中国共産党では、トップの党総書記が党務と外交、首相が経済を担当するという役割分担が伝統でした。ところが、最近、権力掌握を進めたい習近平が経済分野に積極的に介入するようになったことで、誰が経済政策を主導しているのか見えにくい状態になり、習近平総書記と李克強首相の経済政策などをめぐる対立が表面化し、「天の声」が2つあるという混乱状況が産まれているのだそうです。
経済に対する共産党の主導を強化したい習近平と、規制緩和を進めて民間企業を育てたい李克強の間で、以前からすきま風が吹いていたのが、最近になって対立が本格化したのだそうですが、来年の共産党中央政治局常務委員会委員の改選に向けて、派閥抗争が激化・表面化してきたとも言えるでしょう。
江沢民・上海閥、胡錦濤共青団派の対立のなかから江沢民の支援で誕生した習近平政権は、太子党という党や軍の幹部の子弟の集団でしかなかったのですが、党と軍に渡る人脈を活かし、歴任した地方の部下を重用し、汚職追放の名の下に政敵を駆逐してきた習近平が、独裁的権力集中を構築してきているのですね。
その結果、ナンバー2の共青団派の李克強首相を追い落とそうと、首相の職権の経済分野の主導権を盗るべく、習近平が手を伸ばしてきているのですね。
毛沢東時代の独裁政治への回帰を目指す習近平は、国営企業を保護し、共産党主導の経済体制の強化路線。中国の今日の経済成長をもたらした改革開放路線を産んだ鄧小平、胡耀邦の流れを継ぐ胡錦濤・共青団派の李克強は、規制緩和を進めて民間企業を育て経済を活性化させ成長させる路線。
今の経済成長低迷が、巨大化し、硬直化した国有企業の無計画な生産活動の結果(改革の無い、過剰投資、過剰生産)であることは誰の目にも明らかなことですね。李克強首相は、自分が主導する経済改革がうまくいっていないのは、習氏による介入が原因だと考え、習近平に不満を持っているのだと。
習近平が、「サプライサイド(供給側)重視の構造改革」を唱える会合を、李克強抜きで開催する一方、李克強は、「規制緩和の重要性」などについて基調講演の座談会を主催。
完全に両者戦闘モードですね。党中央政治局常務委員会のチャイナセブンの椅子取り闘争に向け、ますます激化する中国共産党の政局闘争。目が離せません。
習近平 第二期政権人材を共青団切り崩しで獲得 - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、3月の全人代での李克強と習近平
【石平のChina Watch】習近平主席・李克強首相の暗闘で中国に劇的展開!? - 産経ニュース
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中国行政の現場混乱 ツートップが経済で対立 (7/28 産経 【矢板明夫の目】)
「南院と北院の争いに巻き込まれて大変だ」。7月中旬、久々に会った中国共産党の中堅幹部がこう漏らした。北京市中心部の政治の中枢、中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物がある。党幹部らは最近、習近平総書記(国家主席)と李克強首相の経済政策などをめぐる対立について、冒頭のような隠語で表現しているという。
国有企業を保護し、経済に対する共産党の主導を強化したい習氏と、規制緩和を進めて民間企業を育てたい李克強氏の間で、以前からすきま風が吹いていたが、最近になって対立が本格化したとの見方がある。
江沢民氏の時代は首相の朱鎔基氏、胡錦濤氏の時代は首相の温家宝氏が経済運営を主導したように、トップの党総書記が党務と外交、首相が経済を担当する役割分担は以前からはっきりしていた。しかし最近、権力掌握を進めたい習近平氏が経済分野に積極的に介入するようになったことで、誰が経済政策を主導しているのか見えにくい状態になったという。
党機関紙、人民日報が5月9日付で掲載したあるインタビュー記事が大きな波紋を呼んだ。「権威者」を名乗る匿名の人物が、「今年前期の景気は良好」とする李首相の見解を真っ向から否定し、「(このままなら)中国経済は『V字回復』も『U字回復』もなく『L字型』が続く」と主張し、痛烈に批判した。
共産党最高指導部内で序列2位の李首相をここまで否定できるのは序列1位の習主席しかいないとの観測が広がり、「習主席本人がインタビューを受けたのではないか」との見方も一時浮上した。
複数の共産党幹部に確認したところ、「権威者」は習主席の側近、劉鶴・党財経指導小組事務局長であることはのちに明らかになった。しかし、インタビューの内容は習氏の考えであることはいうまでもない。最近の株価の下落や景気低迷の原因は、李首相の経済運営の失敗によるものだと考えている習主席は、周辺に李首相への不満を頻繁に漏らしているという。
習主席は7月8日、北京で「経済情勢についての専門家座談会」を主催した。経済学者らを集め、自らが提唱した新しいスローガン「サプライサイド(供給側)重視の構造改革」について談話を発表した。李首相はこの日、北京にいたが会議に参加しなかった。共産党幹部は「“李首相外し”はここまで来たのか」と驚いたという。
その3日後の11日、今度は李首相が「経済情勢についての専門家・企業家座談会」というほとんど同じ名前の座談会を主催した。自らの持論である「規制緩和の重要性」などについて基調講演を行った。
李首相周辺に近い党関係者によると、李首相は習主席に大きな不満を持っており、自分が主導する経済改革がうまくいっていないのは、習氏による介入が原因だと考えているという。
