最近の安倍首相とプーチン大統領との会談回数の多さを、北方四島を巡る両国の協議が進み、解決が近づいているかの様に報道されています。
そんな報道を、甘すぎると指摘する記事が二つ続いています。遊爺は、日本の財界も外務省も手前勝手な都合のよい解釈で焦るな。台所が苦しいのは露側なのだから、じっくり交渉して相手が折れるのを待つべきと唱えつづけていますが、専門家の同類の論説に接し、意をつよくしています。
前のめりな姿勢の、安倍首相や外務省には、是非立ち止まって、状況を俯瞰し、冷静に戦略を練っていただきたい。安倍首相やプーチン大統領の任期中で、レームダック化する前に目途をつけたい気持ちは推察しますが、せいてはことを仕損じる。急がば回れです。
露側は、ロシアも日本を必要としているが、日本の方がそれ以上にロシアを必要としていると認識して、ちゃっかり経済支援を先取りする魂胆の様子です。交渉の前線の外務省の姿勢がその様に受け取られるように見えているのですね。
プーチン大統領が、「日ソ共同宣言」を北方領土解決に向けた、両国間での合意であるとしているのは、一貫して変わっていませんね。
プーチン大統領が言うように、1956年の「日ソ共同宣言」は、署名されただけでなく批准されたものです。しかし、その後も両国は実行に向けて交渉を重ねてきていて、1993年の「東京宣言」で、領土問題の対象は四島と修正・署名され、1998年の「川名合意」でも、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することで一致しています。
プーチン大統領が主張する、1956年の「日ソ共同宣言」に戻ることは、以後、今日までの両国間で積み重ねてきた交渉を無視しした、復古主張です。プーチン大統領自身、2001年の「イルクーツク声明」、2003年の「日露行動計画」では、四島が対象との認識に合意しています。
また、北方四島が露領なのは第二次世界大戦の結果だと遡っていうのなら、日露両国間で交わされている条約は、「サンフランシスコ条約」ではなく、日露戦争での「ポーツマス条約」ですから、樺太の南半分と、千島列島の全てが日本という時点からの見直し交渉とすべきです。
文字数オーバーの為、つづきは、【続】日露首脳の接近 露側はG7の分断に成功だと - 遊爺雑記帳 をご覧ください。
# 冒頭の画像は、2日、ウラジオストクで会談した安倍首相とプーチン大統領
そんな報道を、甘すぎると指摘する記事が二つ続いています。遊爺は、日本の財界も外務省も手前勝手な都合のよい解釈で焦るな。台所が苦しいのは露側なのだから、じっくり交渉して相手が折れるのを待つべきと唱えつづけていますが、専門家の同類の論説に接し、意をつよくしています。
前のめりな姿勢の、安倍首相や外務省には、是非立ち止まって、状況を俯瞰し、冷静に戦略を練っていただきたい。安倍首相やプーチン大統領の任期中で、レームダック化する前に目途をつけたい気持ちは推察しますが、せいてはことを仕損じる。急がば回れです。
露側は、ロシアも日本を必要としているが、日本の方がそれ以上にロシアを必要としていると認識して、ちゃっかり経済支援を先取りする魂胆の様子です。交渉の前線の外務省の姿勢がその様に受け取られるように見えているのですね。
露 北方領でG7分断 日本と協調 国際アピール (9/8 読売朝刊)
【モスクワ=花田吉雄】ロシアのプーチン大統領は安倍首相を迎え極東ウラジオストクで開いた「東方経済フォーラム」などで、北方領土問題の解決に意欲を示した。ただしプーチン氏の発言を検証すると、領土を巡る原則的な立場は崩さず、交渉を通じ日本から経済協力を引き出そうとする狙いが浮かび上がる。
効力を強調
「1956年の宣言は署名されただけでなく批准されたものだ」
プーチン氏は、平和条約締結後に色丹、歯舞の2島を引き渡すと明記した「日ソ共同宣言」の法的効力を強調した。これが北方領土を解決する基礎であるとの考えを「フォーラム」とその直前の米通信社との会見、中国・杭州での主要20か国・地域(G20)首脳会議の後の記者会見で3度繰り返した。
プーチン氏の安倍首相との会談での発言は明らかにされていないが、安倍首相は「手応えを強く感じ取ることができた」と、今後の交渉進展に期待を示した。
日本は択捉、国後、歯舞、色丹の4島について「日本への帰属が確認されれば返還時期や態様、条件は柔軟に対応する」との立場だ。一方、ロシアは4島が「第2次大戦の結果、自国領になった」と主張し、「共同宣言」が定める2島以外の引き渡しを拒否する。
「唯一の道」
領土問題での強硬論の一方、プーチン氏は安倍首相がロシアとの経済協力の柱とする「8項目提案」を、問題解決に向かう「唯一の正しい道」と呼び高く評価した。そして提案は「経済問題だけでなく、政治分野を含む諸問題を解決する条件整備のため非常に重要」と強調した。
また首脳会談後、ロシアのラブロフ外相は「島々(北方4島)における共同経済活動について日本に議論の用意があるとの感触を得ている」と述べた。ロシアは日本企業が4島に進出することを望む。だが日本企業が4島で活動すればロシアの主権を認めることになりかねないため日本は拒否している。
共同経済活動について、日本側は首脳会談で話し合っていないと説明する。
ロシアには日本との関係を発展させ、ウクライナ情勢を巡って対露制裁を続ける先進7か国(G7)を分断する思惑がある。
プーチン氏はG20首脳会議の後、記者会見で日本の対露制裁について「露日関係を阻害しない」と述べた。
