フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が欧米ほか、そして日本でもよく売れている。この本の論旨は「資本主義経済下では、資本の収益率が経済成長率を長期的に上回り、富は資本家に集まり、所得格差が広がり社会不安の要因となる。世界レベルで富裕税を導入するなどの政府による干渉が必要」ということ。
資本主義経済にあっては、資本家が取得を得るのに有利であることは、今までの経済理論で説明でき、また歴史的事実であり、これまで様々な取得の再分配政策が取られてきたと思う。この「21世紀の資本」では、多くの富が資本家に蓄積されることを過去200年に及ぶ経済データから示したことが革新的な書物ということだ。見方を変えれば再分配政策がうまくいってこなかったことを説明しているとも言えるのかもしれない。
僕は、まだこの本を読んでいないが、関連して自分の考えを言いますと、
①自由競争下での資本主義経済の所得分配は一定条件下で合理的で公正。
②経済制度は完全なものはなく、現実に合わせ運用、修正していかなければならない。
③根っこにある、いかにして資本家になったかという問題?相続か、才覚かを問うのは意味がない。
④社会主義計画経済は難しく、歴史が失敗を示している。
⑤今一番の問題なのは、世界的に経済が低成長の時代になっているということ。制度上多少の矛盾があっても経済成長が続き、全体のパイが大きければ、労働者側の取り分がある程度大きく、富裕層とのギャップは大きな問題になりにくい。
なお、この本は、フランスの学者によるものだが、格差の大きいアメリカで大変話題になっている。日本でも低成長と所得格差は大変問題だが、アベノミックスの3本目の矢でこれに対応しようとしている。または、民主党の主張する分厚い中間層を再生するということでもあると思う。
p.s.「21世紀の資本」は経済書であるが、歴史書としても素晴らしいと評判だ。英語版でペーパーバックスが出たら読んでみよう。
2015年1月13日 岩下賢治