遊爺雑記帳

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川崎重工執行役員が語る、目指すサステナビリティ貢献の切り札は“水素”だ

2023-04-18 01:23:56 | SDGs
 自他共に認めるコングロマリットの川崎重工は、グループミッション「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する"Global Kawasaki"」を可能にするために、ミッション直下にサステナビリティ経営方針を制定。
 この経営方針に向けての具体的な施策は多々あるが、今回はカーボンニュートラルに大きな影響を及ぼす同社のアグレッシブな施策を紹介したい。それは「水素」だと、フリーライターの簗尚志氏。
 川崎重工業 執行役員 エネルギーソリューション&マリンカンパニー プレジデント・西村 元彦氏へのインタビューが紹介されています。

 
川崎重工執行役員が語る、目指すサステナビリティ貢献の切り札は“水素”だ | JDIR
 オーストラリアに眠る未使用資源から水素を製造、9000kmの船旅で日本へ 西村 元彦 川崎重工業 執行役員 エネルギーソリューション&マリンカンパニー プレジデント 聞き手:簗 尚志/2023.4.17

 輸送機器、エネルギー、産業設備、レジャー、最近では自動PCR検査ロボットといった領域まで多様な製品やサービスを提供する、自他共に認めるコングロマリットの川崎重工は、同社の存在意義であるグループミッション「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する"Global Kawasaki"」を可能にするために、ミッション直下にサステナビリティ経営方針を制定している。この経営方針に向けての具体的な施策は多々あるが、今回はカーボンニュートラルに大きな影響を及ぼす同社のアグレッシブな施策を紹介したい。それは「水素」だ

■なぜ川崎重工は水素なのか
−−川崎重工は、日本のエネルギー基盤として水素の大量製造に取り組んでいるそうですが、それはなぜ、そして具体的にはどういった方法なのでしょうか。

西村元彦氏(以下敬称略) 
1997年の京都議定書が制定した、温室効果ガスの削減は2008年から始まりました。2012年までに先進国全体で温室効果ガスの5%以上削減を目指すもので、当時は“低炭素社会”と言われていました。当社は、飛行機、船、建設機材、発電用ガスタービンなど、大型でかつ化石燃料を利用しているものが多い。これらの脱炭素化には、化石燃料でなく水素で回すことが一番と考えました

 しかしそのためには大量の水素が必要です。
ただ当時は「再生可能エネルギー(以降、再エネ)で水を電気分解し水素を作って持ってきます」と言っても、誰も信用しなかったんですね。値段も高いし、量も限られている。第一「水素で大きなものが動かせるのですか」という風調でした。

 
そこで大量かつ安価な水素源を世界中で探しましたするとオーストラリアの未利用資源、褐炭が候補に挙がりまして、これが非常に安価である、ならばこれに取り組もうとなった経緯が当時の記録として残っています。その後、2010年4月末には、オーストラリアの褐炭を利用して水素を製造し日本に持ってくる、というサプライチェーン構想を当時の中期経営計画で公表しました。まずコンセプトを社会にドーンと公開して、これからやります! と宣言。コンセプトドリブンの形でスタートし、今日に至っています。

 
褐炭由来の水素は、製造工程でCO2が排出されますが、回収・貯留することでCO2排出を実質ゼロにできます(ブルー水素)。ブルー水素は、再エネで作るグリーン水素より環境負荷が高いのではという声がありますが、みずほ情報総研の資料では、水素の製造、輸送・貯蔵、充塡(じゅうてん)の工程を考えると、当社のブルー水素はグリーン水素に負けないくらいCO2の排出量が少ないという報告があがっています。ちなみにオーストラリアの褐炭は日本の総発電量の240年分あると言われています。

−−かなり壮大な計画と思われますが、そんなことが可能なのでしょうか

西村 まず
水素の利点として、いろいろな国から調達が可能なのでエネルギーセキュリティに貢献できます電気と比べて、大量輸送、長距離、長期の輸送や貯蔵が可能なので、レジリエンスにもつながります。また水素は液化水素にすれば800分の1と、大幅に体積を減らせますので、大量輸送にも適しています

 実は当社は、半世紀前のLPG(Liquefied Petroleum Gas=液化石油ガス)の-40度に始まり、次はLNG(Liquefied Natural Gas=液化天然ガス)の-162度というように、エネルギーの極低温技術の研究開発を昔から行っています。液化水素の温度は-253度なので、従来の一重タンクから真空二重タンクにする必要はありましたが、液化天然ガスの技術と同じ取り扱い方法、同じような技術の土地勘がありましたから、
液化水素は川崎重工としては親和性の高い分野なのです。