ロシアのメディアは日本がロシア経済協力相を新設したことを大きく報じ、「コメルサント紙」(6日付)は、米国の制裁を受けるロシアの天然ガス企業「ノパテク」に日本が4億ドル(約406億円)の融資を約束したと伝えた。
ビクトル・クジミンコフ極東研究所上級研究員は「ロシアは国際会議の場で日本との協調を演出しG7の分断をアピールできた。経済協力でロシアは取るものは取った」と指摘する。
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プーチン大統領の北方領土に関する最近の主な発言」
□何も売り渡すつもりはない
(5月20日、ソチでのロシア・ASEAN首脳会議後の共同記者会見で)
□我々が話し合うのは領土の交換や売却でなく、いずれの側も敗者と感じないような解決策を見いだすことだ
(9月2日、米通信社とのインタビューで)
□唯一の正しい道だ
(9月3日の「東方経済フォーラム」で、日本の8項目の経済協力の提案を評価)
□1956年の宣言は署名されただけでなく批准されたものだ
(9月3日、「東方経済フォーラムなどで、「日ソ共同宣言」の法的効力を繰り返し強調)
□日露関係を阻害しない
(9月5日、中国・杭州のG20終了後の記者会見で、日本がウクライナ問題をめぐり対露制裁を続けていることについて)
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【モスクワ=花田吉雄】ロシアのプーチン大統領は安倍首相を迎え極東ウラジオストクで開いた「東方経済フォーラム」などで、北方領土問題の解決に意欲を示した。ただしプーチン氏の発言を検証すると、領土を巡る原則的な立場は崩さず、交渉を通じ日本から経済協力を引き出そうとする狙いが浮かび上がる。
効力を強調
「1956年の宣言は署名されただけでなく批准されたものだ」
プーチン氏は、平和条約締結後に色丹、歯舞の2島を引き渡すと明記した「日ソ共同宣言」の法的効力を強調した。これが北方領土を解決する基礎であるとの考えを「フォーラム」とその直前の米通信社との会見、中国・杭州での主要20か国・地域(G20)首脳会議の後の記者会見で3度繰り返した。
プーチン氏の安倍首相との会談での発言は明らかにされていないが、安倍首相は「手応えを強く感じ取ることができた」と、今後の交渉進展に期待を示した。
日本は択捉、国後、歯舞、色丹の4島について「日本への帰属が確認されれば返還時期や態様、条件は柔軟に対応する」との立場だ。一方、ロシアは4島が「第2次大戦の結果、自国領になった」と主張し、「共同宣言」が定める2島以外の引き渡しを拒否する。
「唯一の道」
領土問題での強硬論の一方、プーチン氏は安倍首相がロシアとの経済協力の柱とする「8項目提案」を、問題解決に向かう「唯一の正しい道」と呼び高く評価した。そして提案は「経済問題だけでなく、政治分野を含む諸問題を解決する条件整備のため非常に重要」と強調した。
また首脳会談後、ロシアのラブロフ外相は「島々(北方4島)における共同経済活動について日本に議論の用意があるとの感触を得ている」と述べた。ロシアは日本企業が4島に進出することを望む。だが日本企業が4島で活動すればロシアの主権を認めることになりかねないため日本は拒否している。
共同経済活動について、日本側は首脳会談で話し合っていないと説明する。
ロシアには日本との関係を発展させ、ウクライナ情勢を巡って対露制裁を続ける先進7か国(G7)を分断する思惑がある。
プーチン氏はG20首脳会議の後、記者会見で日本の対露制裁について「露日関係を阻害しない」と述べた。
ロシアのメディアは日本がロシア経済協力相を新設したことを大きく報じ、「コメルサント紙」(6日付)は、米国の制裁を受けるロシアの天然ガス企業「ノパテク」に日本が4億ドル(約406億円)の融資を約束したと伝えた。
ビクトル・クジミンコフ極東研究所上級研究員は「ロシアは国際会議の場で日本との協調を演出しG7の分断をアピールできた。経済協力でロシアは取るものは取った」と指摘する。
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プーチン大統領の北方領土に関する最近の主な発言」
□何も売り渡すつもりはない
(5月20日、ソチでのロシア・ASEAN首脳会議後の共同記者会見で)
□我々が話し合うのは領土の交換や売却でなく、いずれの側も敗者と感じないような解決策を見いだすことだ
(9月2日、米通信社とのインタビューで)
□唯一の正しい道だ
(9月3日の「東方経済フォーラム」で、日本の8項目の経済協力の提案を評価)
□1956年の宣言は署名されただけでなく批准されたものだ
(9月3日、「東方経済フォーラムなどで、「日ソ共同宣言」の法的効力を繰り返し強調)
□日露関係を阻害しない
(9月5日、中国・杭州のG20終了後の記者会見で、日本がウクライナ問題をめぐり対露制裁を続けていることについて)
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プーチン大統領が、「日ソ共同宣言」を北方領土解決に向けた、両国間での合意であるとしているのは、一貫して変わっていませんね。
北方領土交渉経緯
プーチン次期大統領が北方領土問題の最終解決を目指したいと - 遊爺雑記帳
<前略>
<追記挿入>
■日ソ共同宣言
1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名
