7月12日付け、カミュ「ペスト」への旅、の続きになります。
この度、194*年のアルジェリア・オランから帰国しました。・・・La peste(ペスト)を読了しました。
小説では、194*年4月16日の朝、医師Rieux(リウー)が階段でネズミの死骸を見つけたことから始まり、市内でペストの発生が確認され、都市封鎖、外出禁止、の措置が取られ、リウーらを中心に医療チームが組まれ対応に当たるが、死者は増加の一途をたどる。そのなかでの様々な人間の行動が描かれる。・・・翌年、2月には患者、死者数は減少し、終息宣言が正式に発表される。
カミユがここで、描きたかったのは、社会的な不条理は、突然に訪れる。人々は、それに対し、抵抗し、連帯し、誠実に、行動することだ。・・・ということだ、と思う。これは理解できる。現在の新型コロナ禍でも、おなじことだろう。国を超えての協力が必要となる。
さてと、名著を読み、時代背景、文化などを、感じられるならばより深い鑑賞ができると思うのだが。・・・
作品発表は、1947年で大戦終了後まもない頃。当時のアルジェリアはフランス領で、多くのフランス系住民が暮らしていた。その当時の街の様子は、作品の最初の部分に少し描かれている。この作品とは別であるが、アルジェリア独立戦争は、1953年にはじまり、夥しい犠牲者を出し1962年に、独立を果たした。そして、人口の1割ほどのフランスなどヨーロッパ系住民は引揚者となる。
自分としては、la peste で、難しい文章、フランス語と格闘し、同時に、北アフリカの歴史等を少し勉強し、この夏は、大変有意義な夏となった。
絵、は医師Rieux(リウー)が、先輩医師と、初めて、ペストの発生を確認するところ。
・・・ Rieux reflechissait. Par la fenetre de son bureau, il regardait l’epaule de la falaise pierreuse qui se refermait au loin sur baie.
・・・ C’est a peine croyable. Mais il semble bien que ce soit la peste.
・・・ リウーは考え込んでいた。自分の書斎の窓を通して、遠くの湾に対して閉じている岩ばかりの断崖の肩を見ていた。
・・・ それはほとんど信じられないことだ。しかし、たしかにペストのようだ。
2020年9月1日 岩下賢治