 加えて液化水素の活用のための(これから目指す量よりは少ないですが)水素の液化機や保存用のタンクは、すでに2010年当時からありましたので、これは規模を大きくすれば良い
。当時なかったのは、液化水素を運ぶ運搬船です。ただ当社は大型LNG運搬船と液化水素用の大型タンクの両方を作っていましたので「組み合わせれば、できるのでは」ということで、船の建造はここから始めました。そして2022年2月には、日本とオーストラリア間で液化水素の往復輸送を、液化水素運搬船“すいそ ふろんてぃあ”号で実施し、神戸空港島の液化水素荷役基地「Hy touch 神戸」に、無事移送することができました

 一方、
水素を利用する方においては、産業向けの中小型発電用のガスタービンの水素燃料化を進めており、実証とともに実用化の例も出てきています。モビリティについては、燃料電池車、バス、フォークリフトなど実用化が現在進んでいますが、当社は既存ガソリンエンジンを、水素を燃料とする水素エンジンに変換する取り組みを進めています。水素エンジンは小型化が難しいのですが、トヨタ、デンソー、ヤマハ、スズキ、ホンダと協力し、2022年9月に小型水素エンジンを搭載した4輪バギーのデモ走行を実現しました。飛行機についても2035年頃の実用化に向けて、液化水素を燃料とする水素飛行機のコア技術開発に取り組んでいます

 当社は船を造っていますが、見方を変えると、船とは石炭、石油、天然ガスを運ぶエネルギーキャリアです。だから「次は水素」という流れは、社会のエネルギーインフラに関わってきた企業としては、全く違和感がなく、ごく自然なことと思っています。

■世界的に加速する水素への取り組み
−−日本は水素への取り組みが進んでいますが、世界的に見るとどうなのでしょう

西村 インド、アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジアでも水素案件が加速しています。私たちが水素のコンセプトを出したのは2010年頃、日本政府も2017年に「水素基本戦略」を世界に先駆けて策定しました。こうして世界的に水素への関心は高まってきていたのですが、
ここ数年のコロナ禍とウクライナ情勢によって、グローバルでのエネルギー供給への不安が生まれ、水素があったほうが良い、必要だという動きが世界中でさらに加速しました。

 ヨーロッパでは
、2022年にリパワーEUという計画が立案されました日本が想定する「2050年に年間2000万トンの水素導入」に対して、リパワーEUでは「2030年に年間2000万トンの水素導入」と、かなり高い目標を設定しています。ヨーロッパは特に再エネが進んでいますし、水素の輸送でもパイプラインが使えるなど、水素利用の立ち位置には強いものがあります。

 ただ、リパワーEUでは、補助金を出すから水素のプロジェクトを提案して欲しいと公募をかけたところ、水素を作りますという製造寄りの提案ばかりが集まったそうです。こんなに水素を作って誰が使うんだ、という話になった。
ヨーロッパも目標をしっかり据えていますが、中身の検討はまだ市場に委ねているところがあります

−−水素を作る、運ぶ、使うといったサイクルを上手に作るにはどうすれば良いのでしょう。

西村 エネルギーは、どうしても最初に提供した人が不利になる傾向があります。例えば最初、水素1kg、200円で5年契約したとします。しかし5年後には技術が進み1kg、180円になったとしましょう。そうしたら当然、使う人は180円になびきます。エネルギーへの投資は5年程度では償還できないんですね、 20年ぐらいあれば、15年で設備償却できて、その後利益が見込めるというレベルです。

 
エネルギーでは、長期経済性を見越した契約が重要であり、必要なのです。そしてこれは日本が半世紀以上前にLNGのプロジェクトで行ったことなのです。当時「日本は長期買い取りをします、だから天然ガスを掘削して提供してほしい」と依頼した。ちなみにこのおかげで、ウクライナ情勢の時も、日本は天然ガス価格がドンと上がることがなかったわけです。対して、ヨーロッパなどスポット買いだった国は3倍、5倍になってしまいました。

