のんびりぽつぽつ

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「図書室の海」

2005年08月08日 16時46分59秒 | ★★恩田陸
恩田 陸 著 新潮文庫。

短編集。小さなお話が10話収録されています。
なんというか。
その一編、一編がそれぞれ十分に本一冊に値するんじゃないか、と思える内容で、すっかり恩田作品の虜になってしまいました。

表題の「図書室の海」はこの前読んだ「六番目の小夜子」の番外編。関根秋の姉、関根夏が小夜子だったときのお話です。
子どもの頃から落ち着いていて、自分も他人も客観的に見ることのできた夏は、だから今まで自分は『主人公』にはなれない人間だ、と思っており、そんな彼女に、あの『小夜子』が渡されたことから、少しだけ彼女の心が変化する。
鍵を彼女に渡した志田啓一。何故、自分に渡したのかを知りたくて、夏は図書室で彼が読んだ本を片っ端から読み始める。そこに、テニス部の一年後輩で、多分夏に好意を抱いている克哉と、同じく一年後輩で、図書室で敵意を示してくる少女がからみ、どこかに、髪の長い少女が見え隠れし。
短編だけれど、きっちりとそれぞれの成長と苦悩と悩みと希望が描かれる。
そして、あの、ちょっと怖くておもしろい感覚も。

後、、私がこの本の中で気になったお話が、
「イサオ・オサリヴァンを捜して」
野戦の戦場にあった一人の男の足跡を探す「私」の話なんだけれど、とてもおもしろくて、この世界観がとても気になった。こういうタイプのお話、大好きだなあ~と、改めて思い知った(笑)幸せ。

他のものも、たとえば「ピクニックの準備」は「夜のピクニック」(未読)という長編の前日譚だし、確かに「恩田陸」という作家の作品世界の感覚を手っ取り早く知ろうと思ったら、この短編集はとてもいいかもしれない。

そうそう。作者のあとがきも、それぞれの作品についてのコメントなので、必見。
気になった「イサオ・オサリヴァンを捜して」は、なにやら「グリーンスリーブス」という長編の予告編として書かれたものだとのこと。で、この長編の方はどこに?と思ったんですが、まだ本になっていないのかな?


☆恩田陸2冊目にして、虜になっちゃった記念の作品です。
 実はすでに「球形の季節」という作品も読み終わってます。
 今は、「光の帝国・常野物語」を読んでいます。
 もう、止まらない。
 昔、夢中になった、新井素子作品と似た感覚を覚えています。
 そんな気持ちをまだ持てる自分にも、ちょっとうれしくなっていたりして、
 これは、もう、止められません。