遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日露関係と露中関係

2013-11-04 22:56:04 | ロシア全般
 このところ、日露間と露中間で動きがありましたね。
 かねてより折に触れ取り上げている、ロシアの資源開発の極東・北極圏への重点移行が迫られた動きと、安倍首相の中国近隣諸国への接近外交の一環での日露接近外交が、中国も触発されて動いていることが原因ですね。
 露中関係は、その歴史の中で互いにけん制し合ったり、緊密に連携したりしていますが、牽制しあう局面では、その時期に劣勢な側が日本に接近して、相手への抑止力を得ようとしてきました。
 かつて、世界の勢力を米国と二分する一方の雄はソ連でしたが、今は中国がその立場をとってかわりました。米国に対抗する勢力として、露中が重要なパートナーであることの基本は変わっていませんが、中国の覇権拡大を警戒し続けて、その抑止力を、今はロシア側が求めているのも現実ですね。
 日本も、中国の東シナ海での侵略行為に、抑止力の強化は喫緊の課題となっています。そこで、日露の対中牽制力の強化のニーズが一致して産まれたのが、日露の 2+2会談でした。
 
 会談の内容、成果については、主要紙が多少の温度差はあるものの、一致した見解だと理解しています。
 つまり、中国の牽制のために、会談の内容はともかく会談が実施されたことの効果が大きいと評価しつつ、露中関係はそれぞれの国にとっては重要な関係であり、日米安保条約と日豪安保共同宣言を持つ日本の基本外交とが双方にあり、2+2の深化は楽観はできないというものですね。
 北方領土問題を抱えていて、日本の領空を脅かす行動を繰り返すロシアは、平和条約を破って北方領土を奪取した国であることも、サハリン1, 2ではリスクを日本を含む外国企業に負わせ、成果を得られるめどがつくや横取りした経緯は忘れてはいけません。

 
日ロの戦略協力をアジア安定に生かせ:日本経済新聞
 日露2プラス2 「領土」への信頼を醸成したい : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 【主張】日露2+2 「領土」置き去りにするな - MSN産経ニュース

 その中で、日本はどのようにこれらの対露外交を進めればよいのか。北大の木村名誉教授が提言しておられます。
 

露首相訪中が語る日本の有利性 (11/4 産経 【正論】北海道大学名誉教授・木村汎)

 
ロシアのメドベージェフ首相が10月22日から23日にかけて中国を訪問して、21件にも上る文書に調印した。このため、すわ、日米に対抗する中露の結束強化か、と騒がれた。そうした狙いが存在したことは間違いなかっただろう。しかし、その実体は、そんな意図の実現にはほど遠いものだった。

≪3年前の訪問とは様変わり≫
 3年前の2010年秋に行われたメドベージェフ氏の訪中に比べて、今回は多くの点で様変わりしていた。まず、氏の地位は大統領から格下の首相になっていた。
 さらに
重要な変化はロシア側における対日姿勢
だった。3年前にメドベージェフ氏が大統領として調印した中露共同声明は、「第二次世界大戦の結果を見直すことは許さない」と明言していた。これは、ロシアと中国が領土紛争で日本に対して共闘するという姿勢の表明以外の何物でもなかった。
 ところが、
プーチン氏が大統領に復帰した12年以降のロシアは、尖閣諸島をめぐる紛争では日中いずれの立場にも与(くみ)しないとの立場を採る。実際、今回北京でメドベージェフ氏は反日的と受け取られる言辞を一切口にしなかった

 首相職に甘んじたメドベージェフ氏は、専ら「経済」を担当し、「政治・外交」にはかかわらないという説明も可能かもしれない。だが、よく見ると、「経済」分野ですら、同氏の影響力はプーチン氏に侵食されて減少している。そのことは、今回の首相訪中に同行したロスネフチ、ノバテック、ガスプロム3社の中国との契約状況からも窺(うかが)い知ることができる。
 ロスネフチは、プーチン氏の懐刀のセーチン氏が社長を務める国営石油企業で、今回、中国との間で大きな契約を成立させた。ノバテックは、プーチン氏の柔道仲間のティムチェンコ氏率いるロシア第2の民間ガス会社で、今回、同様に成約を得た。他方、メドベージェフ氏が長年にわたり会長職を兼務してきた、ロシア最大手の国営ガス企業、ガスプロムのみは、手ぶらで北京を後にしている。

≪中国はロシア資源買い叩く≫
 中露両国とも、今年3月の習近平・中国国家主席の訪露以来、エネルギー資源分野での協力深化ぶりを喧伝(けんでん)してやまない。しかし、その実相は以下の通りである。
 