 
今回の水素でも、エネルギーを安心、安全に提供するために、日本では2030年頃に水素を商用利用する事業者(ファーストムーバー)に対し「彼らの事業の予見性を高め、 大規模な投資を促す」(経済産業省)というファーストムーバー向けの制度を用意しています。この制度の後押しを得るには、水素の大量製造、輸送、貯蔵ができ、それを発電所につなげてしっかり運用できるかを実証する必要があります。これに対しては、当社関連会社である日本水素エネルギー、ENEOS、岩谷産業と、今一緒に進めています。やはりこうした大きなことは、一社だけではなく、仲間を作って一緒に取り組むことが重要だと思っています。

 また
水素の輸送では液化が一番良いと考えています。他にもアンモニアやトルエンをエネルギーの移行期に併用する方法はありますが、これら溶剤はそもそも劇物指定されていて、例えば有害揮発性物質は、アメリカ環境局は工場でも使わないようにと規制しています。できるだけ使うのをやめましょうというものを、将来的にずっと大量に使えるかというと考えにくい。将来長く大量利用するなら、液化水素が最も適合性が高いとみています。

■水素と直結する、川崎重工のサステナビリティ経営
−−御社が行っている水素事業と、社会一般で言うサステナビリティ経営の関係を確認させてください。前者と後者は、しっかりつながっているのでしょうか。

西村 全くもってその通りです。
当社は、まず自社で水素によるガスタービン発電を導入して、自社の国内事業のカーボンニュートラルを2030年に達成するという目標を宣言しています。自社で可能になったものを、自前で示した上でお客さまに提供したい、と準備を進めています。自社の事業で自社の脱炭素を達成する、こうしたことは当社がコングロマリットだからできることだと思います。当社で可能になったことを、社会に広く普及させ、社会課題解決に貢献したい。それを示せるのが、この水素事業です。

 また水素への取り組みは「水素をやりたい」という若手の希望者を生んでいます。水素戦略本部の社員のモチベーションは大変高い。さらに求人でも水素をやりたい人が増えていて、新卒あるいはキャリア採用の方も含め、大変優秀な方が集まってくれています。

 
サステナビリティについてはSDGs にいろいろ記載があります。あれこそ企業であれ人間であれ、目指していくべき取り組みですよね。ただ一企業一個人が、あれを全部できるかというと、それはなかなか難しいでも自分たちの持てる能力、できる範囲の中で、それを最大化してゴールの実現に貢献することはできる。そして気づいたらカーボンニュートラルになっていて、クリーンながら昔と変わらずに便利、という未来世界を実現したいですね。

 川崎重工はLNGのタンクとか運搬船をずっとやっていましたから、水素は当社のアセットやノウハウと、とてもなじみが良かったと思います。今後も、カーボンニュートラルの世界にシームレスに移行できるように、技術開発を進めていきたいと思います。

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簗 尚志のプロフィール
 フリーの編集者、ライター。IT系出版社にて、マニュアル5年、雑誌・書籍10年、販促物5年、電子書籍3年、アプリ2年の経歴。ここ10年は、顧客ニーズの開拓と最適メディアの発掘に集中、なかなか面白いと感じております。顧客が想像しないような解決策を探すことが唯一の楽しみです。今後は、哲学的視点が重要になると思い、マルクス・ガブリエルの追っかけを目指す。

 なぜ川崎重工は水素なのか。
 1997年の京都議定書が制定した、温室効果ガスの削減は2008年から始まりました。2012年までに先進国全体で温室効果ガスの5%以上削減を目指すもので、脱炭素化には、化石燃料でなく水素で回すことが一番と考えましたと、川崎重工業 執行役員 エネルギーソリューション&マリンカンパニー プレジデントの西村氏。
 大量かつ安価な水素源を世界中で探しました。するとオーストラリアの未利用資源、褐炭が候補に挙がりまして、これが非常に安価である、ならばこれに取り組もうとなったと。
 2010年4月末には、オーストラリアの褐炭を利用して水素を製造し日本に持ってくる、というサプライチェーン構想を当時の中期経営計画で公表。
 まずコンセプトを社会にドーンと公開して、これからやります! と宣言。コンセプトドリブンの形でスタートし、今日に至っているのだと。
 
 当社のブルー水素はグリーン水素に負けないくらいCO2の排出量が少ないという報告があがっています。ちなみにオーストラリアの褐炭は日本の総発電量の240年分あると言われていますと、西村氏。

