「アジア安全保障会議」に続いて、定例で8回目となる「米中戦略・経済対話」が北京でひらかれました。
ケリー国務長官は、引き続き、南シナ海での中国の国際法を無視した覇権拡大をけん制するとともに、ルー財務長官が中国の過剰生産によりもたらされている鉄鋼価格の下落についても、けん制したようですね。
「アジア安全保障会議」から続いた、米国の対中牽制姿勢は、これまでの腰がひけた姿勢がかなり改善された執拗なものであり、ASEAN諸国の分断を謀る中国をけん制したもので、昨日も書かせていただいたように、その効果はでている様ですね。
米中戦略経済対話 南シナ海問題で中国に国際法順守訴える | NHKニュース
シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)では、ここ数年の会合に続いて中国の一方的な力による現状変更への批判がなされ、中国の外交的孤立は歴然としてきた。米中対立の激化とともにアジア秩序の安定の道も探る必要が出てきた。
≪浮き彫りになった孤立化≫
中国のアジア太平洋地域に対する外交は過去8カ月ほどで頓挫してしまった。昨年9月の習近平国家主席のワシントン訪問は南シナ海の人工島化に関する米中見解の対立激化などで失敗に終わった。しかも中国は翌月に南シナ海の軍事拠点化に対抗する米艦艇の「航行の自由作戦」を受けて苦しい立場におかれた。
さらに12月末、日韓が慰安婦問題の解決に目途(めど)をつけたことで、中国の日韓離反工作の失敗が明らかとなった。加えて本年1月初めに北朝鮮が実施した核実験や2月の長距離ミサイル発射への制裁強化に対して、中国が慎重な姿勢を示したことに、韓国から強い不満を買ってしまった。韓国は中国が反対する米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム、高高度防衛ミサイル(THAAD)の導入を検討し始め、また大規模な米韓合同軍事演習などをするに至った。
韓国の対中離反に加えて、5月には台湾に大陸との距離をおく蔡英文民進党政権が登場した。馬英九総統が築いてきた大陸との協調体制が崩れたのである。
そして5月下旬のオバマ米大統領によるハノイ訪問も成功した。オバマ大統領はベトナム滞在中、学生や庶民と親しく交わる米国人らしい姿勢を見せた。こうして米中均衡は米国に有利に働いた。
習近平主席は昨年9月3日に天安門広場で行った抗日戦争勝利70周年記念のための軍事パレードに主要国を招待したが、参加した主要国首脳はロシア、韓国ぐらいで欧米主要国や日本は一斉に参加を断った。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳で参加したのはインドシナ3カ国、それにミャンマーだけであった。中国がいまやアジア太平洋地域で外交的に孤立していることは明白である。
≪ASEANを助ける日米豪≫
ASEANは一方で中国の威圧的領域拡張政策を不満に感じながら、それに対抗する軍事力が十分でなく、忍従に耐えている。他方で中国の経済援助をちらつかせる「微笑攻勢」にはすさまじいものがあり、経済的に弱いASEAN各国は対中経済依存を深めざるを得ない。したがってASEAN各国はベトナムやフィリピンを除いては概して中国批判を避けてきた。中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)には、ASEAN全10カ国が加盟した。
しかし実際は、中国に過度の経済的依存をするラオスとカンボジアを除くASEAN各国は中国に批判的であり、米国の「航行の自由作戦」を支持している。ASEANには、急速に拡大しつつある中国の影響力に対抗してくれる勢力が必要なのである。
フィリピンは5カ所の空軍基地を米国に使用させることに合意した。とくに中国が2012年に力で占拠したスカボロー礁の状況などの監視を依頼している。シャングリラ対話でカーター米国防長官は「中国がスカボロー礁を埋め立てるなら、米国と周辺国は行動を起こすことになる」と明言したという。
またカーター長官も中谷元防衛相も、フィリピンが常設仲裁裁判所に提訴した中国の「九段線」の違法性など、中国は裁判所の判断に従うべきであると主張して、中国を牽制(けんせい)した。
ベトナム、インドネシア、マレーシアなども、米国、日本、オーストラリアとの協力を得るべく動いている。日本はこれまでにインドネシア、ベトナム、フィリピンに巡視艇を提供、あるいは提供する手はずを整えた。オーストラリアはマレーシアからの要請を受けて上空監視を行っている。
≪国際的に認知された地域の懸念≫
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言では、中国の強引な海洋進出に関して「東シナ海・南シナ海の状況を懸念」と明記された。先進7カ国(G7)が足並みをそろえたことで、懸念は国際的認知を得ることになった。欧州主要国に対して認識を深めさせたのは安倍外交の成果である。
事実、安倍外交はその実を上げつつある。3月に会ったASEAN事務局の高官は「最近の日本外交は自己主張をするようになりましたね」と筆者に述べた。ASEAN各国は日本をアジアの勢力均衡を有利に動かすために使おうとしている。とくにフィリピンとベトナムが熱心で、米国のリバランス(再均衡)戦略の不十分な点を日本が補填(ほてん)してくれることを期待している。日本は「使える存在」になりつつある。
日本の主張は、アジア諸国との協力関係を緊密にするとともに、欧州主要国が中国の軍事活動に目を向け、バランスのとれた対中外交をするよう促すことに向けられるべきだ。そうすることで、中国に対しアジア外交が失敗していることを想起させることが必要だ。(にしはら まさし)
カンボジア、ラオス、タイなど(スーチー新政権のミヤンマーも?)が、中国の札束外交の軍門に下っていますが、ベトナムやフィリピンに加えて、インドネシアを筆頭に、対中懸念を深めている国が増え、日米、わけてもアジアの一方の雄である日本への、対中抑止力(反中親日に傾斜ではない)発揮が求められているのですね。
安倍政権が、それに呼応して、ASEAN諸国や台湾の期待に応える行動をおこしていることは、記事でも触れられていますし、諸兄がご承知のことです。
勿論、専守防衛で、世界の普通の国とは異なる日本は限界があり、一国では十分な抑止力を発揮することは出来ません。
日米同盟の他に、オーストラリアやインドといった雄国や、世界各国との強い連携と、国際世論の喚起が不可欠です。
記事で指摘されている通り、G7では、安倍首相のリーダーシップで、南シナ海、東シナ海の中国の暴挙・懸念が国際認知されました。
しかし、早速、メルケル首相は中国を訪問して抜け駆けの関係修復を謀っていますし、中国の札束外交の援助は、ASEAN諸国にとっては、発展への投資として欠かせないものです。
が他方では、中国の属国になることも避けたい。
日本に期待される役割は何か。その期待にどう応えるか。次期米国大統領はヒラリー氏とトランプ氏の対決となりましたが、誰になるのか。変動する世界情勢の中で、アジアの変動に果たすべき日本の役割は大きいですね。
メルケル独首相が12日から訪中:日本経済新聞
【米大統領選】民主党候補、ヒラリー・クリントン氏の指名確実 代議員過半数獲得とAP通信 - 産経ニュース
# 冒頭の画像は、米中戦略・経済対話に臨む中国の習近平国家主席、米国のケリー国務長官、ルー財務長官
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