なぜこの時期に戦争の話題を始めるのかなと思ってます。
BSプライムでの「昭和の選択」は山本五十六だし、Eテレでも特攻隊を扱うし。
今回、イギリスの戦争博物館みたいなところに、長野の特効隊員だった「上原良司」の所感が収蔵される事になったからでしょうか。
反日NHKがなぜこんな話題をわざわざ・・・と思ったらまた誘導的な間違いが。
まず特攻を始めた責任者が東条英機だったと断言しているあたり。そこ、違うよね。どうしても東条英機を諸悪の根源にしたいNHKの印象操作なんじゃないかな。
それから特攻の成功に昭和天皇は喜んだ・・・という話。それも多分違うと思います。
まさか海軍から「特攻が成功して空母が撃沈しました」と言われて「何でそんな非人道的なことを」とは天皇ですらいえない立場だったということに触れていません。
さて。
上原氏についてですが。彼の所感の一部は劇団四季ミュージカル「李香蘭」で聞いたことがあります。
「一器械である吾人は何もいう権利はありませんが、ただ願わくば愛する日本を偉大ならしめられん事を国民の方々にお願いするのみです」
と
「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます」の部分です。
彼は長野の安曇野でお医者さんの家の三男として育ちました。沢山の写真が残っている事からも裕福な家庭だったんだろうと思います。
父は軍医として出征、兄二人も軍医になって戦死。3男の彼は慶応ボーイだったのですが昭和18年に学徒出陣で陸軍に入ります。そこで飛行機乗りになり、特攻で亡くなるのです。
彼の所感は陸軍報道班員に渡され、それが「きけわだつみの声」に収録されました。
彼は大学生の頃にクローチェというイタリアのムッソリーニに抵抗する哲学者の思想に憧れ「自由」を求め始めます。
教養ある大学生からみれば軍隊のやることなす事無駄で意味のないものだったろうなと思います。
NHKとしてはそういう「戦争批判」「昭和の否定」の為に上原氏を取り上げたとしか思えないんです。
3人の息子を失った上原夫妻が息子達の木像をつくったというエピは「やすらぎの刻」の中で朝鮮の人達が根来一家の木像を作ったエピに似てますね。
彼の所感は本当に立派で、彼の日記もわかりやすくて読み応えがあります。
しかし、彼のことが書かれている「きけわだつみの声」には批判も多いことは確かです。何度も書きますが私がこの本を読んだのは1995年頃で、純粋に読んで感動したものです。
特攻で華々しく亡くなった人もいれば南の島で脱水症状で亡くなったり、事故で亡くなったりしたひともいます。
第1版から版を重ねるごとに編集者の「反戦」の意図が強くなり、それが事実を曲げたりしていると批判されて裁判沙汰にもなっています。
確かにこの本に書かれている人達の文章は、インテリで本が大好きで勉強家で、戦争に対する考え方もきっちりして、自分の個人的な思いと愛国心とを別に考えている。冷静です。
だけど、当時の大学生は本当に一部の人達であり、それが日本人全部の意思ではないということです。学生たちは日本が負けると思っていたけど沢山の日本人はマスコミにあおられ勝利を信じていたでしょう。
今も昔も日本人はマスコミを疑いません。週刊誌に書かれたらそれを信じてしまう。
だから昭和はいけない・・・という論法はもっと嫌いです。
昭和も平成も令和も日本人の本質は、流されやすくて忘れるのが早いということ。
そして妙に前向き。いつまでもぐずぐずしないでただ歩く・・・原爆を落とされてもね。戦争経験者である巷の人たちがきちんと真実を語らなかったことで日本はすっかり左翼の国になってしまったことが残念です。
NHK的に言えば上原氏の「所感」の冒頭
「栄光ある祖国日本の代表的攻撃隊ともいうべき陸軍特別攻撃隊に選ばれ、身の光栄これに過ぐるものなきと痛感いたしております」という言葉も仕方なく書かされたと思っているかもしれません。
でも彼の言う「自由」というのは今の「自由」とはちょっと意味が違うと思います。
「思えば長き学生時代を通じて得た、信念とも申すべき理論万能の道理から考えた場合、これはあるいは自由主義者といわれるかもしれませんが。自由の勝利は明白な事だと思います。人間の本性たる自由を滅す事は絶対に出来なく、たとえそれが抑えられているごとく見えても、底においては常に闘いつつ最後には勝つという事は、 かのイタリアのクローチェもいっているごとく真理であると思います」
決して無政府主義的な「自由」ではなく、真に国を愛し、正しい道へ導くことが出来る「自由」なんですよ。
「愛する祖国日本をして、かつての大英帝国のごとき大帝国たらしめんとする私の野望はついに空しくなりました。真に日本を愛する者をして立たしめたなら、日本は現在のごとき状態にはあるいは追い込まれなかったと思います。世界どこにおいても肩で風を切って歩く日本人、これが私の夢見た理想でした」
これは結果的に自己の体面や立場のみを優先する軍部への批判かと思いますが、だからって彼に愛国心がなかったのではない。むしろ、ものすごく国を愛していた。
だからこそ最終的に特攻を受け入れたわけですよね。
遺族からみたら本当につらく悲しい出来事で慰めの言葉もありませんが、「悠久の大義」は果たされたと感謝の念を持っています。
歴史秘話ヒストリアってちょっと極端すぎるんだよね。語りが。