第20場 野獣の寝室
獣達が出る。
獣達; ♪ ご主人様 ご主人様 我等の希望はあなたさまだけ ♪
虎; みんな、待つしかない。小鳥達をベル様の所へやった。ベル様はきっと
戻って来てくださる。
獣達; ♪ ベルさま どうか我等の願いを・・・ ♪
野獣の寝台がセリ上がる。
野獣; ♪ バラのようなあなた バラより美しく
忘れようとつとめて 幾度振り払ってみても 清らかな微笑み
心にせまる
バラのようなあなた バラより芳しく バラよりもなお愛おしく思う ♪
ベル; あなた!
ベルが駆け込む。獣達、二人を囲む。
ベル; お願い、しっかりして。
野獣; 戻って来て下さったのですか。
ベル; そうよ。約束したでしょう。
野獣; あなたは約束を破るような人ではなかった・・私は愚かにも、あなたはもう
戻ってこないと思い込んでしまったのです。
ベル; とんでもないおバカさんよ。いくらお仕置きしても足りないくらい。けれど
私も、とんでもないおバカさんだったの。
野獣; あなたが・・・
ベル; いい。早く元気になって。私が元気にしてみせます。だって、私はあなたを。
王様と臣下達が現れる。商人を伴っている。
アンリ; 行け!
臣下達; は
王様; (商人に)あれが野獣か。
商人; そうでございます。
王様; ベル。野獣から離れろ。とうとう見つけた。言葉を話す野獣目。
♪ 従うのならば保護を与えよう ♪
野獣; (ベルを押し出し)行って下さい。
ベル; あなた。
野獣; あの者達の狙いは私達だけなのです。あなたはどうか生き残ってください。
ベル; いいえ、あなたのそばに。
王様 ♪ やさしくするうちに 言うことをきくがいい ♪
野獣; ベル。行きなさい。
ベル (むしろ王様に向け)いやです。 ♪ 私はあなたを愛しています ♪
あなたの妻となり、どんなときも運命をともにします。
王、剣をふるう。ベッドの天蓋が落ち、野獣とベルの姿が隠れる。雷。
獣達は去る。清き仙女と妹君が現れる。
清き仙女; ♪ ときはきた ♪
妹君; なんということ。
清き仙女; ♪ よき日の巡り来た今 ともに喜びあいましょう ♪
野獣、王子の姿になる。立派に成長している。獣達も人間に戻っている。
ベル; あなたは
王子; あなたの、野獣です。
ベル; あなたが私の愛した野獣。
王子; 魔法によって野獣の姿に変えられていたのです。
妹君; 息子よ。ためらってはいけません。滅ぼしてしまいなさい。姿はどうあれ、
あなたにとっては野獣です。
王子; 国民達よ、聞け。
♪ 私こそ先代の王のまさしく長男である 選ぶがいい 彼か私か ♪
獣達、王子に従う。
家臣達; ♪ 清き仙女の息子こそ王にふさわしい ♪
虎; ベル様、あなたの虎です。
ライオン; ライオンです。
ジャガー; ジャガーです。
チーター; チーターです。
ミスターモンキー; ミスター・モンキーも。
鹿; 鹿も
小鳥; 小鳥のみんなも。
家臣達; ♪ 我々も獣に かえられていたのです ♪
妹君; 王にふさわしいだと・・・
風音、妹君、再び王子を野獣にしようとする。
清き仙女; ひとたび解けた魔法を再びかけることはできません。
魔法に頼るのはもうお止めなさい。
王子; ♪ 選ぶがいい 私か ♪
王様; ♪ 私か ♪
アンリ; ♪ 王よ ♪
王様; ♪ やはり私か・・・♪
アンリのソロに怨嗟の声がかぶる。
アンリ; ♪ あなたが命令を下すたび どれだけくろうしてきたか
決して満足しないあなたに ♪
国民達、みな王様と妹君に詰め寄る。
国民達; ♪ 先に生まれた王子こそ王にふさわしい 今こそあなたを滅ぼすとき ♪
王子; 待て。憎しみは終わった。苦しみの時は過ぎた。
♪ 新しい王国は憎しみではなく 許しの上にたてよう ♪
一同居並び、新しい王に礼。
王子; (王様に)あなたを先代の王と呼ぶときがきた。命を奪ったりしない。
王様; 私は母と共に旅立つ。すべてを深く考えたい。