モスクワは、米国発の「シェールガス革命」の影響が近く、アジアに到来し、ロシア産資源の販売先が少なくなることを憂慮
する。そうなる前に、自国産の資源を中国、韓国、日本に売却する長期契約を結ぶ必要があると、焦る。
 
北京は、このようなモスクワの危惧を十分見透かしていて、ロシアの資源を買い叩きにかかる。例えば、ロシア産の天然ガスを国際価格よりもはるかに安値で購入しようと試みる。そのため、中露間でガス価格交渉は今回も暗礁に乗り上げて、合意に至らなかった
。シェールガス革命によって、在来型の天然ガスの需要は低下し、今後、事態はわが方に有利に展開する-。中国側はこう踏んで、ロシアを揺さぶっているのである。
 ここ数年来、
中露間の資源売買は「資源-融資」取引の形を取って行われている。つまり中国側はロシア側に多額の融資(ローン)を提供し、その見返りにロシア側から資源を受け取るというやり方である。両国間の資源貿易は、この方式で一見、順調に進行中であるかのように見える。だが、現実には価格面での対立の他にも、次のような難題に直面
している。

≪「領土-極東開発」取引を≫
 まず、
そもそもロシア国内に中国向けの資源が存在するのか、という点である。西シベリアの資源はそろそろ底をつき、東シベリアの資源開発が喫緊の課題になっている。仮に、東シベリアに十分な資源が埋蔵されている場合であっても、それは西シベリア産に比べて、気候その他の条件から採掘が極めて困難である。それらの資源を掘り出しても、果たして商業的にペイするのか。加えて、輸送手段の問題
もある。原油の場合はパイプラインの敷設、天然ガスの場合はLNG(液化天然ガス)に転換して運ばなければならない。

 以上、検討してきた中露間のエネルギー資源取引の実態が、わが国に与える教訓は少なくない。
 
第一に自覚すべきは日本が中国に比べて、ロシアに対し有利な立場
に立っていることだ。日本は友好国の米国やカナダから安価なシェールガス提供を受けることにすでに合意済みだからである。
 
第二に日本はロシアが望み得る最良の顧客であるという点だ。例えば、中国よりも高い国際価格でロシア資源を購入するからである。第三に日本が科学技術大国である
ことだ。ロシアが自力だけではまかないきれない大口径のパイプラインを提供し、LNG施設の建設に協力し、省エネ技術を伝授し得る能力の持ち主である。
 このような日本の数々の有利性を考慮に入れるならば、
日本はロシアに向かって、次のように主張してもおかしくはない
だろう。
 中露間で「資源-融資」取引を成立させるのであれば、
日露間では「領土-(極東)開発」取引を成立させようではないか、と。(きむら ひろし)

 中国がロシアの台所事情を見透かして、国益を最大限に得ようと交渉している点を日本も見習うべき点があるとのご指摘は、全く同感です。
 ただ、シェールガスを米国やカナダから安価に輸入できる日本は、中国より対露関係で有利な立場にあるとのお説には疑問が残ります。中国は、米国を凌ぐシェールガスの埋蔵量を有していますから、シェールガス革命で潜在的能力は高いので、日本どころか米国よりも資源国になりうると言う点です。
 勿論、対露交渉では切り札になり、ロシアが接近を急いできている所以ですね。
 中国より日本が高い価格で買うからとの指摘は、洒落でしょうね。消費国である点では、中国には劣るかもしれませんが大きな魅力であることには違いないでしょう。
 北極や極東の極寒の地での開発技術支援は、既にサハリン1, 2で実証済みですから、ロシアとしても是が非でも求めてやまない日本の魅力となっていますね。

 そこでズバリの、「極東開発」を「北方領土」との交換条件で取引しようという提言です。
 遊爺も、かねて日本企業が安易に目先の利益を追うことなく、国益に照らして官民一体での極東開発支援を唱えてきました。
 政府や、関連企業には、是非、中国の外交を見習って、国益に通じる、ロシアペースではなく、日本のペースでの日露交渉をお願いしたいものです。



 # 冒頭の画像は、日ロ 2+2 に臨む、小野寺防衛相、岸田外相、ラブロフ外相、ショイグ国防相




  この実の木は、ニワトコ


↓よろしかったら、お願いします。





Fotolia


ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11月3日(日)のつぶやき | トップ | 外務省が慰安婦問題で韓国批判 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ロシア全般」カテゴリの最新記事