恩田 陸 著 講談社。
「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り家は処分してはならない」
亡き祖母の奇妙な遺言に従い、「魔女の館」と噂される洋館に、理瀬はやってきた・・・・・。
こんな文言が本の帯についている、そう、これは「麦の海に沈む果実」のその後のお話。
理瀬があの青い丘の学園を去った後、どんな生活を送っているのかがちょっとだけわかる。
そして、「図書室の海」にあった「睡蓮の夢」からも繋がっている「洋館」と二人の兄(というか、本当は従兄弟)のことも。
祖母が最後まで隠していた「ジュピター」の正体をつきとめて、それを誰にも気づかれずに処分することが、多分この奇妙な遺言の正体で、理瀬と従兄弟の兄、稔はそのことを理解している。ふたりは向こう側の暗闇の世界で生きることを決められている子どもたちだから。ただ、従兄弟の下の兄、亘は光の世界を歩ける人間として、彼ら一族の暗い部分を極力伝えられずに今まで来ていて、その疎外感に苦しんでいる。
そこに、祖母の再婚相手の祖父の連れ子である梨南子と梨耶子が絡んできてほんとにもう、理瀬の家庭って大変な状態なんだなあーとしみじみ・・・
青い丘の学園で記憶を取り戻したあとの理瀬は、高校をイギリスに留学し、非常に老成したところのある少女になり、暗闇の世界に入っていく自分をはっきりと自覚しているのだけれど。
今回のお話は、この理瀬の「祖母の謎」ともう1つ、理瀬の高校での友人の謎の二本立て。それが最後にはしっかり繋がりを持つ。
転校生である理瀬(ただし遺言通り半年だけの転校で、謎が解ければすぐにイギリスに戻る予定の彼女だが)と友人になった朋子の動静が、非常に気になるものだった。
自分がかわいい少女であることを自覚し、男子生徒にもてることを当然のことと思っている脇坂朋子。その彼女を好きになり、純粋に付き合ってほしいと望む朋子の幼馴染の勝村雅雪の親友、田丸健一。ところが朋子は理瀬の兄、亘が好きで、遂には健一を理瀬の住む洋館の秘密に関わる場所に落とし、亘が理瀬を愛していると感づいて、理瀬までも自ら手にかけようとする。
けれど、普段の彼女は、病弱な弟の面倒を見ながらファッションや友達、恋人に興味をもつごく普通の高校生なのだ。そして、付きまとわれるのがいやだから健一を自分の目の前から消しただけだ、という程度にしか自分の行動の意味を考えていない。それが、一人の人間を殺してしまうことだということを、彼女は考えていないのだ。
意識していない「悪意」
これは、ある意味、しっかりと意識して暗闇をいく理瀬や稔よりもよっぽど恐ろしく残酷なものなんだ、と、この物語は現している気がする。
どこか、現実の世界にもある、恐怖を感じた。
水野理瀬。すべての自らの行為を理解し、生と死、光と闇の狭間で生きることを運命づけられ、自らもそれを受け容れた少女。
彼女の闇はどこまでひろがっていくのだろう。
「麦の海に沈む果実」の素直に続編の位置づけと考えていいこの作品。
ならば、続きを・・・と、相変わらず貪欲になっている私。かってな想像(妄想?)はどんどん膨らむばかりなのである。
「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り家は処分してはならない」
亡き祖母の奇妙な遺言に従い、「魔女の館」と噂される洋館に、理瀬はやってきた・・・・・。
こんな文言が本の帯についている、そう、これは「麦の海に沈む果実」のその後のお話。
理瀬があの青い丘の学園を去った後、どんな生活を送っているのかがちょっとだけわかる。
そして、「図書室の海」にあった「睡蓮の夢」からも繋がっている「洋館」と二人の兄(というか、本当は従兄弟)のことも。
祖母が最後まで隠していた「ジュピター」の正体をつきとめて、それを誰にも気づかれずに処分することが、多分この奇妙な遺言の正体で、理瀬と従兄弟の兄、稔はそのことを理解している。ふたりは向こう側の暗闇の世界で生きることを決められている子どもたちだから。ただ、従兄弟の下の兄、亘は光の世界を歩ける人間として、彼ら一族の暗い部分を極力伝えられずに今まで来ていて、その疎外感に苦しんでいる。
そこに、祖母の再婚相手の祖父の連れ子である梨南子と梨耶子が絡んできてほんとにもう、理瀬の家庭って大変な状態なんだなあーとしみじみ・・・
青い丘の学園で記憶を取り戻したあとの理瀬は、高校をイギリスに留学し、非常に老成したところのある少女になり、暗闇の世界に入っていく自分をはっきりと自覚しているのだけれど。
今回のお話は、この理瀬の「祖母の謎」ともう1つ、理瀬の高校での友人の謎の二本立て。それが最後にはしっかり繋がりを持つ。
転校生である理瀬(ただし遺言通り半年だけの転校で、謎が解ければすぐにイギリスに戻る予定の彼女だが)と友人になった朋子の動静が、非常に気になるものだった。
自分がかわいい少女であることを自覚し、男子生徒にもてることを当然のことと思っている脇坂朋子。その彼女を好きになり、純粋に付き合ってほしいと望む朋子の幼馴染の勝村雅雪の親友、田丸健一。ところが朋子は理瀬の兄、亘が好きで、遂には健一を理瀬の住む洋館の秘密に関わる場所に落とし、亘が理瀬を愛していると感づいて、理瀬までも自ら手にかけようとする。
けれど、普段の彼女は、病弱な弟の面倒を見ながらファッションや友達、恋人に興味をもつごく普通の高校生なのだ。そして、付きまとわれるのがいやだから健一を自分の目の前から消しただけだ、という程度にしか自分の行動の意味を考えていない。それが、一人の人間を殺してしまうことだということを、彼女は考えていないのだ。
意識していない「悪意」
これは、ある意味、しっかりと意識して暗闇をいく理瀬や稔よりもよっぽど恐ろしく残酷なものなんだ、と、この物語は現している気がする。
どこか、現実の世界にもある、恐怖を感じた。
水野理瀬。すべての自らの行為を理解し、生と死、光と闇の狭間で生きることを運命づけられ、自らもそれを受け容れた少女。
彼女の闇はどこまでひろがっていくのだろう。
「麦の海に沈む果実」の素直に続編の位置づけと考えていいこの作品。
ならば、続きを・・・と、相変わらず貪欲になっている私。かってな想像(妄想?)はどんどん膨らむばかりなのである。