紀子妃殿下
お誕生日 おめでとうございます
お誕生日全文
この1年を振り返って
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行が続き、多くの人が困難を抱え、つらい思いで暮らしていることを案じつつ、この一年を過ごしてまいりました。
医療関係者をはじめ、私たちの生活を支え、維持するために欠かせない仕事に就く多くの人々が、感染リスクと向き合いながら大事な役割を担ってくださっていることに、深く感謝しております。
こうした中、昨年11月には、宮殿で「立皇嗣の礼」が執りおこなわれました。
一度延期された後、感染対策がとられた上でおこなわれたもので、立皇嗣宣明(せんめい)の儀の後、宮中三殿において拝礼し、朝見(ちょうけん)の儀では天皇、皇后両陛下からあたたかいお言葉を宮さまとご一緒に賜りました。
さらに重いお立場となられた宮さまをお支えしつつ、一つひとつの務めをより一層大切に努めてまいりたいと思います。
9月6日には、天皇、皇后両陛下と敬宮さまが、長くお住まいでいらした赤坂御所から皇居へと移られました。御所においても、お健やかにお過ごしになりますことを、心から願っております。
この一年間の公的な活動では、オンラインで開催された行事が多くありました。
そのため、宮さまも私も娘たちも、事前にビデオメッセージを収録して言葉を寄せたり、当日宮邸と会場をオンラインでつないでメッセージを送ったりすることがありました。
また、オンラインで大会や式典などを視聴したり、関係者と画面を通してお話をしたりすることもありました。
私が総裁を務めている結核予防会や母子愛育会では、感染症流行下の結核対策や母子保健の課題について、オンラインで話し合う国際的な催しに参加する機会がありました。
昨年の秋には、創立100周年を迎えた国際結核肺疾患予防連合(The Union)の「第51回肺の健康世界会議」が開催されました。
会議の参加者から、結核やその他の呼吸器疾患の対策に取り組んできた世界中の専門家が連携して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響による結核対策の遅れを取り戻そうという強い思いを感じました。
また、今年5月に開催された「第2回母子健康手帳ウェビナー」では、感染症の流行によってより高いリスクにさらされる妊産婦を、母子健康手帳を活用して支える活動について報告がありました。
この国際ウェビナーを通して、妊産婦とそのパートナーの声に耳を傾け寄り添うことや、周産期のメンタルヘルスの重要性が、参加者に共有されたように思います。
この夏以降、入院を待ちながら自宅で療養する患者数が著しく増加しました。
重症・中等症の入院患者の治療、自宅療養中の患者への往診・健康観察をはじめ、多くの医療・保健に携わる人々の献身的な仕事に感銘を受けております。
そして、関係者の負担を少しでも軽くできるように、私たち一人ひとりが感染防止に努めたいという思いをさらに強くしております。
感染者やその家族が、社会生活上の困難に戸惑いや不安を抱いたり、後遺症による不調に長く苦しんだりしていることに、心痛む思いがいたします。
人との交流が減り、孤立しがちな高齢者や障がいのある人、仕事を失った人、制約のある中で育たざるを得ない子どもたちのことも、深く案じております。
こうした中、感染状況を考慮しながら、さまざまな形でボランティア活動が進められています。
例えば、私が関わっている結核予防婦人会では、正しい情報をもとに適切な感染予防をしながら、必要な健診を受診するなど、冷静な行動を呼びかける活動や、新型コロナウイルスに感染した人や医療に携わる人などに寄り添い、相手を大切に思う気持ちを表す「シトラスリボンプロジェクト」などに取り組んでいます。
また、母子愛育会の愛育班は、地域の人々が子育て家庭を見守り、虐待につながらないようにする活動や、高齢者の個別訪問などを、感染予防に配慮しつつおこなっています。
感染症が流行する中で、献血運動の役割は極めて大きなものであることを、改めて感じた年でもありました。
感染拡大の影響で献血協力者が減少する中、輸血を必要とする人々の命を救うために、学生を含むボランティアが工夫をしながら積極的に献血推進活動を進めています。
これらのお話を聞いたり、活動を紹介する資料を読んだりするたびに、意義深い活動に関わる人々の熱意や温かな気持ちが伝わってきました。
この夏、東京を中心におこなわれたオリンピックとパラリンピックの日本代表選手団結団式を、宮さまとご一緒に同時配信された動画で視聴しました。
大会の開期中には、厳しい練習をしてきた選手が自らの限りない可能性に挑み、競技を支えるスタッフやボランティアたちが感染症対策をおこないながら働く姿を、報道などを通して知ることができました。
そして、競技を終えた選手同士が国や地域を超えて讃(たた)え合う姿、周囲に感謝の気持ちを伝え、家族や友人らとオンラインで喜びを分かち合う姿も心に残っています。
この一年も国内外において、自然災害が多く発生しています。
国内では、昨年冬の記録的な大雪による被害があり、夏には豪雨による河川の氾濫や土砂災害などの被害がありました。亡くなった人や被災者のことを思うとともに、少しでも早い復旧を願っております。
海外でも、熱波による山林火災が相次ぎ、大規模な洪水も発生しました。
人々の健康や生活とともに、気候変動による自然や生態系への影響を案じております。
東日本大震災から10年、熊本地震から5年がたち、大切な人を亡くしたり、住み慣れた家など多くを失ったりした人々の悲しみや生活環境の変化、そして今なお避難生活が続いている人々の困難な状況に思いを馳(は)せております。
震災の記憶を語り継ぎ、今後にいかそうとする活動にふれることがあります。
例えば、先日、東北や熊本で被災した子どもたちが、当時をふり返り防災とまちづくりについて語る姿を視聴する機会があり、災害に備えることの重要性を改めて感じました。
また、被災した人々と支援や避難の受け入れに関わった人々の交流が今も続けられているお話を伺うこともあり、その度に心温まる思いがいたしました。
今後、少しでも早く感染症の流行がおさまって、人々が穏やかに過ごせる日が訪れることを、心から願っております。
全体的にまとまっており、特にご自分が名誉総裁を務める結核予防会や愛育会の結果報告を踏まえまとめていらっしゃるのがよくわかります。
こういう文章はまさにキャリアウーマンの報告書のようだなと感じました。