 水素の利点として、いろいろな国から調達が可能なのでエネルギーセキュリティに貢献できます。電気と比べて、大量輸送、長距離、長期の輸送や貯蔵が可能なので、レジリエンスにもつながります。また水素は液化水素にすれば800分の1と、大幅に体積を減らせますので、大量輸送にも適していますと。
 川崎重工は、半世紀前のLPG(液化天然ガス)の研究開発を昔から行っていて、同じ取り扱い方法、同じような技術の土地勘がありましたから、液化水素は川崎重工としては親和性の高い分野なのだそうです。
 加えて液化水素の活用のための水素の液化機や保存用のタンクは、すでに2010年当時からありましたので、これは規模を大きくすれば良い状況。
 
 当時なかったのは、液化水素を運ぶ運搬船です。ただ当社は大型LNG運搬船と液化水素用の大型タンクの両方を作っていましたので「組み合わせれば、できるのでは」ということで、船の建造はここから始めましたと、西村氏。
 そして2022年2月には、日本とオーストラリア間で液化水素の往復輸送を、液化水素運搬船“すいそ ふろんてぃあ”号で実施し、神戸空港島の液化水素荷役基地「Hy touch 神戸」に、無事移送することができたのだそうです。

 一方、 水素を利用する方においては、産業向けの中小型発電用のガスタービンの水素燃料化を進めており、実証とともに実用化の例も出てきていると。
 モビリティについては、燃料電池車、バス、フォークリフトなど実用化が現在進んでいますが、当社は既存ガソリンエンジンを、水素を燃料とする水素エンジンに変換する取り組みを進めていますと、西村氏。

 トヨタ、デンソー、ヤマハ、スズキ、ホンダと協力し、2022年9月に小型水素エンジンを搭載した4輪バギーのデモ走行を実現。飛行機についても2035年頃の実用化に向けて、液化水素を燃料とする水素飛行機のコア技術開発に取り組んでいるのだそうです。

 当社は船を造っていますが、見方を変えると、船とは石炭、石油、天然ガスを運ぶエネルギーキャリアです。だから「次は水素」という流れは、社会のエネルギーインフラに関わってきた企業としては、全く違和感がないとも。

 水素への世界レベルでの取り組みについては、ここ数年のコロナ禍とウクライナ情勢によって、グローバルでのエネルギー供給への不安が生まれ、水素があったほうが良い、必要だという動きが世界中でさらに加速しているのだそうです。

 ヨーロッパでは、2022年にリパワーEUという計画が立案されました。日本が想定する「2050年に年間2000万トンの水素導入」に対して、リパワーEUでは「2030年に年間2000万トンの水素導入」と、かなり高い目標を設定。
 水素の輸送でもパイプラインが使えるなど、水素利用の立ち位置には強いものがあると。
 ただ、ただ、リパワーEUでは、水素のプロジェクトを提案して欲しいと公募をかけたところ、水素を作りますという製造寄りの提案ばかりが集まったそうで、中身の検討はまだ市場に委ねているところがあると、西村氏。

 エネルギーでは、長期経済性を見越した契約が重要であり、必要なのです。そしてこれは日本が半世紀以上前にLNGのプロジェクトで行ったことだと、西村氏。
 今回の水素でも、日本では2030年頃に水素を商用利用する事業者(ファーストムーバー)に対し「彼らの事業の予見性を高め、 大規模な投資を促す」(経済産業省)というファーストムーバー向けの制度を用意しているのだそうです。
 これに対しては、当社関連会社である日本水素エネルギー、ENEOS、岩谷産業と、今一緒に進めています。やはりこうした大きなことは、一社だけではなく、仲間を作って一緒に取り組むことが重要だと、西村氏。

 サステナビリティについてはSDGs にいろいろ記載があります。ただ一企業一個人が、あれを全部できるかというと、それはなかなか難しい。でも自分たちの持てる能力、できる範囲の中で、それを最大化してゴールの実現に貢献することはできる。そして気づいたらカーボンニュートラルになっていて、クリーンながら昔と変わらずに便利、という未来世界を実現したいですねと、西村氏。

 米英のメジャーが、対露包囲網で、サハリン1, 2から撤退しましたが、日本は非友好国指定されながらも、新会社にしがみついています。
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 北方領土返還交渉を、1956年の日ソ共同宣言の 2島返還から 4島返還への交渉で日本が支援を増すなか、ゼロ島返還に逆行させたプーチン。

 ロシアの地下資源に頼るのではなく、エネルギー資源の脱露、転換が求められますね。



 # 冒頭の画像は、クリーン水素チェーンのコンセプト



 ポポー
  

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