の危機』を読んでいて、その続編として読んだ。水野和夫氏の言説は、いつも端的で鮮やかな切り口で感心させられることが多いので、私はかなり影響されている。
多くを語るよりも、一度は読まれることをお勧めしたい。
そういえば、今回読んで特に気付いていたことがあった。
C・シュミットは、世界史は〈海と陸の戦い〉と定義した。
著者は、市場を通じて富(資本)を蒐集するのが海の國(オランダ・イギリス・アメリカ)、陸の國は領土拡大を通じて富を蒐集します。どちらも「蒐集」の目的は社会秩序維持です、という。
そして、2016年6月にイギリスのEU離脱があった。そこで著者は言う。ヨーロッパの脅威はいつも東からです。北は北極海、南はサハラ砂漠、西は大西洋で、東は無防備です。EUの中で人の移動を自由にした結果、陸の國の東欧や中央からの移民流入によって、海の國のイギリスは自国の秩序が保てなくなった。
時同じくして、2016年6月、陸の大国のロシアのプーチン大統領は「ユーラシア経済同盟」(旧ソ連5ヶ国で構成…カザフスタン・ベラルーシ・アルメニア・キルギス)に中国とインドを加えた「大ユーラシア経済パートナーシップ」構想を打ち出した。
この時から、現在のウクライナ侵攻が用意されていたのではないだろうか?
今、陸の國の戦いに遠く海の國のアメリカは冷ややかに眺めている。
そして、アメリカの属国の日本は、せせこましく経済制裁に協力したり、ほんの僅かな避難民を受け入れて、懸命にやってる感を出している。果たして、この国は海の國なのだろうか?
水野和夫氏の本はこれで2冊目であるが、アカデミック一本の研究者の本とは違い、普通に実社会で暮らした人の考察が随所にあり、今までの経済書とは違う感じがする。その為か、彼の持っている世界観に惹かれるものがある。
また、前作の『資本主義の終焉と歴史の危機』と突き合わせて整理したいものだ。彼の言うように、資本主義・株式会社が終焉とするならば、今の「新自由主義」やアベノミクスの方向はまるで見当違いの方向ということになる、…。
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