北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて平和条約の交渉を行うという合意
<追記挿入 ここまで>
■日ソ共同声明(1991年)
1991年4月海部総理とゴルバチョフ大統領により署名された。
北方四島が、平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることが初めて確認された。
日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。
■東京宣言(1993年)
1993年10月、細川総理とエリツィン大統領により署名された。
領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題と位置づけるとともに、領土問題解決のための交渉指針が示された。
また、日ソ間のすべての国際約束が、日露間で引き続き適用されることを確認した。
■クラスノヤルスク合意(1997年)
1997年11月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致。
■川奈合意(1998年)
1998年4月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致。
■イルクーツク声明(2001年)
2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された。
日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認した。
■日露行動計画(2003年)
2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された。日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認した。
<後略>
プーチン次期大統領が北方領土問題の最終解決を目指したいと - 遊爺雑記帳
<前略>
<追記挿入>
■日ソ共同宣言
1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名
北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて平和条約の交渉を行うという合意
<追記挿入 ここまで>
■日ソ共同声明(1991年)
1991年4月海部総理とゴルバチョフ大統領により署名された。
北方四島が、平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることが初めて確認された。
日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。
■東京宣言(1993年)
1993年10月、細川総理とエリツィン大統領により署名された。
領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題と位置づけるとともに、領土問題解決のための交渉指針が示された。
また、日ソ間のすべての国際約束が、日露間で引き続き適用されることを確認した。
■クラスノヤルスク合意(1997年)
1997年11月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致。
■川奈合意(1998年)
1998年4月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致。
■イルクーツク声明(2001年)
2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された。
日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認した。
■日露行動計画(2003年)
2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された。日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認した。
<後略>
プーチン大統領が言うように、1956年の「日ソ共同宣言」は、署名されただけでなく批准されたものです。しかし、その後も両国は実行に向けて交渉を重ねてきていて、1993年の「東京宣言」で、領土問題の対象は四島と修正・署名され、1998年の「川名合意」でも、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することで一致しています。
プーチン大統領が主張する、1956年の「日ソ共同宣言」に戻ることは、以後、今日までの両国間で積み重ねてきた交渉を無視しした、復古主張です。プーチン大統領自身、2001年の「イルクーツク声明」、2003年の「日露行動計画」では、四島が対象との認識に合意しています。
また、北方四島が露領なのは第二次世界大戦の結果だと遡っていうのなら、日露両国間で交わされている条約は、「サンフランシスコ条約」ではなく、日露戦争での「ポーツマス条約」ですから、樺太の南半分と、千島列島の全てが日本という時点からの見直し交渉とすべきです。
文字数オーバーの為、つづきは、【続】日露首脳の接近 露側はG7の分断に成功だと - 遊爺雑記帳 をご覧ください。
# 冒頭の画像は、2日、ウラジオストクで会談した安倍首相とプーチン大統領