共産党のツートップがここまで対立することは近年では珍しい。「天の声」が2つあることで、行政の現場で大きな混乱が生じているという。8月に河北省の避暑地で開かれる党の重要会議、北戴河会議で、党長老たちが2人の間に入り、経済政策の調整が行われるとみられ、行方が注目される。(北京)
「南院と北院の争いに巻き込まれて大変だ」。7月中旬、久々に会った中国共産党の中堅幹部がこう漏らした。北京市中心部の政治の中枢、中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物がある。党幹部らは最近、習近平総書記(国家主席)と李克強首相の経済政策などをめぐる対立について、冒頭のような隠語で表現しているという。
国有企業を保護し、経済に対する共産党の主導を強化したい習氏と、規制緩和を進めて民間企業を育てたい李克強氏の間で、以前からすきま風が吹いていたが、最近になって対立が本格化したとの見方がある。
江沢民氏の時代は首相の朱鎔基氏、胡錦濤氏の時代は首相の温家宝氏が経済運営を主導したように、トップの党総書記が党務と外交、首相が経済を担当する役割分担は以前からはっきりしていた。しかし最近、権力掌握を進めたい習近平氏が経済分野に積極的に介入するようになったことで、誰が経済政策を主導しているのか見えにくい状態になったという。
党機関紙、人民日報が5月9日付で掲載したあるインタビュー記事が大きな波紋を呼んだ。「権威者」を名乗る匿名の人物が、「今年前期の景気は良好」とする李首相の見解を真っ向から否定し、「(このままなら)中国経済は『V字回復』も『U字回復』もなく『L字型』が続く」と主張し、痛烈に批判した。
共産党最高指導部内で序列2位の李首相をここまで否定できるのは序列1位の習主席しかいないとの観測が広がり、「習主席本人がインタビューを受けたのではないか」との見方も一時浮上した。
複数の共産党幹部に確認したところ、「権威者」は習主席の側近、劉鶴・党財経指導小組事務局長であることはのちに明らかになった。しかし、インタビューの内容は習氏の考えであることはいうまでもない。最近の株価の下落や景気低迷の原因は、李首相の経済運営の失敗によるものだと考えている習主席は、周辺に李首相への不満を頻繁に漏らしているという。
習主席は7月8日、北京で「経済情勢についての専門家座談会」を主催した。経済学者らを集め、自らが提唱した新しいスローガン「サプライサイド(供給側)重視の構造改革」について談話を発表した。李首相はこの日、北京にいたが会議に参加しなかった。共産党幹部は「“李首相外し”はここまで来たのか」と驚いたという。
その3日後の11日、今度は李首相が「経済情勢についての専門家・企業家座談会」というほとんど同じ名前の座談会を主催した。自らの持論である「規制緩和の重要性」などについて基調講演を行った。
李首相周辺に近い党関係者によると、李首相は習主席に大きな不満を持っており、自分が主導する経済改革がうまくいっていないのは、習氏による介入が原因だと考えているという。
共産党のツートップがここまで対立することは近年では珍しい。「天の声」が2つあることで、行政の現場で大きな混乱が生じているという。8月に河北省の避暑地で開かれる党の重要会議、北戴河会議で、党長老たちが2人の間に入り、経済政策の調整が行われるとみられ、行方が注目される。(北京)
経済に対する共産党の主導を強化したい習近平と、規制緩和を進めて民間企業を育てたい李克強の間で、以前からすきま風が吹いていたのが、最近になって対立が本格化したのだそうですが、来年の共産党中央政治局常務委員会委員の改選に向けて、派閥抗争が激化・表面化してきたとも言えるでしょう。
江沢民・上海閥、胡錦濤共青団派の対立のなかから江沢民の支援で誕生した習近平政権は、太子党という党や軍の幹部の子弟の集団でしかなかったのですが、党と軍に渡る人脈を活かし、歴任した地方の部下を重用し、汚職追放の名の下に政敵を駆逐してきた習近平が、独裁的権力集中を構築してきているのですね。
その結果、ナンバー2の共青団派の李克強首相を追い落とそうと、首相の職権の経済分野の主導権を盗るべく、習近平が手を伸ばしてきているのですね。
毛沢東時代の独裁政治への回帰を目指す習近平は、国営企業を保護し、共産党主導の経済体制の強化路線。中国の今日の経済成長をもたらした改革開放路線を産んだ鄧小平、胡耀邦の流れを継ぐ胡錦濤・共青団派の李克強は、規制緩和を進めて民間企業を育て経済を活性化させ成長させる路線。
今の経済成長低迷が、巨大化し、硬直化した国有企業の無計画な生産活動の結果(改革の無い、過剰投資、過剰生産)であることは誰の目にも明らかなことですね。李克強首相は、自分が主導する経済改革がうまくいっていないのは、習氏による介入が原因だと考え、習近平に不満を持っているのだと。
習近平が、「サプライサイド(供給側)重視の構造改革」を唱える会合を、李克強抜きで開催する一方、李克強は、「規制緩和の重要性」などについて基調講演の座談会を主催。
完全に両者戦闘モードですね。党中央政治局常務委員会のチャイナセブンの椅子取り闘争に向け、ますます激化する中国共産党の政局闘争。目が離せません。
習近平 第二期政権人材を共青団切り崩しで獲得 - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、3月の全人代での李克強と習近平
【石平のChina Watch】習近平主席・李克強首相の暗闘で中国に劇的展開!? - 産経ニュース
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