虎; 二度とこの国に足を踏み入れないよう。
王子; いや、いつでも戻って来て欲しい。この国は、あなたにとっても故郷
なのだ。今はただ、旅立ちの時を静かに見送ろう。
国民達、先王を見送る。
王様; (母を促す)母上。
王様と妹君、去る。
王子; 母上。
清き仙女; これこそ試練を経た、立派な王の振る舞いです。
王子; ベル。私はこの国の王子、間もなく王になります。物語を始めから語り直す
のは後ほどにしましょう。今一度聞きたい事があります。私を愛して下さいますか。
ベル; あの方はどこへ行ったのです。
王子; 私が野獣だったのです。
ベル; 本当に、バラを愛するあなたなの。
王子; そうです。
ベル; ではどうして、愛しているかなんて聞くの。
王子; ベル。
ベル; あなたが野獣か王子かなんて、どうでもいい。私はバラを愛する
あの方だけを愛しています。王子だからではなく、王だからではなく、たとえ、再び
野獣にされてしまったとしても。
王子; ベル、心のまっすぐな人。あなたは早くも私の中に生まれた驕りを見抜いて
しまったようです。私はとんでもないおバカさんです。だから、あなたが必要なのです。
ベル; あなた。
王子; こんな私でも愛してくださいますか。
ベル; やっぱりあなたなのね。 ♪ 私はあなたを ♪
王子; ♪ あなたは私を ♪
ベル; 愛しています。
ベルは王子の胸に飛び込む。人々の歓声。かつてのジャガーとミスター・モンキー
が、ベルの姉達を連れてくる。
ジャガー; 王子様。
ミスター・モンキー; あやしい二人を捕まえました。
ヒバリ; あ、ベル様のことを告げ口した奴等だ。
ハチドリ; 町の小鳥から詳しく聞かされた。
野兎; ベル様と。
リス; 王子様が。
キツネ; ひどい目にあうのを。
3人; 見に来たのね!
王子; ベル。許してあげられますか。
ベル; 許すも許さないも、大切なお姉様達です。
長女と次女;ありがとうございます。
商人と姉達、手を取り合う。
ベル;あなた、私は心配です。
王子; どうしました。
ベル; おなかがすいていませんか。
王子; 本当だ。夢中で忘れていた。さあ、祝いの宴を。
↓
第19場 野獣の寝室
獣達が出る。みな嘆いている。
虎; 小鳥達はまだか。ベル様はどうされたのだ。
野獣の寝台がセリ上がる。
野獣; ♪ 目を閉じて 思い出すのはピンクのバラ ベル
ばら色の頬染めて笑う姿 ただ愛しくて ♪
ベル; あなた!
ベルが駆け込む。獣達、二人を囲む。
ベル; お願い、しっかりして。
野獣; ベル。戻って来てくれたのか。
ベル; ええ。遅くなってごめんなさい。
小鳥1; ベル様は王様に捕らえられていたのです。
虎; 何?それではいずれここにも。
ベル; 頑張って。元気になって。
野獣; もういい。もう十分だ。私は疲れた。このような姿で生きる事に。ただベル。
お前に会えた事だけを思い出として死のう。
ベル; 何を言ってるの。あなたは生きるのよ。私と一緒に。
王様と臣下達が現れる。商人を伴っている。
王様; ベル。父親が大事ならこちらへ戻れ。野獣から離れろ。
ベル; お父様・
王様 ♪ 野獣よ 私のかかって手に死ぬがいい ♪
野獣; (ベルを押し出し)行け。あいつの狙いは私だ。
ベル; 嫌。離れないわ。
王様 ♪ この世の王は私だけ わたしただ一人の王 ♪
野獣; (王様に)お前が私にそんな事を言えるのか。
王様; 血の繋がりなど信じない。お前は醜い野獣だ。
野獣; ベル、お前だけは生きて・・・・
ベル ; 一緒じゃなければ嫌。だって・・・ ♪ あなたを愛してるの ♪
王、剣をふるう。ベッドの天蓋が落ち、野獣とベルの姿が隠れる。雷。
獣達は去る。清き精霊と悪しき精霊が登場。
清き仙女; ♪ 今こそ 長い夜の終わり ♪
悪しき精霊; なんということ。
清き精霊; ♪ 喜びの朝が来ました 目覚めなさい ♪
野獣、王子の姿になる。立派に成長している。獣達も人間に戻っている。
王子; 母上!
