遊爺雑記帳

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【続】日露首脳の接近 露側はG7の分断に成功だと

2016-09-08 23:59:58 | ロシア全般
 日露首脳の接近 露側はG7の分断に成功だと - 遊爺雑記帳の続きです。

 新潟県立大学袴田教授は、より鮮明に、「安倍首相の親密な対露姿勢にもかかわらず、首相と大統領の間で北方領土問題に関する認識の違いが拡大している」と指摘し、「首相官邸やメディアも露側の立場や発想、行動様式を客観的に把握しないまま、楽観的な思い入れでロシアにのめり込んでいる」と警告を発しておられます。
  

露への楽観的思い入れを見直せ 新潟県立大学教授・袴田茂樹 (9/6 産経 【正論】)

 2日に行われた日露首脳会談で強い印象が2つある。第1に、プーチン大統領との関係と日露経済協力にかける安倍晋三首相の強烈な熱意と行動力だ。第2は、領土交渉に対する両国の立場や認識のギャップである。首相官邸やメディアも露側の立場や発想、行動様式を客観的に把握しないまま、楽観的な思い入れでロシアにのめり込んでいるとの感を拭えない


≪ロシアが正面に出す強硬領土論≫
 日本のメディアには首脳会談に関し、「領土問題 交渉加速を確認」「首相 領土交渉に道筋」「北方領土『きっと解決』」といった見出しが躍った。冷静な分析もあるが、首脳会談全体の理解はこれらの見出しに集約されている。ではロシア側はどうか。露側の立場や見解を、日本側のそれとの対比で伝えたい。

 会談の日、大統領サイトに会談直前の同日の大統領インタビューが載った。またソチで安倍首相が「新アプローチ」を提案した後、5月20日にプーチン大統領は記者会見で日露交渉の所見を述べた。以下、日露関係に関する直近の
プーチン発言の要点
だ。
 
領土交渉と経済協力は切り離す。平和条約は重要だが、経済協力と交換に領土の「売り渡し」はしない。領土問題に関する日露の立場は56年宣言時より接近していない。ただ、対話は今後も続ける。中国と日本との間の国境問題は本質的に異なる。北方四島が露領なのは第二次世界大戦の結果であり、国際的諸文書にも記されている。一方、中露国境は未画定だったので40年交渉して決着したが、これは大戦とは無関係だ。もし第二次大戦の結果を見直すとなれば、ドイツ、ポーランドその他の国と、領土問題でパンドラの箱を開けることになる
-。

 
大統領が「誤解」しているように、日本は戦後画定した国境の変更を要求しているのではなく、彼もかつて認めていた未解決の領土問題の解決を主張しているのだ。露側はまた、平和条約交渉の前提条件は、日本が「四島に対する露の主権」を認めること、とも言う。つまり、過去数十年の日露領土交渉を全否定するような強硬な見解を、露側は最近正面に出すようになった


≪弱さが浮き上がる日本の発信力≫
 プーチン政権寄りの高級誌も、最近、次のように述べている。
 アジアでは中国が最重要だが、
露が日本にも接近するのは、日本の資金や技術が必要だからだ。またガスなどでの対中駆け引きにも、日本カードが必要だ。だが、露が日本を必要とする以上に日本が露を必要としている。その理由は安全保障上、中露が反日で接近することは日本にとって悪夢だからだ。露政権は日本のこの立場を十分知っているので、領土問題での譲歩を拒否している。今となっては、日本が歯舞、色丹を受け取ることさえも100%あり得ない。安倍首相が大統領を山口の私邸に招いても、領土問題は親密な個人関係では解決されない
。日本は四島の露の主権を認める他はない(露『エクスペルト』誌)。

 首脳会談の前日、日本外務省が露で実施した世論調査の結果が発表された。北方領土問題に関しては、「今後も露に帰属すべきだ」と答えた者が53%(6年前も同じ)、「日本に帰属すべきだ」が僅か1%(6年前は3%)だった。他は、「相互に合意すべきだ」などの意見だ。ちなみに、この数字が示しているのは、日本政府の国際発信力の弱さでもある。

≪日露のコントラストは衝撃的だ≫
 かつて
日本側が「両国に受け入れ可能な形で解決する」ことに合意したとき、露政府関係者が個人的に「これでわれわれが勝利した」と述べたのを思い出す。この合意は、領土問題で両国が対等な立場にあり、その解決方法は露世論が受け入れることが前提になる、と解釈したからだ。世論調査を見ると、この合意に従っての領土問題の解決は困難だ。まあこの合意は、外交的レトリックとしても、私が強い危機感を覚えるのは、安倍首相の親密な対露姿勢にもかかわらず、首相と大統領の間で北方領土問題に関する認識の違いが拡大していること
だ。

 大統領は首相が、米国の強い牽制(けんせい)を拒否して露に接近し、「新アプローチ」で今は対露経済協力を最優先で推進していることを十分承知だ。またその目的が、最終的には領土問題解決による平和条約締結にあり、これが首相の対露政策の最重要目的だということも知っている。
大統領はそのことを百も承知しながら、彼が熱心に推進するのは専ら経済分野の協力で、領土問題では近年ますます強硬になり、北方領土のロシア化や軍事化も着々と進めているこの日露のコントラストに私は強い衝撃を受けている
。首相官邸は、ロシア政治のシニカルさとプーチン政権のしたたかさ、行動様式などをリアルに認識しているのだろうか。

 安倍首相の熱意と行動力は高く評価する。ただこの状況では、異なった意味で「従来の発想にとらわれない新アプローチ」の対露政策にその熱意を向けるときではなかろうか。(はかまだ しげき)


 読売の記事で指摘されている様に、ロシア側は、一連の首脳会談を、「国際会議の場で日本との協調を演出しG7の分断をアピールできた。経済協力でロシアは取るものは取った」と評価しているのです。領土問題では、「日露共同宣言」の二島返還のを基本線とするプーチン大統領の意向は変わっていません。

 いつもの繰り返しになり冒頭でも述べましたが、台所が苦しいのはロシアです。資源輸出に頼る国家経済体質に、石油・天然ガス価格の低迷、主力ガス田の枯渇接近に伴う、北極圏や極東地域での新規ガス田開発と、欧州以外の新規販路開拓に迫られ、投資の呼び込みや、資源産業以外の産業の立ち上げを迫られているのです。
 冒頭の繰り返しになりますが、ロシアが日本を必要とする以上に、日本がロシアを必要としていると、誤った現状認識をもって、対日交渉に臨んでいます。一重に交渉の最前線の日本の外務省の姿勢の過ちのなせる結果です。

 袴田教授が指摘されることばを借りるなら、「従来の発想にとらわれない新アプローチ」の対露政策=経済でも、対中安全保障でも、困窮しているのは日本ではなくロシアだとの自覚と、ロシア側の誤った認識改革への交渉を進めていただきたい。





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