賛成です。「レベル7」という歴史的大事故を発生させておきながら、その後の対応も泥縄的でしかも一時しのぎのことばかりで次々と失態を重ねています。
高濃度に汚染された環境の中、被爆量の制約に阻まれ、苦しい作業の連続だとは理解しますが、作業の基となる設計の安全への思想は、当事者能力がないと断定し、国が国内外の叡智を集めて乗り出すしかないお粗末な現状です。製造業の工場勤務を僅かに経験した事しかない遊爺でも、安全に対する取り組み姿勢はたたきこまれましたが、こんな目先の現象の後追いを、金魚のウンコのような泥縄で続けているのは信じられません。
東電を含めた原子力関係者と政府に"喝"を入れるためにも、国際的な不信感を増長させないためにも、「レベル3・重大な異常事象」に引上て、危機感をオープンにして、体制強化を図るべきです。
タンクの漏水もさることながら、400トン/日の流入する地下水で増大を続ける汚染水の基が断たれておらず、海への汚染水の流出を阻止する対策が確立されていないのですから、「レベル5・事業所外へのリスクを伴う事故」の指定でもよいくらいでしょう。
福島第一原子力発電所の汚染水が、またも漏れ出した。漏出源は地上の貯蔵タンクの一つで、同原発の43万トンに上る汚染水の多くが同型タンクに保管されている。廃炉作業を進めるうえで頼みの綱というべき施設だが、東京電力は漏水の確認に手間取り、漏出の詳しい箇所や原因も分かっていない。 (科学部伊藤崇、船越翔)
「少ない量の漏えいが長期間続き、見逃していた恐れもある」。東電の尾野昌之・原子力立地本部長代理は20日の記者会見で、日常の点検に不備があった可能性を認めた。
東電によると、漏水が見つかったのは19日朝の点検。約17時間前の18日夕の点検では「(漏水の)痕跡は見て取れなかった」(尾野本部長代理)という。点検は作業員が毎日2回、朝と夕にタンク群の周囲を見回り、漏水が起きていないかどうか目視する方法だった。今回のタンクはタンク群の奥まった位置にあり、十分に作業員の目が届いていなかった恐れがある。
問題のタンクは、複数の鉄の部材を組み立てるタイプで、接合部に隙間ができないよう樹脂を挟み、ボルトで締める。接合部を溶接するタイプに比べ、短期間で設置できるのが特徴だ。
樹脂の耐用年数は5年だが、夏は暑さで膨張し、反対に冬は寒さで収縮するため、接合部が緩みやすい。このため、接合部から汚染水がにじみ出ることがこれまで4回あったが、漏出量は最大で10リットル程度だった。今回のように300トンも漏れ出る事態は、原子力規制庁も「想定していなかった」といい、原因も不明だ。
同原発にある、汚染水の貯蔵タンク約1060基のうち、問題を起こしたタンクと同型は約350基ある。尾野本部長代理は,タンクの信頼性を調べ直す必要がある」と総点検する考えを示した。
今回は、漏えい拡大を防ぐために二重に設けた設備も機能しなかった。タンク群は、コンクリート製の基礎の上に設置され、せき(高さ30センチ)で囲まれていたが、雨水がせきの内側にたまらないよう、排水口の弁を常に開けた状態にしていた。せきの内側を乾いた状態にしておかないと、タンクからの漏水があっても気付かないためだ。せきの外側には、土のうの壁を設けていたが、壁を越えた部分でも高い放射線量が確認された。
東電は、近くの排水溝を通じて海へ流出した可能性を否定している。しかし、規制庁の森本英香次長は20日、定例の記者会見で「流出の可能性はゼロではない。検証するよう求めている」と厳しい見方を示した。
今回のタンクの同型で、これまでに4回も漏洩があったにも関わらず、300トンも漏洩するのは「想定外」との決まり文句。1度や2度ならず、4回も発生していれば原因究明と予防処置の横展開は、旧いQC時代でも常識です。
300トンの流出の発生個所も原因も解らないのに、建設は進めると公言。設計や工法、工事業者の品質のバラツキなど、当然の調査がなされているのか疑いたくなってしまいます。
その道は素人ながらも、安全の設計の基本はふたつだと考えます。
人間が作ったものは必ず壊れる。他にも天災やテロで壊される。壊れた時にどう安全性を持たせるのかという「フェールセーフ」。
もうひとつは、事故を発生させないために多重の安全装置を施す「フォールトトレラント」です。
福島第一の事故は、「フェールセーフ」が欠如し、全電源喪失の対策を人為的に怠りました。「フォールトトレラント」では、女川は対策をしましたが、福島第一は人為的に怠りました。結果にたいしては、「想定外」ということで、だ~れも責任をとっていません。
東電は、当事者能力を持っていません。
福島第一原発では、深刻さを増す汚染水問題が、廃炉作業の大きな障害となっている。
