ふぶきの部屋

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帝国劇場の歴史はミュージカルだけではない

2025-03-03 07:00:00 | ヅカOG その他舞台

私はそんなに帝劇に縁があるわけではないですし、ここ10年以上は足を踏み入れる事もありませんでした。

理由はチケット代が高い、チケット入手困難です。

2月28日に日テレで放送された「帝国劇場最後の一日」を録画してみて、色々考える事があったのでそれを書きたいと思います。

この番組は水卜アナとこの3人、井上芳雄、市村正親、堂本光一の3人が中心メンバーとなり、ところどころ歌を挟んだりしながら帝劇のミュージカルの歴史を振り返るもの。

視聴者が選んだ「好きなミュージカルソング」の発表と映像を入れて、最後は鹿賀丈史が出てきてレミゼの曲を歌ってフィナーレという流れでした。

帝劇に通わなかった人、ミュージカルに興味がない人達には普通に見えていたかもしれませんが、私から見ると偏向しすぎの内容に唖然呆然。

ランキングに至っては、ほとんどがディズニーミュージカルが上位を占め、という事は四季の映像ばかり見せられる羽目になりました。

「これって帝劇と何の関係があるの?」ですよね。

神田沙也加をレジェンド扱いするのはちょっと厳しい。むしろ、もっと本田美奈子を取り上げて欲しかったと思います。

このランキングで分かった事があります。

おおよその人達というのはミュージカルに興味がない。

あっても実際の舞台を見る事は難しい。特に帝劇は。

だから、映画で見れる、テレビで見れるディズニーミュージカルが上位に来るのです。

それとやたら大地真央が出演しているミュージカルをランキングしてたというのも、結局はそっちのファンが多く投票したに過ぎないと言う事です。

「エリザベート」の中の「最後のダンス」「愛と死のロンド」が入らない、「1789」もランクインせず、「モーツァルト」も下の方ではこれってミュージカルファンというものが本当に存在しているのか?と思わざるを得ません。

最近では「○○歌謡祭」には必ずミュージカル枠があり、「レミゼ」「エリザベート」「モーツァルト」「ミス・サイゴン」の曲が歌われるので、作品を見てない人も知っているというような曲がランクインしているんですね。

さらに「雨に歌えば」まで古くなるともう・・・何を基準にしているんだかわかりません。

帝劇でデビューし、帝劇で主役を張ってきた井上芳雄というなら大地真央の隣りには花總まりがいないとおかしい。

市村正親は確かに今「屋根の上のヴァイオリン弾き」に出演しているからしょうがないけど、じゃあ、堂本光一はどうなんだ?

「SHOCK」の上演回数がギネス級と言われても、その恩恵にあずかったのは僅かなジャニーズファンだけですし、彼をミュージカル俳優としては個人的には認められません。

私と帝国劇場との出会いは遥かかなたです。

中学生になりたての夏休み。親戚の家で夏を過ごしました。

ある時、親戚のおば様が「今日は帝劇に連れて行ってあげるわ」と言って私は普通にワンピースを着たのですが、その時「そのワンピースではだめ。帝劇なのよ。制服になさい」と言われました。

一体どんな所?と思いつつ、恐らく有楽町で降りて日劇の前を通った記憶はあるんですね。そして帝劇のチケット売り場で「ロミオとジュリエット」の2階席立ち見を買って貰ったんです。

すでに舞台は始まっていたので私達は静かに2回に上がりました。その時見た真っ赤でふわふわの絨毯に私は驚いて足が震えて来ました。何という荘厳な雰囲気で飲みこまれてしまいそうになったんです。

その時、上演していたのは蜷川幸雄の演出「ロミオとジュリエット」です。

この配役で見ました。正直よくわからない話でしたけど、ロミオとジュリエットのラブシーンがシーツをまとっただけなのに驚いた記憶があります。

幕間には二階の喫茶店でお茶を飲みました。

そういう経験も初めてで私はすっかり委縮したというか、ひたすら初めての経験に驚くばかりでした。

この時買った、このパンフレットにはいわゆる稽古場日記がついていて、灰皿が飛んでくるわ、胃薬が欠かせないなど今じゃすっかりパワハラな内容が書かれていて、これで私は演劇の世界を諦めました。

 

それから10年くらい経過した頃、職場で日経新聞を見てたら宣伝が。

「レ・ミゼラブル」の上演の宣伝でした。

今では「レ・ミゼラブル」と言えば皆が内容を知る時代ですが、私達は教科書などで「ああ無常」というタイトルで教わり、コゼットがジャン・バルジャンに助けられるシーンや、彼が教会の銀食器を盗んで・・という途切れ取れの話しか知らず、でも、どうしても見たいと思って、職場からこっそり帝劇に電話してチケットを取った記憶があります。

あの日は美空ひばりが亡くなった日。主人と一緒に帝劇へ行って鹿賀丈史バージョンで見る事が出来ました。帝劇と言えば幕間に地下でお食事と言う事で生まれて初めて予約してみたり。そういう事が楽しかったんです。