清き精霊; 私の王子。(しっかり抱き合う)この時をどれ程待っていたか。
王子; 僕もです。母上。どんなにお会いしたかったか。でも知っていました。見守って
下さっていた事を。
清き精霊; さあ、王子よ。そなたの愛しい娘の手をとりなさい。
悪しき精霊; そうはさせぬ!
魔法をかけようとするがかからない。
清き精霊; 一度解けた魔法は二度とかかりません。
王様; (家臣達に)ええい。あの男を滅ぼせ。
王子; 国民達よ、聞け。
♪ 私は先代の王と清き精霊の間に生まれた 共に平和な国を作ろう ♪
家臣達、王子に従う。
家臣達; ♪ 我等が王はただ一人 あなたです 獣だったときも人に戻った今も ♪
アンリ; ♪ 王よ あなたの恐ろしい命令に 我等は振り回された
命をもてあそび 欲望のまま生きるあなたに従う事は出来ない ♪
王様; 何だって・・・・お前達は私を裏切るのか。
アンリ; ♪ あなたの首をとり 新しい王に捧げよう ♪
王子; 待て。
♪ 弟よ 僕の半分は君 君の半分は僕 共に分け合った血を
大切にしよう 理解しあおう
今なら間に合う 兄弟の契り ♪
僕達は父が同じ。母は姉妹同士。誰よりも強い絆で結ばれている筈だ。
悪しき精霊、泣き出す。
悪しき精霊; 私はねたましかったの。王様の愛を独り占めするお姉様が。二人を結び
つけたバラが憎かった。だから私は王様をたぶらかし、お姉様を追い出し。
王子を野獣に変えてバラを摘んでしまったのです。私の全ては息子だけに。
王様; どうか母を許してください。罪は私が一人で受ける。
王子; 元より罰するつもりはない。
清き精霊; 妹よ。あなたを許します。
王様; 私は母と共に旅立ちます。
国民達、先王を見送る。
王子; 弟よ。いつでも戻ってくるがいい。
王様; いつかその時が来たら・・・兄上。
王様と悪しき精霊、去る。
王子; さあ、ベル。僕だよ。
ベル; あなたは誰?みんなどこへ行ったの?
王子; 魔法で野獣に変えられていたんだ。
元鹿; 我等もそうだったのです。
ベル; でも・・・
王子; まだ信じられない?僕はベルの好きな色を知っている。それはピンクだ。
この庭に咲くピンクのバラは全て君のものだよ。
ベル; あなただわ。私がであった野獣の・・・
王子; そう。野獣の僕と今の僕とどちらを愛してる?
ベル; 馬鹿な事を言わないで。どんな姿をしていても、あなたがあなたである限り
愛しているわ。
王子; それでこそベルだ。(ベルを抱き上げる)僕と結婚してくれるかい?
ベル; ええ。勿論よ。
家臣達から歓声。
かつてのジャガーとミスター・モンキーが、ベルの姉達を連れてくる。
ミスターモンキー; お取り込み中失礼致します。お邪魔虫なのはわかっていますが。
ジャガー; あやしい二人を捕まえました。
ベル; お姉様達!
長女; あーんベル、助けて頂戴。
次女; 私達を見捨てないわよね。
ミスター・モンキー; しかしながらこの二人はベル様に意地悪を。
ベル; もういいの。お姉様達、みんなで幸せになりましょう。
二人; ありがとう。ベル。
商人と姉達、手を取り合う。
ベル; ところであなた・・・
王子; なんだい?
ベル; おなかがすいているんじゃない?
王子; 本当だ。今すぐ祝いの宴を始めよう。でもその前にベル、君の唇を
つまんでもいいかい?
王子、ベルにキスをする。歓声があがり音楽スタート。ベル、一時姉達と退場して
ドレスに着替える。虎やミスター・モンキー達が歌い踊る。
♪ 昔昔 ある国で 王様と恋に落ちた精霊
二人を結びつけたのは 一輪のバラ
それからこの国は バラの国と呼ばれるようになりました
愛を運ぶ美しい花は 王子様と少女を出会わせました
バラの国に咲く 絵のようなカップルは 永遠に永遠に
愛の光をともし続けたのでした ♪