同原発では、原子炉に残る核燃料を冷やすため、今も絶えず注水を続けなければならない。しかし、原子炉の底部が破損し、汚染水も常に漏れてくる。東電はもともと、建屋から汚染水を回収して注水に再利用すれば、汚染水を増やさずに管理できると考えていた。
実際には、その目算は外れた。建屋内に予想以上の大量の地下水が流入し、汚染水は毎日400トンずつ増加。浄化処理装置を通しても、放射性物質は取り切れず、敷地内の汚染水の総量は既に約43万トンに達した。このうち、9万3000トンは建屋内にたまり、33万4000トンはタンクで保管する。東電はタンクの保管容量が限界に近づくたびに増設し、急場をしのいできた。
そんな状況の中で、さらに今春以降、汚染水の漏出が相次いだ。今年4月、敷地西側の地面に掘った汚染水の地下貯水槽で、水漏れが発覚した。止水シートに穴が開いたとみられ、2万3600トンの汚染水をタンクに移し替えた。7月には、護岸近くにたまっていた高濃度の汚染水が地下水と混じり、海に流れていたことが判明。東電は高濃度汚染水をいったん建屋内に戻し、最終的にタンクで保管する対策を公表していた。
しかし今回の漏水で、肝心のタンクの信頼性に疑問符がつく事態となり、東電の汚染水対策が破綻する危険性も出てきた。
東電は建屋への地下水の流入を減らすため、建屋の陸側に地下水のくみ上げ井戸を建設している。地下水をくみとり海に放水する計画だったが、最も近い井戸は今回のタンク群から100メートルしか離れていない。東電幹部は「地中にしみこんだ汚染水が地下水に入る心配はある」と認めており、影響が出る恐れもある。
山崎秀夫・近畿大教授(環境解析学)は「汚染水の保管は廃炉作業の大前提だ。東電は汚染水管理の人材も手厚く配置すべきだ」と指摘する。
福島県の佐藤雄平知事は20日、県の緊急会議で「(東電に)徹底した管理を申し入れている中で極めて遺憾。国は、汚染水対策は国家の非常事態という認識の下、責任を持って対処してもらいたい」と述べた。
国会事故調が「保安院は専門性が欠如し電力会社の虜となった」と報告したように、原子力の技術では東電が卓越していたため、だれも東電の言うことややることに口出しできなかったのでした。
国会事故調報告 事故原因は人災と断定 - 遊爺雑記帳
地下水や貯水設備といった土木系の技術者でも、優秀な人材をそろえてあることでしょうし、取引先ゼネコンの知恵も聴けるはずです。そこで出て来る東電の方策には、やはり「電力会社の虜となった」関係者や政府の姿が見えてしまい、人災による対策の欠如や、想定外が発生していると考えてしまうのは遊爺だけでしょうか。
原子力関連ならいざしらず、土木関係で、広範で専門的技術が、世界のトップレベルで確保されているかは、首を傾げたくなるのですが。
東電の現場では、いろいろな案が検討されているが、実質経営破たんしている東電には資金力がなく、その場しのぎの安価な対策しか表に出てこないと、ある番組で解説している方がいました。
被災者の方々への補償。除染。廃炉費用。火力発電原材料高騰。人材流出の歯止。諸々のなかでも、赤字経営からの脱却、株主への配当を考えるのは、民間会社の経営者の性です。
しかし、そこに安全への手抜きがあってはなりません。
「電力会社の虜」を繰り返してはなりません。国が主導し、国内外の叡智を結集し、ベストな対策を打たないと、毎日400トン増え続ける汚染水は、海へあふれ出るのは誰が考えても明らかです。タンクの設置場所どころか、貯水槽だけでなく、タンクも欠陥タンクを建設し続けなければならないのですから。
何事も後追いでその場しのぎの現状を観ると、5年が寿命のタンクの対策、そのタンク(含関連施設)の地震や津波への備えも大丈夫かと心配になります。
もっとも大事なことは、汚染水を増やし続ける元を断つことです。
井戸で吸い上げる案も、地元の了承が得られたとしてもせいぜい流入量を半分も減らせるかどうかといったレベルの様です。
土を凍らせてせき止める案もある様ですが、建設コストもさることながら、日常の維持管理のコストや、天災時の電源確保で暗礁にのりあげています。
遊爺の素人発想では、縦と底部の地下空洞化で汚染地域を隔離し地下水流から遮断してしまえばと空想するのですが...。
廃炉まで40年余。流入地下水対策がなされなければ、「レベル5・事業所外へのリスクを伴う事故」は現実のものとなります。
【福島第1原発の現状】 汚染水対策は事実上破綻 海洋流出防げるか不透明 : 47NEWS(よんななニュース)
# 冒頭の画像は、福島第一の汚染水が漏洩したタンク
この花の名前は、カタバミ
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