勿論私が感動した絨毯はそのまま、重厚な印象はそのまま。

「レミゼ」の「戦いの歌」は当時「怒れるものの歌」という歌詞でした。鳳蘭のティナルディエの妻が見事ですっかりファン熱再燃。

後に斉藤晴彦氏が「鳳さんはオーディションで「私、主役じゃないの?」っておっしゃってねえ」と笑っていらっしゃいました。

主人はこの時の観劇に大層感動しまして、後にもう一度見に行きました。「エリザベート」の初演なども一緒に身に行きましたが寝なかったのは「レミゼ」だけ。

そしてコロナ前かな、山崎育三郎版「モーツァルト」を姫も交えて見に行き、香寿たつきに感動しておりました。

帝劇の中はどんどん変わって、かつての重厚感はどこへやら、すっかりグッズ売り場と化していましたけどね。

運がよく森光子さんの最後の「放浪記」のゲネプロを見る事が出来、「舞台が広すぎて余るね」みたいな話を聞きました。森さんはもうセリフ以外の事は離せないようで、休憩時間はずっと椅子に座ってました。

大地真央の最後の「マイ・フェア・レディ」のゲネプロも見る事が出来ました。

やっぱり中島ハルコ風話し方に慣れなくて・・・今は平気だけど。彼女の「十二夜」は素晴らしかったなと思い出すばかり。

ミス・サイゴン」も見る事が出来ましたけど、昭和に比べてセットがチープになったんだと聞かされました。

 

帝国劇場は1911年、日本に本格的な演劇を取り入れたいと言う事で作られた劇場です。

「本格的な演劇」とはすなわち、歌舞伎などと違ってきちんと筋立てがあり、再代から最後まできちんと筋が通っている演劇の事。シェイクスピアなどを最初は上演していたようですが、難解で客入りが悪かったようです。

 そこに現れた女優第一号の松井須磨子。女性の役は女優に・・・というのもここが始まりです。

戦後は映画館になった事もあります。

そして昭和の時代は

と、ほとんどがストレートプレイだったんですよ。

「風と共に去りぬ」を見たのもここでしたっけ。

古い方に言わせると「昭和には役者を育てるという気風があった。平幹二郎も北大路欣也もそうやって無名のうちから舞台に乗せて成長させるという心意気があった」それなのに今はキャストは客寄せパンダだものなあ」と嘆かれます。

脚本家として活躍した三島由紀夫が「癩王のテラス」を上演しようとしたとき、様々な所から反対と圧力があったようですが、彼は「私の脚本のセリフは1文字とも変えない」と言い放って上演されたのです。

私が覚えている限り、NHKの「劇場中継」の帝劇は全部こういう「通好み」の舞台ばかりで、だから一層宝塚の「ベルサイユのばら」に夢中になったんだろうと思います。

帝劇とジャニーズとの関りですが、劇場を貸しているにすぎないと聞いています。

著作権も脚本も、グッズも全部ジャニーズが用意しているものを売るので帝劇には何の利益もない。貸したお金のみ入って来る。

でも、そうでもしないとやっていけない時代でした。

だからと言ってジャニーズの面々をミュージカル俳優と位置付ける事は出来ません。

(京本大我は別ですが)

1996年に宝塚で初演になった「エリザベート」が小池修一郎の手によって帝劇で再演。

 これが一つのターニングポイントではなかったかと。

ブロードウエイばかりでなく、ここにウィーンミュージカルが参入。そして「1789」によってフレンチミュージカルも上演。

「ミュージカルをやれば人が入る」と帝劇は完全にそっちにシフトしてしまったんですよね。

 

しかし、チケット代の高騰は天井知らず。そして一般人が知るよりも先にファンが買い占めて転売する・・・そんな事態が頻発し、なかなか一般人が生の舞台に接するチャンスそのものが減っているのではないかと危惧しています。

何ヶ月も上演期間はあるのに、なぜチケットが取れないのか。あまりに1つのキャストに多くの人が名前を連ねるからどうしたらいいかわからなくなるし、これがベストと選ぶと、それはみんな同じだった・・みたいな現象も。

宝塚もそうですが、ティズニーのように「客を選ぶ」事でステイタスを高め、高収入に繋げようとするとやがて衰退すると思います。

芸術鑑賞の権利は万民にある。無論テーマパークもそう。

しかし、万民の中から選ばれし一部の階級のみが楽しむ芸術は長続きしません。

5年後、帝国劇場が昔の重厚さを失い、巷にある劇場と変わらない姿で戻って来たらもうこれは終わりの始まりであると思います。

中学生の時に初めての経験で帝劇の崇高さや芸術性に触れた私は運がよかった。

でもそれはチケット代が安かった頃の話ですよね。前もって買わなくても窓口で買えた頃の話。

窓口はどんどん狭まっています。

演劇は大衆のものです。それを常に忘れないでほしいと思います。

 

 


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4 コメント

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Unknown (まほろば)
2025-03-03 07:21:01
結局金です。先日渋谷の東急シアターオーブに、行った時に同じ様な感じ受けました。昔のオ−チャ−ドホ−ルやシアターコクーンの雰囲気はすっ飛んで、どストライクの商業演劇場になってるのが悲しかった。
オ−チャ−ドホ−ルで見た、牧阿佐美バレヱ団のプティさんの作品は2回見に行きました。草刈民代より上野水香が、スッカリ好きになりました。
帝劇の最後のレ・ミゼラブルは別に不満はありませんが、放浪記もそうかもしれないけど細雪だってやっていたし、所謂大女優の座長芝居に客が入らなくなったんですよね。佐久間良子とか浜木綿子とかに続く人が出ませんでした。
劇団四季のアナ雪の、貧しい舞台に寒氣しました。これで12000円は無い(笑)舞台スカスカ。最近は劇団四季滅多に見ませんけど。でも帝劇は特別な場所でした。個人的に一階の補助席が好きで(笑)安いしトイレすぐ飛んでいけるし業と選んで買ってました。新しい帝劇も既に70代の私になりますけど頑張って通います。
返信する
宝塚も劇場建替え時は帝劇で上演しましたね。1000ディズの前 (スザンナ)
2025-03-03 09:54:31
日テレ放送の「帝国劇場最後の1日」と
配信で観た帝劇ラストコンサート「ニューヒストリー カミング」は
似て非なるシロモノでした。

日テレの放送の「日本人の好きなミュージカル名曲30」
帝国劇場で上演した作品は半数くらい?
宝塚 四季(ディズニー)の他 アニー等も帝劇では やってないはず。
大体 還暦過ぎた私の中学音楽教科書に乗ってたミュージカルナンバーを
イマドキの日本人 好きかしらね??いつ調べたアンケート?

ステージ上で公演の打ち上げをしてる所から 
井上君その他をロビーに引っ張り出し
古田君 山崎君を公演初日の舞台から直行させる価値が有ったのか?
私には分かりません。
「民衆の歌」が東日本大震災やコロナ禍時に
人々へのエールとして発信された事に触れていたのは良かったかな?

かたやコンサートはメンバーの一部が入れ替わり
曲目を変え 組み合わせを変えて
チケット代が1枚37000~13000円と超高額なのに加えて
見逃し配信の無い1回5700円のライブ配信が6回
映画館でのライブビューイングは6500円で平日昼
最後の金集めかよ!強気だな~と思いつつ1度だけ視聴しました。

ミュージカル以外の公演にも触れつつ
「ブロードウェイのミュージカル上演開始時期」
「その他の地域からのミュージカル上演開始時期」
「日本独自のミュージカルを帝劇で作り始めた歴史」
等々を系統だてて披露してたのを興味深く見ました。

一路さんや石井さんが本田美奈子さんとの思い出を語り
これからのミュージカル界を背負っていくだろう若手達にも歌わせ
予想してたより 感動的な舞台でした。
若手を育てていかないと~いずれ衰退に向かう
これを肝に銘じて新しい劇場へ飛躍して頂きたいものです。
返信する
Unknown (ハナミズキ)
2025-03-03 10:03:50
番組の感想は私も同じです。何故四季❓️歌は嫌いじゃないけど帝劇最後の日の番組だよね、と不思議に思いながらみていました。
私はレ・ミゼに好きな俳優さんがでていたので必死にチケット取りましたがコロナ禍以外本当に激戦。エリザベートもしかりでした。
ミュージカルファンと名乗るほどではありませんが何度か足を運び、あの特別感を味わえたのは良かったかな。四季も何度か観ていますけど帝劇で観劇するのとは全然気持ちが違う。
5年後どんな姿を見せてくれるのでしょう。意外とあっと言う間かもしれませんね。
返信する
Unknown (もん)
2025-03-03 12:38:27
ミュージカルもディズニーも好きです。
番組見ました。素敵な歌声や貴重映像見れるかとワクワクしながら…
えっなにこれ??って感じで、ミュージカルナンバーを楽しみにしてたのにディズニーナンバー。確かに歌は良いしミュージカルアニメと私は思っています。それの実写化でしょ?と。
それよりも、これぞミュージカル!ってのが見たいのよ!!
劇団四季がダメというより、サヨナラ帝劇なんだから
帝劇でやってきたのをもっとだしてよー!と家事をしながら見てました。
ミュージカル俳優が選ぶ、、、とか、帝劇の歴史に沿って、、、とか
ふぶきさんの記事のような内容の番組を見たかった

子どもの頃に夏休みにサウンドオブミュージックや王様と私、宝塚も連れて行ってもらいました。
今はチケットも高く、常連さん(?)ばかりで、子どもがもう少し大きくなって連れて行ってあげられるか…

話が逸れて、言いたいことまとめられず駄文になってしまいました。
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